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風詠の祭壇と空飛ぶ仲間たち


1.長老の導きと、最初の目的地「風詠の祭壇」

天空都市エアリア・テラスの長老エルデから、マザー・クリスタルを救うための三つの共鳴の祭壇の起動という重大な使命を託されたアントたち。新たな仲間となった天空人の戦士エリアの案内のもと、彼らは最初の試練の地、「風詠の祭壇」へと向かう準備を始めた。

「風詠の祭壇は、アトモス・ヘイブンの東端に位置する、常に乱気流が吹き荒れる浮遊岩礁群の最高峰にあります」エリアは、水晶板に映し出された立体地図を指し示しながら説明する。「そこは古代の風の精霊が守護する聖域であり、祭壇に至る道は『風の回廊』と呼ばれる、予測不能な気流が渦巻く危険な空域となっています」

エルデ長老からは、風詠の祭壇を起動させるには、祭壇に安置された三つの「風の紋章石」を、風の力が最も強まる瞬間に正しい順序で共鳴させる必要があること、そしてそのためにはまず、祭壇の守護者である風の精霊の試練を乗り越えなければならないことが伝えられた。

「風の精霊さんかー!ふわふわしてて、綿あめみたいだといいなー!」アントはいつものように楽観的だが、その手にはラーネが風の抵抗を少しでも減らせるようにと特殊な糸で編んでくれた、体にぴったりフィットするインナースーツを嬉しそうに着込んでいる。

ビバムは、エリアから提供された天空人の小型風速計と、ホークの風を読む感覚を組み合わせ、風の回廊を安全に突破するための航路予測に余念がない。ラーネは、万が一はぐれたり、強風で飛ばされたりした場合に備え、全員の腰に特殊な伸縮性の高い糸を繋ぎ、互いを確保する安全策を考案した。ディグビーは、岩場での活動に備え、手甲の爪を鋭く研ぎ澄まし、オルカは深呼吸を繰り返して高地の薄い空気に体を慣らそうとしていた。

2.乱気流のダンス! 風の回廊の試練と空飛ぶ仲間たちの連携

エリアの小型飛行機械(鳥の翼のような優美なデザインで、クリスタルの力で浮遊する一人乗りの乗り物だ)を先頭に、一行はついに「風の回廊」へと足を踏み入れた。そこは、エリアの説明通り、目に見えない強力な上昇気流、下降気流、そして横殴りの突風が絶え間なく吹き荒れる、まさに天空の迷宮だった。足場となるのは、大小様々な浮遊する岩々だけで、一歩間違えれば奈落の雲海へと真っ逆さまだ。

「みんな、しっかり掴まって!次の上昇気流に乗るわよ!」

エリアが叫び、彼女の飛行機械は巧みに気流を捉えて上昇していく。アントたちは、ラーネが繋いだ命綱を頼りに、まるで巨大な凧の群れのように、エリアの後に続く。

「うわあああ!お空飛んでるみたいだー!」アントは強風に煽られながらも大はしゃぎだ。

ホークは、その鋭い目で風の僅かな流れを読み取り、「次は右からの突風だ!全員、左の岩陰に身を寄せろ!」と的確な指示を出す。彼の指示がなければ、一行は何度も危険な突風に巻き込まれていただろう。

オルカはその怪力で、風に飛ばされそうになる仲間(主に体重の軽いアントやラーネ)を引き上げ、ディグビーは不安定な浮遊岩の足場を【固まる土】で補強し、時には新たな足場を即席で作り出す。

しかし、風の回廊の試練はそれだけではなかった。乱気流の中から、鋭い爪と嘴を持つ凶暴な風の精霊の使い魔「ストーム・ハーピー」の群れや、体中が刃のような羽毛で覆われた巨大な怪鳥「ゲイル・コンドル」が、突風に乗って襲いかかってきたのだ。

