お忍びデート
オリガとアルバの楽しいデート回です。
オリガ視点
「わぁ〜!見てみてアルバ!この布!宝石が編み込んであるわ!これが真ん中か端に来るようにしたら素敵なドレスが作れそう!」
もう何日も、日を忘れるくらい部屋にこもっていたので、アルバの提案で今日は城下町に二人で出かけている。
とはいえ、市井に顔を出すのは私の誕生日パレード以来なので私の心は弾んでいた。
「ねぇ?ところで何故身分を隠すの?アルバ」
そう、今私たちは身分を隠して行動している。これってお忍びってやつかしら?
「……目立たないためだ。ここは大きな街だ。治安は悪くないが色んな者がいるし、用心しないとな」
(またあの老婆のような者が紛れていないとも限らないからな)
「ふぅん?まあなんでもいいわ!アルバと一緒なら何でも!この衣装も普段は着ないから新鮮だわ!」
私はお城では着ないような木綿の地味な橙色のシンプルな一枚布を纏った装いで、目立つ金の髪は同じ色味のフードをかぶって誤魔化した。
アルバも同じく、いつも身に着けている一目で王と分かる外套は着用せず、庶民的な格好をしている。
「アルバ、こういうのもいいわね!秘密の逢瀬って感じで!」
「ああ……」
アルバは微笑んでいるけど、表情に緊張感がある。きっとお城みたいに厳重な警備がないから心配しているのね。
でも……
せっかくのお忍びだから、ちょっとくらいいいよね……
「アルバ、あれ見て!ラクダよ、ラクダ!ほら、こっちにこっちに!」
私は子どものように彼の腕を引っ張って駆け出す。
ラクダに荷を積んで歩く商人がこちらに視線を寄越したが、そんなことお構いなし。
「オリガ、走ると危ない」
「だって一緒に見たいんだもの!」
私はラクダに手を伸ばし、その毛並みに触れると、すぐにアルバを見上げた。
「ほら、ふわふわしてる!アルバも触ってみて!」
「.....お前は本当に……」
呆れ顔をしつつも、彼も結局ラクダの背を撫でてしまう。
「あはは!アルバ可愛い!こっち向いて!」
私がそう言うと、アルバはラクダを撫でながら振り向く。
日差しを受けながらちょっと照れくさそうにして振り向くアルバが、まるで少年のように見えて思わず笑う。
通りを歩けば、布の店先で私は大判の布を広げ、アルバの肩にバサッとかける。
「この赤い布、アルバに似合いそう!絶対似合うわ!ねえ、ちょっと回ってみて!」
「俺はお前の人形ではないぞ」
「ええ~?回ってくれなきゃ私がやっちゃうからね!」
そう言って私が選んだ青い布を纏ってくるくる回ると、周囲がざわめく。布がひらめいて、まるでパッとそこに青い花が咲いたように見える。
「お嬢さん、すごくお似合いだよ!!」
「ありがとう!」
「オリガ、あまり目立つ行動は……」
「今は身分を隠してるからいいの!王と王妃じゃなくて今は『普通の恋人』なんだから!」
そう言って私はアルバの逞しい腕に私の腕を絡めて頬擦りする。
その様子に、アルバの表情が緩む。
「全く……お前には敵わんな」
さらに菓子屋で干し果実の蜜漬けを買えば、私はその場でひとつ摘んで彼の口元へ。
「はい、あ~ん!」
「オリガ……さっきから目立つ行動を……」
「いいから!ほら、口を開けて?ぱくって!」
アルバは渋々口を開けるが、食べた瞬間に少し驚いた顔をした。
「……甘いな」
「でしょ!じゃあ、次は私ね!はい、アルバから」
「……仕方ない」
不器用に干し果実を摘み、私の口に運んでくれる。その仕草に、胸がときめいて仕方がなかった。
「ねえ、アルバ。こんなふうに人前で何も気にせず一緒にいられるなんて、夢みたい!パレードの時は、なんだかんだで緊張してたし!」
「ああ、そうだな」
アルバは短く息をつき、けれど口元に笑みを浮かべた。
「……夢なら、いつまでも覚めなければいいのにな」
「ふふっ、アルバも楽しかったでしょう?」
「ああ、思いつきだったが、たまにはこういうのも悪くないな……身分も国のことも関係なく、少年のように楽しめた」
「アルバ、素敵な提案をありがとう」
私たちは、青と白のタイルがきらめく通りで、人目も忘れて笑い合い、恋人らしく腕を絡めて歩き続けた。
「……」
こちらをじっとりと見つめる姿に気付かないまま……
デート回好きなんです。
※アルバはオリガを守るために何人か私服姿の兵を付き添わせてました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




