いざ、実食!!
最初だけオリガ視点です。
* * *のあとは三人称です。
やがてオーブンから取り出した《メランザーネ・アッラ・パルミジャーナ》は、チーズが糸を引きながら表面に黄金色の焼き目を宿していた。
熱気とともに、バジルの青々とした香りと、オリーブ油に溶けたにんにくの甘い匂いが広がっていく。皿を置いた瞬間、室内の空気がふっと変わったように思えた。
「できたわ!アルバ、食べて!」
私は取り皿に分けて差し出し、アルバにフォークを渡した。アルバは黙ってフォークを手に取り、ひと切れを口へ運ぶ。フォークの先が層を断つかすかな音が耳に響き、私は胸をぎゅっと縮める。咀嚼の間はやけに長く、オーブン皿の端で油がぱちりと弾ける音が妙に大きく感じられた。
私は膝の上で指を絡め、呼吸さえ浅くなる。
「ど、どうかしら?アルバ……?」
やがて、彼は最後のひとかけらまで平らげて、ぽつりとつぶやいた。
「……悪くない。いや、旨い」
その言葉に続けて、アルバがふっと柔らかく微笑んだ。胸の緊張が一気にほどけ、私は涙が出そうになるほど安堵して声をあげた。
「……よかった。本当に、よかった……!」
視線を逸らすアルバの頬が、わずかに赤く染まっている。
「わあ……!」
思わず声を上げたのはアディだった。フォークを握ったまま、目を輝かせている。
「口の中でとろける……チーズとソースが合わさって、夢みたい!」
カミラも続いて一口食べ、両手を胸にあてて大きく息を吐いた。
「こんな料理、初めてです……! 舌が喜んでる……!」
カミラの頬には涙さえ浮かび、素直な感動があふれていた。
* * *
アルバは、三人のはしゃぐような歓声を静かに眺めていた。
――オリガがこんなふうに、皆を笑顔にする料理を作るようになるとは。
かつてはまだ子供だとしか思えなかった妻が、いまは自分に食べさせたいと心を込めて腕をふるっている。その純粋さが、何よりも胸を打つ。
彼は口にこそ出さなかったが、心の底で確かな誇りと幸福を噛みしめていた。
オリガはそんなアルバの静かな眼差しを感じ取り、さらに胸が熱くなった。郷里の味を、愛する人と仲間たちと分かち合えた。その事実が、何よりも幸福だった。
オリガは故郷の味をアルバと仲間達と共有できて大変幸せそうです。
アルバは子供だと思っていたオリガの意外な一面にまた一つ気付くごとができて感動しています。
今回も少し短くなってしまいました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




