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M・B・Cと今後の作戦

◆◇◇◇



 スゾッキィー隊長にアッカーメ隊員。


 全 部 聞 こ え て い る ん で す が ね ぇ 。


 既に呪いかけるの終わっているんですけどぉ。



 魔王様、震えない! 葛饅頭みたいでうまそうだけど!

 ケイン、呆れないで! 気持ちはわかるけど!

 タイバーン殿、落ち着いて! キレるのはもう少し待って!

 オフィーリア、いつも通り魔王様LOVEでヨシ! ヨダレは拭いておけ!

 サリアよ、顔真っ赤にして恥じらう姿がかわいいぞ! もっと見せて!


 

 ……ふぅ。心落ち着かせて、魔王様達や近衛騎士たちに黙っていてくれと合図を出す。


 その後、サリアに合図をし、スゾッキィー隊長とアッカーメ隊員をじ~っと見る。


 他の方々も楽しそうに私たちの真似をする。

 

 

「多分そうだろう。俺の種族もそっち方面は疎くてな、説明できず済まない」


「あ、いえ、いろいろ教えてくださってありがとうっス」



 ん、そろそろかな、謁見の間の皆がお前らを見ているぞ……。


 お?


 気づいたか?


 アッカーメ隊員、いつもは肌の色赤いのに今日はなぜか真っ青だね。


 スゾッキィー隊長、天を仰いでも時すでに遅しってやつさぁ。


 君ならわかるだろう?


 

 無言で注視した後、サリアに合図を送り魔王様へ報告を行う。


「魔王様、呪いの再設定完了いたしました」


「ああ、次の瘴気発生まで魔力を蓄積しておいてくれ。では、解散」



 魔王様の解散宣言が出たところで、皆の緊張が緩む。


 第一部隊隊長のフリック殿と第二部隊隊長で狼人族のガルム殿が大急ぎで退出していった。


 この後何が起こるか理解してしまったのだろう。


 ガルム殿の尻尾が股の間に挟まってるし。

 


 サリアにアイコンタクトを送り、別指示を出したうえで、わたしはスゾッキィー隊長とアッカーメ隊員のところに向かう。


 周囲の面々に新たな緊張感が生み出されたところで、機先を制してこちらから攻める!



「いやぁ、スゾッキィー隊長にアッカーメ隊員、誠に申し訳なかったねぇ」


「「へ?」」



 にこやかに笑顔で謝罪すると二人ともとても妙な顔をしていた。

 

 そんなに驚くほどではないだろ?

 

 自分が何をしていたのか知らないとは言わせねえぞ?


 それと、なぜお前らがしゃべっている間に止めなかったのかわからないのか?

 

 これから行う茶番劇のためだからな?



「いやいや、お二人にはつまらない時間を取らせて申し訳ないと思っているのですよ。なんせ、仕事中でも魔王国の歴史について学ぼうとされているのだから、お二人の向学心には感服しますよ」


「「こ、向学心?」」


「おや、謁見の間でスゾッキィー隊長が魔王国が成立する直前の瘴気に対応した歴史をアッカーメ隊員に丁寧に説明されていたではありませんか?」



「あ!」って感じの反応を見せてるが、今更だからな?

 

「ただ、近衛騎士として緊張感を持って働かれ、騎士としての書類仕事もあり、それに加えて魔王国の歴史に対する考察まで……ちゃんと心と体を休められているか不安になりますな」



 隊長。貴様はこの後「いや、問題ありませんよ」といい、誤魔化そうとするだろう。

 

 だが、逃しはせんよ。



「いや、問だ――」


「ああ、タイバーン殿、この向学心豊かな者たちに少々心と体のリフレッシュをさせてあげたいのですが、いい手はありませんでしょうか?」


「――い、ってちょ、ちょっと待て!」



 サリアが連れて来てくれたこの場での最強(というか、最狂?)の手札、タイバーン近衛騎士団長を場に出してやろう。


 当人も素敵な笑顔(個人の主観です)を見せて協力してくれるだろうしね。

 


「そうですね、我々近衛の者たちが親しんでいる物がありまして、ちょうどご希望のリフレッシュに最適かと」


「ちょ、ちょ――」


「ほう、それはもしかして」


「――待って、マジで待って! それだけは止めて!!」



 スゾッキィー隊長うるさい。

 

 君の処け……拷も……リフレッシュ方法を聞くだけなんだから。

 


「M・B・Cと呼ばれる訓れ……リフレッシュシステムです。近衛騎士団に在籍している者は最低一度は経験しておりますし、難しい動きもなく終わった後は笑顔が絶えない。副宰相殿が求めているものに近いのではないかと思います」



 このタイバーン殿の発言を聞いてスゾッキィー隊長とアッカーメ隊員の顔色が真っ青になった。


 アッカーメ隊員、君の肌は基本真っ赤なのになぜ大量に青色が入ってきているんだい(ニチャァ)?



