オリガの気持ちは?
※視点がウロウロするので読みにくいかもしれません。
「そ、そういえばボリスは、寒い地方だから雪室が有名なんですよね!そこで熟成された茶葉が人気だとか‥‥‥」
「お、よく知っているな!雪室は先人たちの知恵で‥‥‥」
リアムが語りかけようとした時、城の廊下から貴族や侍女たちのざわめきが波のように押し寄せてきた。衣擦れの音に混じって、低く潜む噂話が耳へと忍び込む。
「あの子、本当にオリガなの?」
「今までは他国のことなど、興味も示さなかったのに」
「どういうこと? 今までは接客はアルバ様お一人でしたのに、今日はオリガ様もご一緒だわ」
「しかも手を繋いでいるじゃない。あの二人、不仲の噂は間違いだったの?」
胸の奥がひやりと冷える。血が足元へと落ちていくような感覚。
(うわ、うわうわ……過去の私、何をしていたのよ!そんな態度じゃ嫌われて当然じゃない!)
私が過去の自分の行いに一人で悶えていると、
「‥‥‥」
アルバが私の手を握る手に力を込めた。
(アルバ?怒ってるの?)
アルバを見ると、眉間に皺が寄っていた。怒ってる!
(何故?私、何か失敗したかしら?)
私の心配をよそに、リアム様は上機嫌だった。
* * *
場所はアルバの私室。王の執務室よりも狭く、厚手の絨毯が敷かれ、壁には燻した木材の香りがこもっている。窓際には厚いカーテンが垂れ、外の夜気を完全に遮っていた。
「いや〜、この国は気候が穏やかだし、飯はうまいし最高だな!」
リアムの笑い声は、酒の香と一緒に部屋の空気を温める。
彼の故郷ボリスは、冬には陽が短く、雪が屋根を覆い尽くすほどの寒国だ。雪室で熟成させた茶葉や、氷下で寝かせた魚が珍重される。人々は毛皮の上着を重ね、炉端で長く語らうのが常だ。
「で?お前はいつ帰るのだ?」
「ははは、ずいぶんな言葉だなぁ。そこは"ゆっくりしていけ"と言うところじゃないのか」
リアムは杯を軽く回し、揺れる琥珀色を見つめた。氷の中で魚を熟成させるように、言葉を少し寝かせてから続ける。
「まあ、俺の事を思って。なんだろうけどさ」
アルバは背もたれに深く腰を預け、肘掛けを指でとんとんと叩く。その音が短い沈黙を刻む。
「侯爵家の一人息子のくせに遊び惚けて……」
「俺はお前とは違うの!どうせ家を継ぐのは決まっているのだし、今のうちに遊びたいだけ遊ぶのさ」
「はぁ、全く。お前の嫁になる女は苦労するな」
嫁、という言葉を聞き、リアムが酒を飲む手を止めた。
「オリガちゃん、可愛いよな」
「なんだと?」
(こいつ、早速オリガに『ちゃん』付けしてやがる!)
「俺の嫁の心配してるけどさ、お前こそオリガちゃんを大事にしているのか?聞くところによるとお前は公務にいつも一人で出ていたみたいじゃないか。オリガちゃんを伴ったのも今回が初めてだとか?」
「‥‥‥オリガは今まで公務は嫌がっていたんだ。それが突然お前を出迎えしたいと言い出してな」
(頑張るから見てて! といじらしい事を言われて、断れるものか‥‥‥。たとえ相手がこいつのような女好きであっても)
「ふぅ〜ん、でも今は別室で寝ているんだろう?可哀想じゃないか。新婚なのに一人寝なんて」
「リアム‥‥‥オリガはまだ子どもだぞ」
「はぁ‥‥‥、さすが一国の主はいう事が違うねぇ。オリガちゃんはもうお前と結婚したから浮気の心配もないってか」
短く息を吐いたリアムが、杯を傾ける。氷の国の男らしい、挑発混じりの笑みを浮かべながら。
「なんだと」
「そんな怖い顔をするな。でもさ、考えてみなよ。あの可愛いらしい容姿、健気な態度。男がほっとくと思うか?例えば俺みたいな」
「‥‥‥リアム、その辺に」
「俺が今夜オリガちゃんの相手をしてもいいかな?あの手の柔らかさからして、体も相当‥‥‥」
「リアム!!」
アルバに叫ばれて、リアムは酒を置いて真面目な顔でアルバを見上げる。
「‥‥‥なるほど、アルバはオリガちゃんにぞっこんて事か。でもオリガちゃんは?オリガちゃんの気持ちはどうなんだ?」
お前はオリガちゃんを満足させられているのか?
リアムに言われてみるみるうちに眉間に皺が寄るアルバ。
「‥‥‥はぁ。飲みすぎだリアム。今日はここで寝ろ!」
アルバはそう言ってその部屋から立ち去った。
「何があったか知らないが、感情豊かになっちまって!ははは!」
リアムのからかうような高笑いが、アルバの背中から聞こえた。
果たしてアルバは何を思うのか!!
ここまでお読みいただきありがとうございました。




