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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十一章

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連れ込まれるオリガ

三人称です。オリガ……!

 ーー数刻前、ハンナと男二人のやりとりにて。


「ま、待て.....まだ断ったわけじゃねぇ......」


「話だけでも聞かせてもらおうじゃないか」


 ハンナは妖しげに微笑み、懐から小瓶を取り出した。透明な液体を酒に垂らすと、杯の中で溶けて消える。


「交渉の前に......一口どうかしら。心も体も軽くなる、不思議なお薬よ」


 甘い声に誘われるように、男たちは杯を掴む。


「へへっ、こりゃありがてえ」


「お嬢さん直々のお酌なんて、滅多にねぇからな」


 にやつきながら杯を掲げ、ためらいもなく流し込む。

 酒精(しゅせい)の熱と混ざり合うように、毒は静かに全身へ広がっていった。


 やがて二人の瞳は焦点を失い、快楽にも似た虚ろな笑みを浮かべた。


 * * *


 アルバとソウタが必死になってオリガを捜索している少し前の事。


 オリガは薬に操られた男たちに蹂躙されかけていた。


 大木に叩きつけられ、衝撃に背が悲鳴を上げた。

裂けた裾がずり落ち、冷たい風が肌を切り刻むように這った。


「表で終わらせるな、まだお楽しみは始まったばかりだぞ」


「あの小屋で泣き叫ばせて、飽きるまで(なぶ)ろうぜ。」


 粗野な手に両腕を押さえつけられ、オリガは狭い小屋の床に叩きつけられた。

 喉の奥から悲鳴がこぼれたが、誰にも届かない。

男たちの目は(うつ)ろに濁り、獲物を舐める獣のように爛々(らんらん)と光っている。


 そこに理性の影はなく、ただ命じられた欲望に従う操り人形の狂気だけがあった。


(この人たち、何かに操られている?目が正気ではない!)


 でも、それがわかったとしても恐怖が勝ってしまう。オリガはこの先に待つ光景を想像するだけで、喉の奥が凍りつき、呼吸が詰まっていく。


 ひとりが体を押さえつけ、もうひとりの指が乱暴に衣を裂く。布地が裂ける乾いた音が、夜の沈黙を切り裂いた。冷たい空気が肌を撫で、血が凍るような屈辱が襲う。


「や……やめて……!」


 声は涙で掠れ、抗う力は残っていない。


 だがーー。


 オリガの瞳が、涙に濡れながらも二人を真っ直ぐに見つめ返した。

 

 恐怖と祈りが入り混じったその眼差しは、あまりに清らかで、あまりに強かった。


「うっ……なんだ……?どうして俺は、こんな……」


「おっ、俺は何を……何故、こんな神々しい人に、なんてことを……」


「……??」


 男たちは一瞬、動きを止めた。

 

 揺らぐ蝋燭の光に照らされるその姿は、まるで影の中に浮かぶ聖像のようで。

 荒い息を吐きながら、ふたりは怯えた獣のように身を離した。


「女神...........、オ、リガ……さ、ま」


 呟きとともに、互いに顔を見合わせた次の瞬間、男たちは逃げ出すように扉を蹴破り、夜の闇に消えた。


「はぁっ、はあっ、ア、アルバ……」


 力尽きたオリガは、破れた衣を胸に抱え、震えながら寝台に崩れ落ちる。

 

 意識はすぐに深い闇へと沈み込んでいく。


 ただ、その右手だけがーー


 かつてアルバに贈った翡翠色の耳飾りを、血が滲むほど強く握り締めていた。


アルバに贈った耳飾りを持っていたんですね。それは城を抜ける前のオリガの最後の意思だったのでしょうか?

アルバとソウタ、間に合え!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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