オリガの愛
オリガ視点です。
――息が詰まり、言葉が喉に絡んで出てこなかった。 アルバの言葉を聞いた瞬間、張りつめていた心の糸がぷつりと切れて、気づけば涙があふれていた。声にならない嗚咽が、胸の奥からせり上がってくる。
「……なぜ泣く?」
低く響くアルバの問いかけに、胸の奥で言葉が次々と浮かんでは消えていく。
どんな慰めも、アルバが抱えてきた夜の重さの前では紙切れのように薄い。
アルバの大きな背中が小さく見える。
私は思わずその背中にしがみつく。
「アルバ、アルバ——」と私は心の中で叫んだ。
私は首を振りながら、ようやくかすれた声を絞り出した。
「……アルバが、私に心を開いてくれて……嬉しいの……」
忌々しいはずの、忘れたい過去を。
言葉にした途端、頬を伝う雫がひとつ、またひとつと増えていった。
私はずっと、彼を支えたかった。 不器用でも、弱くても、幼くても……それでもこの想いだけは本物で。
だから今、この瞬間がただ、嬉しくてたまらなかった。
「アルバ……私は、あなたのためだけに生きていたい!」
震える声でそう告げると、アルバの瞳が一瞬だけ揺らぎ、私を強く抱きしめた。
アルバの腕の温もりに包まれ、私は確かに感じていた。もう二人は離れない、と。
アルバの腕に抱きしめられながら、私はその胸の鼓動を聴いていた。
湿った土と花の香りが胸に満ち、思わず深く息を吸い込む。夜気はひんやりと肌に触れるが、彼の体温がそれを押し返し、温もりで包み込む。
「お前のこの髪、この瞳、月光に映えてまるで……出会った頃の衝撃を思い出す。あの日の天使を」
そう言いながらアルバは私の金色の髪をくるくると指で弄ぶ。
「ふふふ、アディは私を女神だと言っていたわ」
「ああ、確かにアディの言葉は間違っていないな。お前は女神だ」
「私は……私がもし女神だったなら、あなたにとって救いでありたいわ」
「もう十分救いになっているよ」
アルバはそう言って私の頬を撫でる。アルバの大きな手は、優しく、少し熱い。
「アルバ……」
静かな夜。月明かりが花畑を銀色に染め上げ、咲き乱れる花弁が光を受けて淡く揺れる。
甘くほろ苦い香りが風に溶け、季節を忘れた森はまるで時を止めたようだった。
風が止み、世界が息を潜める。
ただ二人を包むのは、夜の深さと、互いの温もりだけ。
遠くで、一羽の鳥が夜を裂くように短く鳴いた。
その声はまるで、過ぎ去った孤独を悼む鎮魂歌のようであり、同時に新しい絆を祝福する祈りのようでもあった。
アルバの孤独も、私の涙も、この夜にすべて溶けていくように思えた。
――もう二人はひとりではない。
月光に照らされた彼の横顔を見上げながら、私はそっと目を閉じた。
銀色の夜に咲く花のように、この想いは決して枯れることはない、と信じて。
オリガはまだ自分が幼いのを自覚しながらもアルバに寄り添いたいし、アルバは過去を口にする事でオリガに自分を知ってもらおうとしています。二人の絆はより深いものになったはずです。
もう二人はひとりではない←このセリフお気に入りです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




