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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第六章

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女神オリガ

アルバ視点です。

 罪を隠し通せなかったのだろう。


 ライラは蒼ざめた顔で、震える声を絞り出した。


「わ、私が……あの布に香料を……。伯爵には、父にも知られてはならないと思い私一人でやりました……でも……」 


 その場にいた誰もが息を呑んだ。(アルバ)なら、王としてこの場で即刻ライラの首を()ねることも辞さないからだ。たとえ伯爵の娘であろうと。王妃であるオリガの命を狙ったのだから。王妃を狙う事は王を侮辱するに等しい!


「お願いです!父は今回の布とは関係ありません!私がオリガ様に勝手に嫉妬して、勝手にしたことなのです!罰は私だけに。どうか父だけは……」


 だが、枕元から聞こえたのは――あまりに優しい声だった。


「……ライラ」 


 アルバに体を起こされたオリガが、澄んだ瞳でライラを見つめていた。


「私はまだ生きているわ。……だから、もういいのよ」


 その言葉は、まるで深い海の底から差し込む光のようだった。

 責めるのではなく、拒むのでもなく、ただ包み込む。

 ライラの胸を覆っていた暗闇が、一気に剥がれ落ちていくのを彼女自身も感じた。


「……ど、どうして……?」 


 涙で濡れた顔を上げ、ライラは震える唇で問う。


「どうして……憎まないのですか……私を……」


 オリガは静かに首を振った。


「憎しみは、私を救ってはくれないわ。だけど、許すことでなら……誰かを救えるかもしれない。だから私は、あなたを許したい」


 その声音には、まだ十六歳の少女であるはずの幼さと、同時に王妃としての不可思議な威厳が同居していた。 清らかでありながら、決して折れることのない芯。

 罪を責めるでもなく、ただ受け止めるその姿に、ライラは嗚咽を堪えきれず、床に崩れ落ちた。


「……オリガ様……! 私は……愚かでした……! あなたを憎んで憎んで、嫉妬していたはずなのに……」


 今はただ、あなたの光に……


「今はただ……ただあなたの光にすがりたい……!」


 バラム国の皆は男女ともに体が大きい。オリガよりも大きな体を縮こませて許しを請うライラの姿は、罪を懺悔するひとりの哀れな少女のように見えた。 


 オリガは静かにライラへと手を差し伸べる。


「立って。あなたには、まだ歩ける道があるのだから」


 その聖母的な慈愛と気高さに、場の全員が息を呑んだ。


 その瞬間、曇り空の切れ間から差し込んだ一筋の光が、まるで天から与えられた祝福のようにオリガを包み込んだ。


 その姿は、地上に降り立った聖女か、あるいは女神の化身かと錯覚させるほどに神秘的で――そばに控えていたアディが思わず声を漏らす。


「……女神だ……オリガ様は本当に女神だったんだ……!!」


 場に居合わせた者たちは誰もが言葉を失い、ただその神々しい光景を胸に刻み、悟った。


 ーーオリガの存在そのものが、この国を導く光であるとーー


 俺も言葉を失った。あんなに苦しんだのに。


 ――死の淵に立たされたのに――それでも許すのか。


 オリガの広すぎる心、澄み切った魂。そのすべてに、胸を撃たれる。 あの細くて小さな身体に、これほどの広い心と、王妃の威厳が宿るのか。


 窓辺から差し込む朝の光がオリガだけを照らすその姿は、女神と見紛うほどに美しい。


 たった十六歳にして、これほどの光を放つ存在。オリガは確実に、以前のオリガとは違う!


 俺は彼女の手を取って、深く息を吐いた。


「……そなたこそ、我が王妃」


この伯爵家での事件を通して、オリガは犯人を許すことを選び、また無意識のうちに王妃としての自覚が目覚めたようです。


光がオリガにだけ差し込み、まるで女神のようなオリガの様子に、伯爵家の面々のみならず、バラム国の従者に至るまで、あっという間にオリガに引き込まれていく様子を感じていただけたらと思います。


そしてアルバの最後の一言は痺れますね〜!!


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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