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雲海の上のスイートホーム!


1.スカイホエール号の日常と、それぞれの空の楽しみ方

ジン爺さんの長年の夢と、アントたちの奇跡的な協力によって大空へと舞い上がったスカイホエール号。その広大な甲板は、今やアントたちにとって新たな日常の舞台となっていた。眼下に広がるのは、どこまでも続く雄大な雲の海。時折、雲の切れ間から見える地上の景色は、まるで精巧なミニチュアのようだ。太陽はより近く、星々はより鮮やかに輝き、空気はどこまでも澄み渡っている。

「おーい!ハチミツどこだー!雲のハチミツ、ないかなー!」

アントは船首がお気に入りの場所だ。風を全身に受けながら大声で叫び、時折、ホークと一緒に流れ行く雲の形を「あれは巨大なプリンだ!」「いや、綿あめだ!」などと言い合って遊んでいる。ジン爺さんからは「船首で見張りをするなら、もっと遠くの天候や障害物に気を配らんか!」と叱られることもしばしばだが、本人はどこ吹く風だ。

ラーネは、ビバムが即席で作り上げた気象観測機器や六分儀を巧みに操り、スカイホエール号の航行データを几帳面に記録していた。また、高空にしか生息しないという微小な浮遊生物や、風に乗って運ばれてくる植物の胞子などを特殊なネットで採集し、目を輝かせながら研究に没頭している。「この高度の気圧と紫外線が、独自の進化を促したのかもしれませんわ…!」

ホークは、ジン爺さんから操舵の初歩を熱心に学んでいた。持ち前の優れた視力と空間認識能力は、船の操縦にも大いに役立つようで、ジン爺さんも「お前は筋がいい。だが、調子に乗って勝手に舵を切るなよ!」と、まんざらでもない様子。もちろん、本来の見張り役としても活躍し、遠くの気流の変化や、近づいてくる魔物の気配を誰よりも早く察知していた。

オルカは、その巨体と怪力を活かし、帆の調整や重い荷物の固定といった甲板作業を一手に引き受けていた。力仕事のない時は、甲板にビバムが作ってくれた大きな防水シート製の「即席プール」に浸かり、「ボフッ…空の上の水浴びも、なかなか乙なものだな…」とご満悦だ(ただし、時折水しぶきがジン爺さんの大切な設計図にかかり、雷を落とされている)。

ディグビーは、スカイホエール号の心臓部であるスカイクリスタルが輝く動力炉に入り浸り、その複雑な構造やエネルギーの流れに興味津々。ジン爺さんに「なあなあ爺さん、このキラキラ石、どうやって船を浮かせてるんだ?もっと速く飛ぶにはどうすりゃいいんだ?」と質問攻めにし、時には勝手に部品をいじろうとしてビバムに「こら、ディグビー!そこは触るなと言っただろう!」と叱られていた。

そしてビバムは、ジン爺さんと船の構造や動力理論について専門的な議論を交わし、その知識と技術に深い感銘を受けながらも、この素晴らしい飛行技術を地上の自分たちの村の発展にどう応用できるか、常に思考を巡らせていた。

ジン爺さんは、長年の夢だった大空の旅を心から満喫しているようだった。時に厳しく、時に優しく、若き乗組員たちに船乗りとしての心得や、かつて自身が世界中を旅した時の冒険譚を語って聞かせ、彼らの知的好奇心を刺激していた。

2.大空の脅威と、星図が示す最初の針路

しかし、空の旅は穏やかなものばかりではなかった。ある時は、山をも飲み込むかのような巨大な積乱雲「雷雲の巨人」に遭遇し、その猛烈な雷撃と暴風雨に巻き込まれそうになり、ジン爺さんの冷静な判断とホークの風読み、そして全員の必死の操船作業で辛くも回避した。またある時は、夜空を美しく彩るオーロラに見とれていると、その光に引き寄せられたのか、巨大な翼を持つ幻獣の群れに取り囲まれ、オルカとアントの力技とラーネの糸による陽動でなんとか切り抜けたこともあった。

