ハンナの一件
国王アルバの前で不敬を働いた伯爵夫人とその娘ハンナ。彼女達の審判が、玉座において下されようとしていた。
翌朝、王城の大広間にて。
玉座に座したアルバの前に、伯爵夫人とその娘ハンナが引き据えられていた。
「おのれは俺に王妃がいると知っていながら、自分の娘を側室にと進言した。そしてその娘も、王妃を侮辱した。その不敬、断じて許されぬ」
国王アルバの低い声が、冷たく広間に響く。
夫人の顔は青ざめ、側に立つハンナも俯いたまま震えている。法廷大臣たちは息を呑み、処遇を待っていた。
「爵位を剥奪し、一族郎党を流刑とせよ!」
その瞬間、広間にざわめきが走った。
誰もが、この親子、果ては一族郎党までの行く末を予測し、その未来は決して明るくないことを悟った。
しかしただ一人、この場と緊張感にそぐわない輝きを放つ存在がいた。オリガだ。オリガはアルバの傍らに静かに歩み寄る。
「アルバ……」
オリガはかすかに首を横に振る。
「夫人とその娘は確かに不敬を働きました。でもきっと、一時の愚かな野心に駆られてしたことです。爵位を奪えば、一族全てが路頭に迷います。せめて僻地への移封で、ご慈悲を。どうか……」
広間は静まり返った。若い王妃の言葉に、法廷大臣たちも驚きの表情を浮かべる。
アルバはしばらく沈黙し、その鋭い緑の眼差しで夫人を射抜いた。そして低く告げる。
「……王妃の恩寵により、爵位はそのままとする!ただしーー辺境の地へと領地替えを命じる。二度とこの城に足を踏み入れるな」
夫人は崩れ落ちるように頭を垂れた。
「おお、オリガ様!王妃様!あのようなことをしたにも関わらず、恩寵に感謝致します!あああ!」
広間には「王妃の慈悲」を讃える声と、伯爵夫人の嗚咽がいつまでも響き渡った。
だが、これだけの恩寵を受けてもなお、王妃に憎悪の念を送る者がいた。ハンナだ。
屈辱を受けたハンナには、オリガに対する逆恨みに似た憎悪が芽生えていた。
(母が恥をかいたのも、爵位が遠ざかるのも、全てあのオリガとかいう少女みたいな王妃のせい!みんなおかしいわよ!あのちんちくりんの小娘がなんだっていうのよ!お母様まで頭を垂れて……あの小娘がいなければ……!)
その瞳には炎が燃え盛っていた。燻り続ける執念の炎がオリガを射抜くように揺らめいていた……
野心家で気の強い娘ハンナ。このままでは終わりそうにないと思うけど……
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