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歪んだ耳飾り

 私はオリガ。つい先日、夫に殺される予知夢的な夢を見ちゃって、その夢があんまりにも生々しかったから、死にたくなくて色々とやり直してる女よ!


 夢の中で私を殺した夫、アルバは、あまり感情を表に出さない人だった。


 私はアルバのことが大好きだったんだけど‥‥‥、最後まで何を考えているのか、私を好きなのかどうかわからなかったな。


 でもこの前一緒に朝食をした時、アルバは私を抱きしめて、キキキキキスをしてくれた!! ひゃー!!//思い出すだけでドキがムネムネ‥‥‥


 でもあの日以来一緒に朝食を食べるようになったのに、全然触れてこないわ。


(べべべべ別にいいんだけどね? 触ってほしいとか、キスしたいわけじゃないし!? 緊張するし!?)


「ねぇアディ、つい先日まではキスしてくれたのに今はしないのってどういう心理かな?」


 私の髪をセットしていたアディに話し掛ける。


「えっ? アルバ様がキスしてきたんですか? そりゃ珍しい。アルバ様は潔癖で有名ですのに。でもオリガ様はお妃様ですし、特別なのかもしれませんね」


「えっ、アルバってそうだったの!?」


「まさかご存知でない? 妻なのに?」


「‥‥‥知らない。そんなの初めて知った」


 アディは困ったように笑った。


「おほほ、無理もないですよ。何せオリガ様は幼かったでしょう? いいじゃないですか。これから知っていけばいいんです」


「そっか‥‥‥、そうよねアディ! 私頑張るわ!」


「ふふふ、頑張ってくださいね。そういえばあの耳飾りは? あれも渡しちゃいましょうよ。アルバ様のために作ったんですよね?」


「えっ、いや、あれは失敗作というか、かなり不恰好だからもっとちゃんとしたものをあげたいなって」


「何をおっしゃる。オリガ様は妻なのですよ。もっと自信を持ってください」


「う、うん」


 アディはそう言って丁寧に包装された耳飾りを渡してきた。


「よ、喜んでくれるかな? こんな不恰好でも」


「もちろんですよ、贈り物は形より気持ちが大事なんですから!」


「うん!」


 アディとはかなり打ち解けあって、色々話すうちに予知夢の話もしてしまって、最初は(いぶか)っていたアディだけど最終的に全部理解してくれた。だからアディは私の行動を全面的に応援してくれている。


 《贈り物は形より気持ちが大事なんですから!》


 アディの言葉に背を押されて、私は再びアルバの部屋の前にいた。


(ど、堂々とするのよオリガ! あなたはアルバの妻なんだから!)


 アルバの部屋の扉をノックする。コンコンッ!


 シーン‥‥‥


 返事がない? ただの扉のようだ‥‥‥


 いや、落ち着くのよオリガ! 私は王妃! 返事なんかいらないわ!


「失礼しまーす‥‥‥」


 開き直って部屋に入ってみると、何やら言い争う声が聞こえる。


(女の人の声‥‥‥?)


「あのちんちくりんのどこがいいのですか? アルバ」


「はぁ、またその話か‥‥‥、いい加減にしてくれ」


「聞きましたよ、最近はずっと一緒に朝食を()っているとか? いつまで子どものおままごとに付き合うつもりですか? あなたはこのバラム国の国王なのですよ。 さっさと次の妃を(めと)ってあのちんちくりんのことは忘れなさい」


「あなたには関係ないことだ。それに俺は‥‥‥」


 誰? 何の話をしているの


 アルバは何を話しているの?


 誰のこと?


 何のこと?


 ちんちくりんって、誰?


 次の妃って、何?


「おままごと‥‥‥」


 そう呟いたと同時に、涙が溢れてきた。潔癖症が原因なんかじゃない、きっと最初から私は‥‥‥


(アルバになんとも思われてなかった)


「オリガ?」


「えっ、オリガ様!? どうして」


 さっきまで喚いていた女が慌てて口を塞ぐ。


 耳がキィーンと鳴る。足元がふわふわして。私は何故ここにいるんだろう。


 ああそうだ、私、何かを渡しにきたんだっけ。


「あ、アルバ‥‥‥、これ、私が作っ、あなたに渡そうと‥‥‥思っ、て‥‥‥」


 アルバの緑の瞳に合わせて作った耳飾りを渡そうとする。でも涙で手が震えて‥‥‥


 カシャン!


(あ‥‥‥)


 不恰好な耳飾りが、余計に惨めで。


(馬鹿だな私、こんな下手くそなものを作って、浮かれて‥‥‥本当に馬鹿みたい)


《オリガ様はお妃様ですし、特別なのかもしれませんね》


 特別だなんて言われて、鵜呑みにして馬鹿みたい。


《これから知っていけばいいんです》


 これからアルバのことを知っていこうだなんて、おこがましい。


 最初から相手にされてもいなかったのに!!


「もっ、もうおままごとに‥‥‥、付き合わなくていいですから!! 今までごめんなさい!!」


 落ちた耳飾りをそのままに、私は走ってその場を後にした。


「オリガ!!」


 後ろで私を呼ぶ声が聞こえる。でも何故? 何故私を呼ぶの?


 あの声は誰を呼んでいるの?


 聞いても、答えてくれる人はどこにもいない。


 もう何も聞こえてこない‥‥‥

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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