初々しい二人
少しずつアルバの気持ちがわかってきたオリガ。アルバは何を思うのか?
俺はアルバ。バラム王国の国王であり、オリガの夫だ。
今朝は珍しく、彼女から「一緒に朝食を」と誘われた。
いつもは別棟で気ままに過ごすオリガだ。最初は何か裏があるのではと訝ったが‥‥‥
朝の光が降り注ぐ中庭で、銀の食器がかすかに音を立てる。
香り高い紅茶の湯気が揺れている。
オリガの金色の髪が陽光を受け、まるで溶けた蜂蜜のように輝いている。
「アルバに……こんな顔、見て欲しくないから」
そう言って、彼女は不意に泣き出した。
計らずも、俺の胸が波立つ。
長い髪、透き通る白い肌、空を映す青い瞳。結婚した当初も、その後も、ずっと魅了され続けてきたーーーーだが、それを言葉にしたことはなかった。
王という立場が、俺を黙らせてきたのだ。
誰の前でも泰然とし、疑いを抱き、決して本音を漏らさない。それがいつしか癖となり、嫁の前でさえも心を閉ざしてしまった。
(小さな手……こんなにも華奢だったか)
俺は思わず、彼女の手を指先でなぞる。柔らかく温かい感触に、胸の奥がじわりと熱を帯びた。
どうして、もっと早くこの温もりに気付けなかったのか。
オリガは少し照れたように、しかし逃げずに膝の上に身を預けている。
風が中庭を抜け、彼女の髪先が頬をくすぐった。
「あの、アルバ」
「ん?」
「……そろそろ、離してもらえないかなぁって……」
「何故だ?」
「ほら、いつまでも膝に乗っていると、アルバが重いかなって……」
その言葉に、俺はふっと息をのみ、彼女の顔を見つめた。
その唇が、やけに近く感じられた。
次の瞬間、俺は迷いなくーーーーその小さな唇を塞いでいた。
柔らかく、かすかに震える。
(もっと早く……こうしていればよかった)
「ぷはっ……アルバ! いきなり何をするの?」
「何って、キスだ。結婚式でもしただろう」
「そ、それは知ってるけど……こんな、いきなり」
「いきなりは嫌か?」
「……嫌じゃないです、けど」
オリガは真っ赤になって顔を伏せた。
(なんだこの可愛い生き物は‥‥‥オリガはこんなに可愛いかったか?)
その姿があまりに愛おしくて、俺はもう一度、そっと口付けた。
「ぇ‥‥‥」
「可愛いな、オリガ」
「‥‥‥ッ!!//」
そう言って俺は再びオリガに口付けた。
オリガは今度は嫌がらなかった。代わりに耳まで真っ赤になっていた。
仲良しじゃない??
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