「チッ、空のゴロツキどもめ!」ジン爺さんから操縦の手ほどきを受けていたホークは、スカイホエール号の時のように弓を構え、空中を舞いながら正確無比な矢を放ち、敵を次々と撃ち落としていく。エリアも、飛行機械に搭載された小型のクリスタル銃で応戦し、その美しい飛行技術で敵の攻撃を華麗にかわす。

ラーネは、空中に糸の網を張り巡らせ、敵の動きを封じ込めたり、同士討ちを誘ったりする。そしてアントは、オルカに「オルカ・ロケット発射!」と叫び、オルカが力任せに投げ飛ばす勢いを利用して敵の懐に飛び込み、【真・女王の勅命】のオーラを纏った拳で怪鳥を叩き落とすという荒業を見せた。

ビバムは、戦闘の合間に風の回廊の気流パターンを分析し、より安全なルートを予測。ディグビーは、敵の攻撃で崩れそうになる足場を必死に修復し続けた。

3.風詠の祭壇、そして目覚める天空の守護者

数時間に及ぶ、息つく暇もない空中での試練と戦闘の末、一行はついに風の回廊を突破し、目的の「風詠の祭壇」がそびえ立つ、ひときわ高く、そして神々しい気を放つ浮遊岩礁の頂上にたどり着いた。

そこは、下界の騒音が一切届かない、絶対的な静寂と、肌を切り裂くような聖なる強風が常に吹き荒れる、まさに天空の聖域だった。祭壇は、悠久の風によって磨き上げられた滑らかな乳白色の巨石で円形に組まれており、その中央には、天を衝くかのように巨大な透明な水晶の柱が一本だけ、静かに、しかし圧倒的な存在感を放って立っていた。水晶の柱は、周囲の風のエネルギーを吸収し、脈打つように淡い光を明滅させている。

「ここが…風詠の祭壇…」エリアが息を呑む。「この祭壇を起動させるには、あの水晶の柱に、三つの『風の紋章石』を正しい順序で触れさせ、共鳴させる必要があります。しかし、その前に…この祭壇の守護者の試練を乗り越えなければなりません」

一行が緊張した面持ちで祭壇の中央へと進み出ると、それまで穏やかに明滅していた水晶の柱が、突如として眩いばかりの青白い光を放ち始めた。周囲の風が急速に勢いを増し、渦を巻き、その渦の中心から、巨大な鳥の姿をした、半透明でエメラルドグリーンに輝く美しい風の精霊――「シルフィード・ロード」が、その壮麗な翼を広げてゆっくりと姿を現した。その翼は虹色の光を帯び、その瞳はどこまでも広がる天空の青を映し込んでいるかのようだ。

『……久方ぶりだな、定命の者たちよ。そして、我が風の民の血を引く天空の娘よ』

シルフィード・ロードの声は、風の音そのものが意志を持ったかのように、直接アントたちの心に優しく、しかし厳かに響いてきた。

『この聖なる風の祭壇に、何の用があって参った?』

エリアが一歩前に進み出て、恭しく頭を下げた。「偉大なる風の守護者、シルフィード・ロード様。私たちは、アトモス・ヘイブンのマザー・クリスタルを救うため、この祭壇の共鳴の力を借りに参りました。どうか、私たちにその試練を受ける機会をお与えください」

シルフィード・ロードは、その大きな瞳でアントたち一人ひとりを見渡し、そして静かに、しかし力強く告げた。

『良かろう。力を欲するのであれば、それに見合うだけの資格と、風を敬う心を示してみせよ。我が試練を乗り越え、風の真髄に触れることができたならば、道は自ずと開かれよう』

その言葉が終わると同時だった。シルフィード・ロードの周囲に、それまでとは比較にならないほど猛烈な竜巻が発生し、鋭い風の刃を伴ってアントたちを飲み込もうと襲いかかってきた。

天空の試練の第一関門、風の守護者シルフィード・ロードとの戦いが、今まさに始まろうとしていた。


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