森の花畑
アルバ視点です。
日が傾きかけた頃、俺たちを迎えに来た侍従が告げた。
「恐れ入ります。このあと伯爵家で夕食の席が――お詫びも兼ねてぜひ一緒にと伯爵がおっしゃっていて……」
沈黙が落ちた。
俺は侍従を見据え、冷ややかに口を開く。
「……断る。」
声は低く、氷の刃のようにゆっくりと。
言葉に込めた怒気は、表情よりも遥かに雄弁に伝わり、空気を凍りつかせる。
最愛の妻を苦しめた者に対して、笑顔で応じるほど俺は寛容ではない。
侍従はその一言だけで膝が震え、息を呑んだ。
俺はそばに控えていた侍女カミラに目配せした。
彼女はすぐに察し、侍従たちを遠ざけるよう小声で指示を飛ばす。
やがて人払いが済むと、あたりは静まり返り、残されたのは俺とオリガ、そして愛馬ソウタだけになった。
オリガは小さく瞬きをし、俺の袖にそっと指をかける。
「アルバ……、あれでよかったのかしら」
その瞳にはもう赦しがあった。俺はその瞳をまっすぐに見つめた。
「お前は優しい。だからライラのことも許した。だが、俺は違う。王として、夫として――あの一件をなかったことにするつもりはない」
「ええ、わかったわ」
オリガはそれ以上何も言わず、俺の決意を受け止めるようにただ頷いた。
オリガのその優しさと温もりに、胸の奥が強く震える。
「行こう。」
俺が囁くと、二人はソウタの背に並んで跨る。
愛馬が嘶きをあげ、蹄が地を蹴った。
夕陽に染まる道を、俺たちは誰にも邪魔されず、西の森へと駆けていった。
「ねぇ、どこへ行くのアルバ??」
「なに、すぐにわかるさ」
二人を乗せた馬は街を離れ、西の森へと進む。やがて木々のざわめきの向こうに、花畑の残された跡が見えてきた。
「ソウタ、重くない?」
「ヒヒン!」
「ははは!ソウタはお前は綿毛よりも軽いと言っているな!」
「そ、そうなの?それならいいんだけど……」
俺たちが降りたそこには色を失いながらもなお風に揺れる花々があり、夕陽に照らされて静かに輝いていた。
俺はオリガの手を離さずに、囁いた。
「ここなら、余計な影も雑音もない。ただお前と俺だけだ」
風が潮の香りと花の匂いを運んでくる。 その中で、俺たちは互いを見つめ合い、言葉よりも確かな絆を確かめた。
この場所は……どこですか?汗
伯爵は償いをしたいと食事に誘いましたが、オリガを苦しめておいてそれはないですよね。オリガは優しいので少し後ろめたさはあるようですが王のアルバの意思を尊重したみたいです。少し短めになってしまいました!個人的にはソウタはかなりお利口さんだと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




