騒がしくなる街
僕は宿屋で食事を終え、借りた部屋で窓を開けて、景色を眺めている。
そして、次第に騒がしくなって来た街だった。
何事かと頭を窓から出し、確認した。
「まだか〜っ、素性の知れぬ少女はーッッ!?」
「まだどこのパーティも発見には至っていないようです」
低いがなり声が聞こえて来た。
ハッロンの街の冒険者パーティの何組かが何処ぞの少女を捜索しているらしい。
少女……素性の知らぬ……か。
「ミーフィ路地の方はーッッ!?盗賊ぐるみのじゃねーだろうなーッッ!?」
「やはりこちらにも見当たらないです」
違う冒険者パーティの声が聞こえた。
関わり合いたくないなぁ、そう思うルウェーラだった。
金一封が貰えるかも怪しい。
僕は寝台に歩み寄って、片脚を載せてみて、また無駄な思考を巡らせた。
メユナコ森で助けた少女かも知れない。だが、他にも似たような少女がたまたま今日、ハッロンという街に入ったのかも知れない。
あぁー、どうしよう。
宿屋から用意されたパジャマを脱いで、外出するようの服に着替え、短剣を腰に帯刀し、部屋から出ていく。
一階に降りて、宿屋を出ていき、片っ端から路地裏を捜索していき、1時間20分程掛かって、街の冒険者パーティ達が捜索しているであろう少女を見つけた。
「あぁぁ……あの、ときの……森で——」
「メユナコ森で助けた……君、だったんだ?」
「えぇーっと……はい。治癒院でお金を払ってこなくて、それでこんな……騒ぎが起きて。私……お金が、無くて……それもそうなんですけど、たっ、助けて……ください」
掠れてか細い声で震えながら、訴えかけてくる少女。
「助けたいとは思うけど……僕もお金は持ってないんだ、明日依頼を達成する予定でさ。君は、それなりに戦える?その返事でどうするか決めたいんだ」
「つっ、強くはないですけど……たっ、戦え、ます。だからぁっ、助けてください!!」
「そうか……うん、わかった。助けるよ、さぁ行こう」
「あぁ、はぁっ……痛ぁああぁぁいいぃぃいいぃぃっっ、はぁはぁ。うぅぅっっ……はぁはぁ」
歩き出そうとしたフードを深く被った彼女がつんざくような悲鳴をあげ、その場に座り込み、右手の手首を押さえた。
唾を口から垂らし、必死に痛みを堪えている彼女だった。
「どうしたの?手首に何が——その痕は」
僕は彼女の左手を右手の手首から引き剥がし、見てみると、彼女の右手の手首の内側に八の字の蛇——ウロボロスの焼印があった。
少女は奴隷だった。
「痛いよね、うん……【解呪】!よし、これで自由だ。歩けるね?」
僕は片手の掌を彼女の右手の手首にあるウロボロスの焼印にかざし、スキル名を発したら黄色い光りを放った魔法陣が浮かび上がり、痛々しい奴隷の痕が消えた。
「うぅぅぅ……えぇっ!?お兄さん……あぁ、はい」
僕は彼女の片手を握り、立ち上がらせる。
彼女は僕の指示に従い、物音をたてないように走った。
僕は宿屋の店主や従業員に見つからないように部屋へと戻り、彼女を匿った。