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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十五章

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暴走するお嬢様方

三人称です。

 甘い薔薇水と、カルダモンやシナモンが混じり合った香りが空気に溶け込み、柔らかな絹の帳が揺れるたび、香煙(こうえん)は淡い渦を描いて漂っていく。


 低い机は光沢のある黒檀に金の細工が施され、そこに並ぶ茶器は繊細な細工の施された銀のポットと、宝石を纏うかのように彩られた瑠璃盞(るりさん)

 

 小さなグラスからは立ちのぼる湯気が光に透けて揺らめき、ミントと砂糖の混ざった芳しい香りが周囲を包んでいた。


 床には幾何学模様の織物が重ねられ、色鮮やかな香座(こうざ)が無造作に置かれている。窓辺には透ける布が垂らされ、差し込む陽光を金と紅に染めて揺らしている。


 そんな豪奢な煌めきに囲まれたお茶会は、果たして始まったわけだがーー


「いただきます」


 そう言ってオリガがカップを手に取り、ひと口お茶を飲む。


 その瞬間ーー


「!!ご覧あそばせ皆様!王妃様がお茶をお召し上がりになったわ!」


「その姿はまるで……まるで聖杯に口づけなさる女神!」


「ちょっと誰か!!今の湯気の立ち方を記録して!後世に残さねば!」


「……いやいや、ただお茶を飲まれただけでございますよ」


 アディが苦笑しながらそう言うが、令嬢達はオリガの所作に夢中で聞いていない。


「お茶になりたい……!せめてそのカップでも……!」


「だめよ!それは城の至宝として保管されるべきよ!」


「アディ様、どうか……!あのカップを一晩だけでも抱かせていただけません!?」


「いや、落ち着いてくださいよ。そんな事私に頼まれても……」


 アディは慌てて制止しながらも、今にも笑ってしまいそうで顔が引き攣っている。


 オリガはきょとんとした表情で小首をかしげるだけ。


「……何か??」


 その仕草に一ー


「きゃああ!!小首を傾げられた!!」


「この瞬間を記念日にしましょう!(こよみ)を新しく刷り直して!!」


「ちょっとちょっと、大げさですよ!!」


 アディは堪らなくなり、ご令嬢の暴走を慌てて止める。


「えっと、えっと……」


(何か変だわ……いや何が変とは具体的に言えないけど、このお嬢様方は何か思い違いをしているのかしら??)


 オリガが若干ズレた解釈をしながらその様子に困惑していたが、オリガを勝手に崇めだした令嬢たちはもう止められない!


「き、今日はいい日ですわね……」


 オリガが絞り出すようにそう言うと、ご令嬢の一人が歓声を上げた。


「聞いた!?"いい日"ですって!?」


「つまり今日この瞬間こそ歴史に刻まれるべき日ということよ!!」


「記録係!!早く暦に書き込みなさい!『王妃様のいい日記念日』よ!!」


「そんなもん記録するかぁ!!」


 とうとうアディが机を叩いて叫んだ。


アディはいつも大変だなぁ笑

お茶会、暴走するご令嬢達楽しかったです。


※カルダモン…ショウガ科の植物


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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