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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第四章

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西の森の探索

 朝の静けさを裂くように、薄金の光が厚い絹の帳越しに差し込み、寝台の縁をゆるやかに照らしていた。天蓋は金糸で縫い取られたアラベスク模様、深紅(しんく)の布地はまだ夜の名残を宿している。


 その豪奢な寝台に身を横たえながら、俺は隣でまどろむオリガの金の髪を撫でた。光を受けたそれは、まるで陽の粒を散らした宝糸のようだ。


「今日は西の森へ探索に行く。ソウタも連れて行こう」

 俺は小声で切り出した。


「西の森……探索ですか?」


 まだ夢の残滓(ざんし)を瞳に映すオリガがこちらを見上げる。


「お前も行くか?」


「はい!行きたいです!」


 想像していた通りの答えに思わず笑みがこぼれる。


 「お前ならそう言うと思っていた。ソウタも喜ぶだろう」


(寝台の上ですら、俺は"一緒に行きたい”の一言が言えないのか……)


 心の奥でそんな自嘲を飲み込む。


 俺はアルバ。バラム王国の国王であり、今横で微笑んでいるオリガの夫である。


 俺の嫁オリガは、まだ十六歳。


 本で大人の知識は身につけている事は先日知ったが、ふとした仕草や言葉の端々に、まだ少女のあどけなさが残っている。

 好奇心にきらめく瞳、拗ねるとすぐに表情に出る顔立ち――その幼さは隠しようもなく、守ってやりたいと思わせる清らかさを纏っていた。


 彼女との関係は、今も純粋で澄んだままだ。


「オリガはリアムを最後までもてなした。その礼だ。景色の良い場所を見せよう」


 彼女の頬がほんのり染まり、朝日の光と溶け合った。


 * * *


 鏡台の前で私は鼻歌を口ずさんでいた。


 私はオリガ。つい先日、夫アルバに殺される予知夢的な夢を見たんだけど、アルバとの関係も、だいぶ良くなってきたみたい。アルバもそう思ってくれてると良いな……


 象牙細工が施された鏡台の表面は、朝日を映し返し、琥珀色の輝きを放っている。香油の甘い香りが漂い、気分をさらに浮き立たせた。


「おやおや、鼻歌なんか歌っちゃって! オリガ様、何か良いことがあったんです?」


 鏡越しにアディがにやりと笑う。


「アルバが西の森に連れて行ってくれるの。リアム様をもてなしたお礼なんですって」


「そっかそっか。オリガ様はアルバ様に愛されてますね。ごちそうさまです」


「そ、そんなことないわ。アルバは皆に優しいもの……」


 そう答えながらも頬が熱くなるのを隠せない。


 アディは首をかしげつつも、妙に納得したように笑みを深めた。

 

 (アルバ様は厳格なお方。でも、オリガ様にだけは優しい……オリガ様は気付いてないようだけど)


 (……おもしろいから黙っとこ)


「そうそう! 前に話したカミラ、外で待たせてあるんですよ。直接謝りたいんだって」


「カミラー!」


 とアディが呼ぶと、扉が音もなく開き、カミラが申し訳なさそうに顔を覗かせた。

カミラはなんていうのかな? 

西の森、楽しみですね♪


ここまでお読みくださりありがとうございました!

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