そんな出来事の一つ一つが、アントたちの絆をさらに深め、スカイホエール号の乗組員としての一体感を高めていった。

最初の目的地について、甲板で作戦会議が開かれた。ジン爺さんは「ワシの夢は、まだ誰も見たことのない新大陸の発見じゃ。だが、具体的な航路図があるわけではない。風の向くまま、気の向くまま…というのも悪くないがのう」と、どこか楽しそうだ。

アントは「一番甘くて美味しそうな匂いがする方角がいいな!」と相変わらずの主張。

すると、ラーネが懐から一枚の羊皮紙を取り出した。それは、以前、浮遊遺跡群で見つけた星図の断片と、目覚めの森で大樹様から聞いた「世界の理の外の知識を持つ者」に関する話を照らし合わせて、彼女なりに解析したものだった。

「ジン爺様、皆様。この星図が示す先に、もしかしたら古代の天空人たちが移り住んだと言われる、伝説の浮遊島『アトモス・ヘイブン』が存在するかもしれませんわ。そこには、スカイクリスタル以外の未知の浮遊技術や、高度な文明が残されている可能性があります。そして何より…大樹様が言っていた『世界の理の外の知識』を持つ賢者がいるかもしれません」

ラーネの言葉に、全員の目が輝いた。未知の浮遊島、古代文明、そして賢者。それは、冒険者たちの心をくすぐるに十分すぎる響きを持っていた。

「よし!決まりじゃ!最初の目的地は、その『アトモス・ヘイブン』とやらにするぞ!」ジン爺さんが力強く宣言し、スカイホエール号は、ラーネが示す星図の座標を目指して、新たな針路を取った。

3.近づく伝説の島、そして不穏なる空の影

ラーネの星図とホークの偵察、そしてジン爺さんの長年の勘を頼りに、スカイホエール号は未知の空域へと進んでいった。何日にも及ぶ航海の末、ホークの鋭い目が、遥か前方の雲の切れ間に、ぼんやりとではあるが巨大な島の影を捉えた。

「見えたぞ!あれが…あれが伝説の浮遊島、『アトモス・ヘイブン』に違いない!」

島は、下界の常識では考えられないほどの高空に、まるで緑豊かな大地がそのまま空に浮かんでいるかのように存在していた。中央には、天を衝くかのような巨大な水晶の塔がそびえ立ち、そこから幾筋もの虹色の光の滝が流れ落ち、周囲の雲海へと溶け込んでいる。その光景は、まさに幻想的という言葉がふさわしかった。

しかし、スカイホエール号が島に近づくにつれて、船に搭載された羅針盤やエネルギー探知機が奇妙な動きをし始め、動力炉のスカイクリスタルも不安定な光を明滅させ始めた。

「何じゃこれは…!?強力な磁場か、あるいは未知のエネルギーフィールドか…!」ジン爺さんが顔をしかめる。

ビバムも、「島の周囲に、何らかの古代の防衛システムが作動しているのかもしれません!皆、警戒を!」と警告を発した。

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、島の影から、数体の黒い流線型の影が、まるで獲物を狙う猛禽のように高速でスカイホエール号に向かって飛来してくるのが見えた。それは、鳥でも魔物でもない、金属的な翼と鋭い爪を持つ、見たこともないような飛行機械のようだった。そして、その機械には、何者かが搭乗している気配があった。

「敵襲だ!総員、戦闘準備ィッ!」

ジン爺さんの鋭く、しかしどこか嬉しそうな声が、スカイホエール号の甲板に響き渡った。

アントたちの新たな冒険は、伝説の浮遊島「アトモス・ヘイブン」を目前にして、早くも波乱の幕開けを迎えようとしていた。果たして、彼らを待ち受けるものとは…?


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