二人の余韻
オリガ視点です。短め。
夜。王の寝室は静寂に包まれていた。天蓋つきの寝台には深い藍色と金糸で織られた布が垂れ、細やかな幾何学模様が月明かりに浮かび上がる。
壁は鮮やかなタイルのモザイクで飾られ、アラベスクの曲線が果てしなく連なっていた。
真鍮のランプからこぼれる琥珀色の光が、天井に星のような影を描き、香炉から漂うサフランと薔薇油の香りが、夜気に溶けている。
柔らかな絨毯の上に裸足を投げ出した私は、まだ胸の奥に残る高揚を抱えながら今日一日のことを思い返していた。
隣に座るアルバは、王としての威厳を纏いながらも、その瞳はただ私一人を映している。
「……オリガ。今日の料理、本当に旨かった」
「え……?」
アルバはひとつ低く笑った。
「……あの一皿を口にした瞬間、胸の奥に熱いものが込み上げてきた。お前が俺に食べさせたいと願って、慣れない手で作ってくれたこと。それが、何よりも嬉しかったんだ」
「アルバ……!」
私は嬉しさで胸が熱くなり、思わずアルバの逞しい胸板に飛び込む。
彼は少し驚いたようだったが、すぐに私の髪を優しく撫でた。
ランプの光が彼の横顔を照らし、琥珀色の影が彫りの深い顔立ちを際立たせる。その声は、昼間の不器用な一言とは違い、真摯で温かかった。
「アディやカミラがはしゃいで喜んでいたな。だが……俺にとって一番大切なのは、お前の気持ちだ。子供のようだと思っていた妻が、こうして心を尽くして誰かを喜ばせたいと願ってくれる。その姿が、俺には誇らしくてたまらない」
そう言うとアルバは、私の手を取り、指先に唇を落とした。
「オリガ……お前は俺の誇りだ。そして俺の喜びだ」
「嬉しいです!アルバ」
よかった。アルバとみんなが喜んでくれて。アルバに褒められて……
ランプの影が壁いっぱいに揺れ、王の寝室はその夜、二人の世界を映し出す星空のように輝いていた。
昼間とは打って変わり、夜の静けさをランプや星空で感じていただけると嬉しいです。
また一歩、二人の距離が縮まったぜ!
ここまでお読みくださりありがとうございました。




