過去のアルバ
アルバ視点です。
朝、太陽が宮殿の高い窓から差し込む。彩色ガラスを通した光が、床に七色の模様を描き出す。壁には繊細なアラベスク模様が施され、絨毯の上を歩くたび、柔らかい感触と淡い香料の香りが漂う。
「おはよう、アルバ!」
オリガの声が、まだ眠気を残す部屋に響き渡る。涼しい風がカーテンを揺らし、淡い光とともに室内に流れ込む。
「おはよう、オリガ」
柔らかい絨毯の上で、オリガが眠そうに伸びをする。王宮の金箔で縁取られた木製家具や、香炉から立ち上る甘い香りに包まれ、昨夜の甘い時間の余韻がそっと心を温める。
「今日の朝食、何にしようか?」
「私、オムレツが食べたいです!」
「そうか、料理長に頼んでみよう」
二人で朝日の差す小さなテーブルに向かう。周囲の装飾タイルが光を反射して、まるで宝石のように輝く。窓の外では庭園の噴水が静かに水音を響かせ、鳩が石畳を歩く。
(オリガが幸せそうに笑っている)
「ねぇねぇアルバ!」
「ん?」
「私、アルバが大好き!!」
そう言って、躊躇も恐れもなく俺の胸に飛び込むオリガ。
俺はオリガの髪を撫でる。
「ふふ、あったかい……」
そう言って俺の胸板に寄り添い、猫のように甘える。思わずこちらも微笑んでしまう。
あの森の中に逃げていた頃には絶対に味わえなかった幸せを、オリガのおかげで噛み締めている。
「アルバ、アルバのおかげで私世界一幸せよ……!」
「ああ、俺もだ」
「ねぇアルバ、私はあなたの居場所になれてる?」
「ん?」
「私はあの森のように、アルバが安らげる唯一の居場所になれているかしら?」
アルバが逃げていた、あの森の代わりに……
「オリガ、お前……」
当たり前じゃないか。
俺はもう一度オリガを抱きしめ、耳元で囁く。
「……当たり前だろ」
「嬉しいです」
俺の腕の中でうっすら涙を浮かべて無邪気に笑うオリガの姿に、俺の心は穏やかに満たされる。
ふと顔をあげた。
その先に見えたのはーー
子供の頃の俺が、あの森に逃げるしかなかった俺が笑顔で手を振っている。
【さよなら】
と、聞こえた気がした。
(そうか……お前は、過去の俺)
俺はふっと笑う。
森に逃げていたあの頃の俺はもういない。
今はもう逃げる必要も無くなったのだから……
(オリガ……)
あの頃には決して得られなかった、幸せと共に。
アルバの過去の自分との決別回でした。
部屋の装飾や香料の描写が書きたかったので書けてよかったです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。




