侍女たちの噂
すみませんこのエピソードを先に出してしまいました。すでに読んでしまった方は申し訳ないです。
湯気の立つ大桶の間を、湿ったリネンの匂いが満たしていた。侍女たちは袖を肘までまくり、洗い棒を桶に叩きつけながら声をひそめる。
「聞いた? 昨夜の宴で、オリガ様ったらリアム様の椅子を自分で引いて座らせたんだって」
「それだけじゃないわよ。果物皿からザクロを選んで、殻まで割って手渡したんだって」
「まさかあのオリガ様がねぇ……。極度の面倒くさがりだと思ってたのに」
「アディとも笑いながら話してたって。まるで古い友達みたいだったそうよ」
桶の水が跳ね、石床に水輪が広がる。それでも、洗濯女たちの耳と舌は、布よりも噂を熱心に揉みほぐしていた。
一方で、バラム城に入城を許された貴族たちも、皆口々にオリガの様子を噂していた。
白大理石の柱廊から、金糸を織り込んだ緞帳越しに庭園が望める。噴水の縁には銀の香炉が置かれ、バラ水の香りが涼やかに漂っていた。
低く据えられた象牙細工の卓には、デーツや無花果、薄切りの砂糖菓子が載っている。
老侯爵が扇を揺らしながら言った。
「聞き及んだか? オリガ殿があのリアム殿に、席を立って敬意を示したと」
向かいの若い伯爵夫人が琥珀色の茶を口に含み、唇の端を上げる。
「ええ、珍しいことですわね。あの方が……ご自分から」
「まこと、風向きが変わったようだ」
デーツの皿を指で押しやりながら、侯爵が頷く。
「心を掴むのは剣よりも、こうした所作かもしれん」
噴水の水音の下で、金の装飾が午後の光を反射し、静かな会話に柔らかなきらめきを添えていた。
オリガのリアムに対する真摯な態度が、城の者の心に変化をもたらしたようだ。
侍女と貴族のオリガへの印象も変わってきたようですね!
侍女と貴族の対比を、食器や衣装の豪華さ、動と静で感じていただけると嬉しいです。
※デーツはナツメヤシの事です。
ここまでお読みくださりありがとうございました!




