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天空の迷宮、浮遊遺跡群とクリスタルの守護者


1.古の空の迷宮、浮遊遺跡群への挑戦とジンの置き土産

風詠鳥の虹色の羽毛を手に、ジン爺さんの工房へと帰還したアントたち。しばしの休息と祝宴の後、彼らの次なる目標は、スカイホエール号の心臓部となる「スカイクリスタル」の入手へと定められた。

「浮遊遺跡群…それは、はるか昔、この山脈の上空に存在したという天空の民が遺した、巨大な石造りの島々のことじゃ」

ジン爺さんは、工房の奥から一枚の古びた石板を取り出し、アントたちの前に広げた。そこには、複雑な迷路のような遺跡群の概略図と、いくつかの象形文字のようなものが刻まれていた。

「これはワシが若い頃、九死に一生を得て持ち帰った石板の一部じゃ。半分も解読できておらんが、いくつか危険なトラップの警告や、守護者の存在が記されとる。そして…遺跡の中心部には、強大な『重力場』が発生し、近づくものを押し潰すという不吉な記述もある。心してかかるんじゃな」

ラーネはその古代文字に強い興味を示し、ビバムと共に夜を徹して解読を試みた。完全な解読には至らなかったものの、「太陽の石板を月の祭壇に捧げよ」「三つの風の笛が鳴る時、道は開かれん」といった、謎解きの鍵となりそうな断片的な情報をいくつか得ることができた。

ジン爺さんは、かつて遺跡で手に入れたという、奇妙な音叉のようなものや、光を当てると古代文字が浮かび上がるレンズといった、探索の助けになりそうな道具もいくつかアントたちに託した。「ワシにはもう使いこなせんが、お前たちならあるいは…」その言葉には、かすかな期待が込められていた。

装備も新たに整えられた。ビバムは高所での活動を想定し、伸縮自在の命綱や滑車、そして遺跡から発せられる微弱なエネルギーを感知する簡易な探知装置を製作。ラーネは解毒薬に加え、古代文字の写しを取るための筆記用具や、罠解除に役立ちそうな細い金属線を準備。ディグビーは、硬い岩盤をも砕くという新型の削岩ハンマー(手動だが、彼の怪力と組み合わせれば強力な武器となる)と、壁や天井に吸着して移動できるという特殊な吸盤付き手袋を開発していた。

そしてアントは、「お空の遺跡には、きっと雲でできた綿あめみたいなハチミツがあるんだ!」と、リュックサックに最大限の空きスペースを確保し、出発の日を今か今かと待ちわびていた。

2.天空への回廊、最初の試練と古代の罠の洗礼

数日後、ジン爺さんに見送られ、アントたちは再び険しい山脈へと足を踏み出した。ジン爺さんに教えられたルート――それは、特定の季節の特定の時間にしか現れないという、強力な上昇気流が発生する「天空への回廊」と呼ばれる場所を通過する必要があった。

ビバムの計算とホークの風読みの能力を頼りに、一行は絶妙なタイミングでその気流に乗り、まるで巨大な凧のように空へと舞い上がった。眼下には雄大な山脈と広がる雲海。そして、その雲の上に点在する、巨大な石造りの島々――浮遊遺跡群の威容が、ついに彼らの眼前に姿を現した。それは、古代の神秘と、いつ落下するとも知れない絶対的な危険が同居する、息をのむほど壮大な光景だった。

最初に降り立った比較的大きな浮遊島は、苔むした神殿のような建造物と、崩れかけた石橋で他の小さな島々と繋がっていた。しかし、一行が足を踏み入れた途端、神殿の入り口を守っていたかのように、数体の古代のゴーレム(石像兵)が地響きと共に動き出し、その巨大な石の拳を振りかざして襲いかかってきた。

「やっぱり、そう簡単には通してくれないみたいだね!」アントが叫び、戦闘態勢に入る。

一体一体のゴーレムはそれほど強力ではないものの、足場が不安定で動きが制限される上、的確な連携で攻撃してくるため、油断はできない。オルカが持ち前のパワーでゴーレムの一体を投げ飛ばし、ディグビーが削岩ハンマーで別のゴーレムの装甲を砕き、ホークが残りのゴーレムの弱点である頭部のコアを正確に射抜いていく。アントとラーネ、ビバムは、後方からの援護と、新たな敵の出現に備えた。

ゴーレムを撃破した後も、遺跡の内部は古代の罠で満ちていた。ラーネがジン爺さんの石板の記述と照らし合わせながら、隠された圧力感知式の床や、毒矢が飛び出す壁の仕掛けを次々と見破り、慎重に解除していく。ディグビーが「この壁、なんか怪しいぜ!」と削岩ハンマーで軽く叩くと、隠し通路が姿を現すこともあった。アントは時折、動物的な勘で「こっち!こっちから、なんだかキラキラするいい匂いがする!(実際はクリスタルの放つ純粋なエネルギーの波動だった)」と、迷路のような遺跡の中で正しい道を選び出すという奇跡的な活躍(?)を見せた。

3.迷宮の奥へ、スカイクリスタルの聖なる輝きと新たなる守護者

迷路のような回廊、崩れかけた空中庭園、そして謎の仕掛けが施された祭壇の間。いくつもの困難を乗り越え、一行は遺跡群の中心部へと近づいていった。ホークが先行し、上空からの偵察で罠の配置や敵の気配を伝え、オルカが重い石の扉を怪力でこじ開け、ビバムがジン爺さんからもらったレンズで壁に隠された古代文字のヒントを読み解いていく。

探索を進めるうちに、遺跡の奥深くから、微かではあるが心地よい浮遊感と、清浄で力強いエネルギーの波動、そして美しい青白い光が漏れ出してくるのを感じるようになった。

「間違いない…!これが、スカイクリスタルのエネルギーだ!すぐ近くだ!」ビバムが興奮した声を上げる。

ついに、一行は遺跡群の中心部と思われる、巨大なドーム状の空間へとたどり着いた。その空間は、まるで星空を閉じ込めたかのように無数の小さな光の粒子が舞い、中央には、人間ほどの大きさの、完璧な多面体にカットされた青白い水晶の塊が、ゆっくりと回転しながら神々しい光を放ち、周囲に心地よい浮遊エネルギーを撒き散らしていた。これが、スカイクリスタルに違いない。その美しさと、そこから放たれる純粋な力に、誰もが息を呑んだ。

しかし、その聖なるクリスタルを守護するように、一体の巨大な存在が静かに佇んでいた。それは、これまでに遭遇したゴーレムのような石や金属の体ではなく、まるで純粋な光エネルギーそのものが意志を持って具現化したかのような、半透明で神々しい人型の姿をしていた。その手には、クリスタルと同じ青白い光を放つ長大な剣が握られている。その姿は、神話に出てくる天使か、あるいは古代の精霊のようでもあった。

その守護者が、ゆっくりと(目があるのかどうかさえ定かではないが)アントたちの方を向き、静かに、しかし抗いがたいほどの威圧感を放ちながら、直接心に語りかけてきた。

『……聖ナル結晶ヲ穢サントスル者ヨ……コノ先ヘ進ムコトハ、我ガ許サヌ……立チ去レ……サモナクバ、天空ノ裁キヲ受ケルガイイ……』

スカイクリスタルを巡る、遺跡の最強にして最後の守護者との戦いが、今まさに始まろうとしていた。その神々しい姿の奥に秘められた力は、果たしてどれほどのものなのか。アントたちの冒険は、最大の山場を迎えようとしていた。


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