記憶の共有
アビス「おい! 幻、大丈夫か!!」
あぁ、私は死にそびれたんだな。
姉さん達に、まだ会いに行く時ではないんだね。
今となってはもう昔の話だ。その日は雨が降っていた。遊びから帰ってくると、姉さん達が血まみれになって死んでいた。どうやら私が居ない時に誰かが家に侵入して姉さん達を手にかけたらしい。
私達姉妹はずっと一緒だった。お互いが何を考えてるかなんてお見通しだった、記憶ごと共有しているような感じでね。
私は姉さん達と一緒に居たいと思ったよ、でも姉さん達が言った気がするんだ。まだその時じゃない、自分達はずっと私を見ているから、って。
アルカディア「何か思い出したことはある?」
幻「………いや、やっぱり何も思い出せない。思い出そうとしても砂嵐みたいにザーザーいっててさ」
アルカディア「ショックのあまり身体が思い出させないようにしてるのか……大丈夫だよ幻さん、犯人は僕がとっ捕まえるからね」
そして、あの事件から三年経った。私は友達のアルカディアのところで居候している。
アルカディア「幻さん、あの事件のこと何か思い出したことはある?」
幻「いいや、なんにも」
アルカディア「そっか、三年もこんなこと聞き続けてごめん」
幻「大丈夫だよ」
アルカディアはよしよしと私の頭を撫でると、あの事件の犯人探しのために情報探しに出かけた。
幻「…………?」
ふとそこで、私はあるものを見つけた。壊れた携帯だった。壊れているのなら直せばいいのに。
幻「……そうだ、修理屋さんに持っていって直してもらおう」
そうして私は携帯を手に取った。
その瞬間、私の記憶にある言葉が浮かび上がる。
「ゆっくり帰ってくるんだよ」