贈り物の布
回廊を抜け、大広間に足を踏み入れると、天井から吊るされた紺碧の染め布がひらめき、光を受けて宝石のように輝いていた。
「綺麗ね!アルバ!見て、この調度品なんて、金細工でアデニウム(砂漠のバラ)が刻まれているわ!」
ただ微笑んで頷くアルバの横で私が大はしゃぎをしていると、背後で伯爵の声がした。
「オリガ様」
カレドが柔らかい声で呼びかけた。
「どうやら、この屋敷の染め布をことのほか気に入っていただけたようですね」
「ええ……どれも素晴らしくて……」
(やばい!ここが伯爵様のお家だという事を一瞬忘れていたわ!私ったらすっかりはしゃいじゃって……)
私は頬を紅潮させたまま答える。
カレドは従者に目配せし、一枚の布を運ばせた。それは、深い紫に銀糸で月と星を描き出した、息をのむほど見事な布だった。
「これは我が領地の最高の職人たちが手がけたもの。代々、賓客にのみ贈られる品です。もしよろしければ――オリガ様に差し上げたい」
私は思わず息を呑んだ。
「そ、そんな……私には過ぎたものです」
伯爵は優雅に首を振る。
「いえ、私にとっては誉れなのです。この布は、夜空を映す鏡とされております。どうかオリガ様の手で、新しい物語を与えていただきたい」
夜空を映す鏡……その言い伝えどおり、布はキラキラと星を散りばめたように輝きを放っていた。
(こんな見事な布を頂いていいのかしら?でも、頂かないと失礼かしら?)
「ありがたく……頂戴いたします」
私は紫地に銀糸で星月を織り込んだ布を胸に抱き、その繊細な光に息を呑んだ。それに驚くほど軽いしなめらかだわ……!
私は思わずアルバを見やった。アルバは小さく笑い、頷いた。
「受け取っておきなさい」とーー
すみません今回は少し短めでした。
夜空を映し込んだような布の輝きと、オリガの喜びを一緒に感じてもらえたら嬉しいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




