ハンナの逆恨み
※三人称です。
やがて辺境に移された一族は、そこに用意された屋敷に住んでいた。
伯爵夫人はありがたがっていた。
「前までの屋敷よりは小さいけど、家があるだけありがたいわ!爵位を取り上げられていたら私たちは今頃どうなっていたか……オリガ様には感謝の言葉もないわ」
その様子を見てハンナは鼻を鳴らす。
「お母様はよく平気ね、こんな僻地に飛ばされて」
「仕方ないじゃない。あの巫女の諫言に乗せられて、愚かなことをした罰よ。これでも思い切り減刑されたのだから。オリガ様のおかげでね」
(お母様はすっかり毒気を抜かれてしまったわ!オリガ様オリガ様って!馬鹿の一つ覚えみたいに……だけど私は違うわ!)
ハンナはある噂を耳にする。
ーー「金さえ積めば、どんな薬でも調合する」
ーー「人の心すら捻じ曲げる、怪しい薬屋がいる」
ハンナは早速夜闇に紛れて、裏通りの薬屋を訪ねた。
「……オリガ様を、城から追い出したいの。アルバ様を惑わす、あの悪女を」
細い指で金貨の袋を渡す。
薬屋はニヤリと笑い、壺に詰められた黒い粉を取り出した。
「この粉を飲み物に仕込めば、心は曇り、己を見失う。言葉一つで、どこへでも従うだろう」
その言葉を聞いた途端、ハンナの口端に嫌な笑みが浮かぶ。
「ただしこの薬の効果は一度きりだ。もし時を逃せば、二度と効果は得られない」
「大丈夫失敗しないわ、権力は失っても、まだお金はたっぷりあるんですもの」
(そして金で動く人間も多いのよ!)
ハンナは壺を胸に押し付け、指先が白くなるほど握りしめた。その表情にはかつてのはつらつとした美しさはなく、恨みを凝縮した仮面のように固まり、吊り上がった唇が引き攣った。
この頃にはもうハンナは、ただオリガに対する復讐心だけで動いていた。
オリガが憎い!!私に恥をかかせたオリガが!!
(これで……オリガ。あなたの輝きも、その光も、愛も、すべて終わらせてあげる!)
ハンナの壺を握る手に一層力がこもった。
ハンナはオリガに対する逆恨みが拗れて、もう正常な判断ができなくなっているみたいですね。
オリガ逃げて〜!!
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