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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十一章

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アルバとソウタ

三人称です。少し説明くさくて読みにくいかもしれません。

「ーーオリガ、無事でいてくれ。必ず、お前を取り戻す!」


 胸に握りしめたオリガの布切れのぬくもりが、血のように熱く脈打つ。


 夜空には曇り月。ただ一筋がアルバの道を照らすように北東の闇を示していた。


 夜明け前の冷たい風が頬を叩く。ソウタの吐息は白く曇り、蹄は泥に深く沈み込んでいた。


 僻地の村はずれ。そこはひっそりとした荒野の入り口。アルバはソウタを止め、地面に身を屈めた。


 ーー深く抉られた車輪の跡。まだ乾ききっていない。つい先程まで馬車が通った証だ。


「……ここか」


 * * *


 さらに進むと、車輪の跡と並んで、蹄の乱れた痕があった。

 急がせるように打ちつけられた跡。


 明らかに誰かが追われることを恐れ、夜のうちに急いでいた。


「オリガ......」


 掠れた声が漏れる。怒りとも焦燥ともつかないものが喉を焼き、全身を突き動かす。


(薬の臭いがする……)


 風に乗って、どこか鼻を刺すような異臭が漂っていた。

 ただの馬車の通行ではない。何者かが不浄を抱えていた証だ。


「薬屋か......すでに逃げたか!遅かった!」


 低く呟き、アルバはソウタの背に再び跨った。愛馬の首筋に手を置き、囁く。


「行くぞ。まだそう遠くへは行ってないはずだ。奴らを逃がすな」


 ソウタは一声いななき、地を蹴った。


 まだ新しい轍は、北の林道へと続いている。


 アルバの瞳には王としての冷徹さはもうない。


 ただ一人の男として、愛する女を奪い返すためにーー

 焦燥と怒りの炎を燃やしながら、闇を切り裂いて駆けた。


* * *


 林道の奥に、それは打ち捨てられていた。


 車輪は片方が折れ、泥に沈んでいる。馬の姿はなく、ただ黒く濁った水たまりが月光を吸い込んでいた。

 アルバは無言のまま降り、手で木の破片をどけていく。指先に触れたのは、見覚えのある布ーー


 細かな刺繍が施された、オリガのドレスの裾の切れ端だった。


「……っ!」


 胸の奥が焼ける。


 それを握り締めた瞬間、抑え込んでいた感情が溢れ出す。


「オリガ.....必ず、必ず俺が取り返す」


 その時、ソウタが低く鼻を鳴らした。


 耳を立て、地面をかぎ、落ち葉を掻き分けるように鼻先を向けていく。


「.....ソウタ、何かあるのか?」


 アルバは息を呑んだ。


 血でも毒でもないーーもっと微細で、獣の嗅覚でしか捉えられないもの。オリガの……


 ソウタは迷いなく、北東の獣道を見据えていた。


「そうか......まだ続いているのだな」


 アルバは愛馬の首筋を撫で、鞍へと再び身を預ける。

 ソウタの瞳と自分の瞳が一瞬重なった。


 その導きを疑う理由は、どこにもない。


「行け、ソウタ。お前の嗅いだ道を、俺が切り開く!」


 次の瞬間、鬱蒼とした林を裂いて、馬と男は駆け出した。


 枝を砕き、夜気を切り裂き、ただひとつの光一一愛する者の気配を追って。


ソウタは良き相棒ですね。アルバの乱される心を、ソウタが側にいる事で若干冷静になれている感じもします。


馬と男は駆け出した←これお気に入りです。


最後まで読んで頂きありがとうございました!

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