懐かしい場所
アルバの提案で久しぶりにルクスとソウタに乗ってお出かけする事になったオリガはいつも以上にはしゃいでいた。
さらに時が過ぎ、バラムに本格的な冬が来た。といっても、相変わらず私にとっては涼しいくらいの気温だけど……
「オリガ様、今日は何色の宝石を編み込みますか?」
白い象牙細工に囲まれた鏡台の前で、懐かしい響きが聞こえる。思えばアディにこの部屋で髪を整えてもらうのは久しぶりだった。
「今日はアルバが森に連れて行ってくれるんだって!最近ずっと忙しくて時間が取れなかった埋め合わせにって誘ってくれたの!ルクスの乗り方もだいぶ様になって来たからって!久しぶりのデートよ」
楽しみで胸を弾ませ、一人で浮かれる私の様子にアディは微笑む。
「それじゃ髪の宝石はない方がいいですね」
そう言ってアディはあっという間に私の髪をアップにしてくれた。
「でも何もないのは寂しいし、一応王妃様ですからね。これをつけましょう」
そう言ってアディが取り出したのは、バラムの紋章が裏に刻印されてある金で縁取られた青い蝶々の髪飾り。
「なぁに『一応』って、失礼ね!」
「失礼しました。オリガ様は立派な王妃様です」
「ふっ」
「くくくっ」
お互い笑いが止まらなかった。アディとこんなに打ち解ける日が来るなんて……嬉しいわ。
「それじゃ王妃様、行ってらっしゃい。アルバ様、オリガ様をよろしくお願いしますね」
「……任せておけ」
「じゃあねアディ!夕方には帰るから!」
ルクスに乗りながら私はアディに手を振る。
「大丈夫か?オリガ」
アルバがそう言いながらルクスの方に目をやる。
「うん、ルクスは賢いから、私のペースに合わせてくれるわ!本当にお利口さんよ!」
「……ああ、そうだな。ルクス、お前は本当にいい子だ」
* * *
「あれ?この花畑……」
「ああ、オリガと最初に出会った場所だ」
あの日、私は熊に襲われそうになったところをアルバに助けられた。
アルバに……
あの頃の私は、恋や、人を愛する気持ちはわからなかったけれど、今ならわかる……
「どうしてここへ?」
「ん?うん……とりあえず降りようか」
アルバはそう言うとソウタをおり、私をルクスから下ろした。
アルバに促されてたどり着いた場所は、湖だった。湖面へ降りそそぐ木漏れ日は、光の花びらのように揺れ、森の奥にひっそりと眠る湖を幻想の舞台へと変えていた。
「綺麗ね……」
私が小さく呟くと、アルバが私の手を握る力が強くなった。
「ん?アルバ……どうしたの?」
「……うむ……」
「なぁに?また怖い顔して〜」
私がアルバの眉間に自分の指を当てたその時。アルバがその腕を掴む。
「……ッ!」
アルバが私を見つめる目は真剣で……どこか苦しげで……
「アルバ……?」
「オリガ、思えば今まで俺は自分の気持ちをちゃんと伝えていなかった」
「えっ」
確かに最初の頃は私もアルバもお互いをどう思っているかわからなくて、うまく言葉にできなかったけど……
「アルバはいつもたくさん話してくれるわ、言葉に出さなくてもそれは伝わっています」
「……いや、これは、俺が言いたいんだ。俺の言葉で……」
アルバの言葉で……
「愛してる、オリガ」
「……ッ!!」
さっきまで湖を照らしていた木漏れ日が、私達を優しく照らした。
言葉で表現するのが苦手なアルバがついに……!
これはオリガ嬉しいよね。
中途半端なところで区切って申し訳ないです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




