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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十一章

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オリガの帰還

アルバ視点です。

 耳飾りを握りしめて俺の胸に体を預けるオリガを見つめながら、俺は低く囁く。


「俺を……待っていてくれたんだな」


 涙など許されぬ王の瞳に、熱いものが滲む。


 自分の胸にオリガを優しく抱きしめ、手綱を取ると、ただ彼女の安否を祈りながら夜道を駆け抜けた。


* * *


 寝室に駆け込むまでの記憶はほとんどない。


 気がつけば、オリガを寝台に横たえ、自らも荒い息を吐いていた。

 その額の汗は、戦場でも滅多に流さぬほどのものだった。


 すぐに医師を呼び寄せた。


 不安で立ち尽くす間、息すら荒くなっていたのを自覚する。


「どうだ、オリガは......?」


 医師は脈を測り、薬の残滓を確かめ、深く頭を下げた。


「ご安心ください。毒は既に抜けております。ただ、深い眠りに落ちているだけです。いずれ自然に目を覚まされましょう」


「……そうか」


 膝から力が抜けるように、アルバは大きく息を吐いた。

 その安堵の重さに、自分がどれほど彼女に縋っていたのかを思い知る。


 医師の診断が終わると同時に、部屋から全ての者を下がらせた。


「王妃が目を覚ますまで、この部屋には、誰も入れるな。医師も、アディもだ。オリガが目を覚ました時、最初に俺がここにいたいんだ」


 命じた声は、王のものではない。


 短くそう命じた時の自分の声が、ひどく低く震えていたのを覚えている。


 侍従たちは黙って俺に従った。


 静まり返った寝室には、オリガのかすかな寝息だけが漂っている。

 長い睫毛が頬に影を落とし、白い指が胸の上で小さく丸まっていた。


 その手に触れると、確かに温もりが返ってくる。


 それだけで、胸の奥に鋭く刺さっていた恐怖が、少しずつ和らいでいく。


「オリガ、無事でよかった、本当に……」


 声に出すと、まるで彼女がそれを聞いているように思えてならなかった。


 椅子に腰を下ろす気にはなれなかった。


 彼女の枕元に膝をつき、ただ手を握り、額を寄せる。

 重ねた掌の下で、確かな鼓動が打っているーーその鼓動の調べを確かめるたびに、自分がまだ生きていられる理由を思い出す。


 王としての責務も、血に塗れた戦場の記憶も、この寝顔の前では(かす)んでいく。

 オリガがいるからこそ、自分は剣を取り、冠を戴き、すべてに耐えてこられたのだ。


「……お前が目を開けた瞬間、俺がここにいると知ってくれ」


 その願いだけが、今の自分を支えていた。


 夜が更けても、灯火が揺れても、まぶたは閉じなかった。


 眠りなど訪れるはずもない。

 

 ただ、オリガが再びその瞳を開く瞬間を、一番近くで迎えるために。

 彼女が目を覚まし、最初に映す景色が、自分であることを一ー


 それだけを、心から願って。

オリガ、城に戻って来れたんだね…とはいえまだ一波乱ありそうですが。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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