西の森の探索
朝の静けさを裂くように、薄金の光が厚い絹の帳越しに差し込み、寝台の縁をゆるやかに照らしていた。天蓋は金糸で縫い取られたアラベスク模様、深紅の布地はまだ夜の名残を宿している。
その豪奢な寝台に身を横たえながら、俺は隣でまどろむオリガの金の髪を撫でた。光を受けたそれは、まるで陽の粒を散らした宝糸のようだ。
「今日は西の森へ探索に行く。ソウタも連れて行こう」
俺は小声で切り出した。
「西の森……探索ですか?」
まだ夢の残滓を瞳に映すオリガがこちらを見上げる。
「お前も行くか?」
「はい!行きたいです!」
想像していた通りの答えに思わず笑みがこぼれる。
「お前ならそう言うと思っていた。ソウタも喜ぶだろう」
(寝台の上ですら、俺は"一緒に行きたい”の一言が言えないのか……)
心の奥でそんな自嘲を飲み込む。
俺はアルバ。バラム王国の国王であり、今横で微笑んでいるオリガの夫である。
俺の嫁オリガは、まだ十六歳。
本で大人の知識は身につけている事は先日知ったが、ふとした仕草や言葉の端々に、まだ少女のあどけなさが残っている。
好奇心にきらめく瞳、拗ねるとすぐに表情に出る顔立ち――その幼さは隠しようもなく、守ってやりたいと思わせる清らかさを纏っていた。
彼女との関係は、今も純粋で澄んだままだ。
「オリガはリアムを最後までもてなした。その礼だ。景色の良い場所を見せよう」
彼女の頬がほんのり染まり、朝日の光と溶け合った。
* * *
鏡台の前で私は鼻歌を口ずさんでいた。
私はオリガ。つい先日、夫アルバに殺される予知夢的な夢を見たんだけど、アルバとの関係も、だいぶ良くなってきたみたい。アルバもそう思ってくれてると良いな……
象牙細工が施された鏡台の表面は、朝日を映し返し、琥珀色の輝きを放っている。香油の甘い香りが漂い、気分をさらに浮き立たせた。
「おやおや、鼻歌なんか歌っちゃって! オリガ様、何か良いことがあったんです?」
鏡越しにアディがにやりと笑う。
「アルバが西の森に連れて行ってくれるの。リアム様をもてなしたお礼なんですって」
「そっかそっか。オリガ様はアルバ様に愛されてますね。ごちそうさまです」
「そ、そんなことないわ。アルバは皆に優しいもの……」
そう答えながらも頬が熱くなるのを隠せない。
アディは首をかしげつつも、妙に納得したように笑みを深めた。
(アルバ様は厳格なお方。でも、オリガ様にだけは優しい……オリガ様は気付いてないようだけど)
(……おもしろいから黙っとこ)
「そうそう! 前に話したカミラ、外で待たせてあるんですよ。直接謝りたいんだって」
「カミラー!」
とアディが呼ぶと、扉が音もなく開き、カミラが申し訳なさそうに顔を覗かせた。
カミラはなんていうのかな?
西の森、楽しみですね♪
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