「そ、それだけは勘べ――」


「ああ、一度見たことがございます。確かに実施中から笑顔が絶えず、朗らかで楽し気な雰囲気を感じました」



 そりゃあ洗脳じみた訓れ……リフレッシュシステムにかかれば死んだ目と硬直したような笑顔っぽい表情は簡単に身に着く……着いてしまうだろうよ。



「それ、死にか――」


「おお、ご存知でしたか、その通りです。これならご納得いただけるかと」



「それ、洗の――」


「ええ、これ以上の物は無いでしょう。よろしければM・B・Cを団長自らこの二人に施してあげていただけませんでしょうか」



「マルコ、マジで止めて、冗談じゃ済ま――」


「お任せください。私の手で彼らの心も体も真っ白にして見せましょう」


 ……下手な漂白剤が逃げ出す程度に真っ白になってきなさい。


 

 タイバーン殿はものすごくイイ笑顔でスゾッキィー隊長とアッカーメ隊員を後ろから鷲掴みにした。



「らめぇ、(目玉が)でちゃうぅ! (目玉が)でちゃうのぉ!」


「ぎゅっとつかんじゃだめぇ! (触手が)もげちゃう! (触手が)ちぎれちゃうぅ!」



 我々は二人が喜びの涙(個人の主観です)を流しつつ連れて行かれるのを見守った。



 その日一日タイバーン殿によるM・B・Cの歌声が王宮内に響き渡った。


 ただし、とぎれとぎれに調子っぱずれな歌声も聞こえたが。




 その日の夜、わたしはサリアと寝室で話をした。


「サリア、次回の呪い解除についてなんだが……」


「どうしたの? あなた」



「子作りについて、事前に魔術を使ってみようかと思うんだ。想定しているのは自己強化系」


「……もしかして、その、子作りの成功率の話?」


「ああ。呪いの都合上回数を増やせないとはいえ、数千年以上色々試してみたが、それでも一度もHITしていない」


 正直、夫として申し訳なく思っている。

 

 いや、楽しんでいる部分があるのは事実なんだけど、子が欲しいのも事実。


 早く子を抱かせてやりたいのだが……。

 


「そこは、私が原因かもしれないではないですか!」


「数十年前にケイン殿に頼んでわたしたちの身体の調査を行い、二人とも問題なかっただろう?」


「なら、あなたが原因と言うわけではないのでは?」


 そこじゃないんだ、サリア。



「原因と言うより、わたしたちの間の力関係が問題かもしれないと考えたんだ」


「ち、力関係?」


「勘違いしないでほしいが、互いの関係が悪いと言う意味ではない。わたしの子種とサリアの子宮の間の力関係に差がありすぎるのではないかと考えたんだ」


「?」



 あぁ、説明が足りないのはわかるのだが、説明し辛いんだよなぁ。

 

 わたしもこの推測を整理する際に頭抱えたからなぁ。

 


「まず、わたしの子種は普通の強さを持っていると仮定する。一般兵くらいかな」


「(うんうん)」


「で、サリアの子宮、そして卵子周辺の防御力とでも言おうか、こちらは世界最高レベルの防御力を有しているとしたら? 具体的に言うとタイバーン近衛騎士団長」


 いくら攻撃しても、よくて蚊が刺した程度だろう。



 サリアは唖然としてしまった。



 正直、推測に推測を重ねた話だがね。


「これが当たっていて、かつエルフの皆このパターンに該当する場合、けた外れの幸運が重ならない限り子が出来ないのは当然ではないかと思う」


「……例えば、子供がドラゴンに小石を投げたら、偶然に弱点に当たって即死させるレベルの無茶苦茶な幸運が重なってくれないと難しいってこと?」


 そうそう。


 

「なるほど、それで自己強化なのね」


「ああ、一般兵レベルを近衛兵レベルに上げるだけでもHIT率は上がるのではないかと考えている」


 どうだろう。受け入れてくれるだろうか……。

 

 不安に押しつぶされそうになりながら説明を終えると、サリアがわたしの頭に抱きついてきた。

 

 顔が胸に挟まれる状態なんだが……この柔らかさ、なかなかのお手前で。



「んもう、そんな顔しないの。あなたが子を成すために色々考えてくれたのに、それを無下にする気は無いわよ」


 ……ありがとう。


 

「ちなみにだけど、私に弱体化の魔術をかけるとかは?」


「却下。子宮、そして卵子周辺の防御力が下がるのはわかるが、卵子自身の弱体化はまずい。子種が届いても子が成せないとかありそうだ」


「あ……そっか、そっちが問題になるのね」


 そうなんだよなぁ。


 単純な弱体化で済めば楽だったんだけどねぇ。


 


「とりあえず、次のチャンスに何らかの強化をしてみてその後また検討してみよう」


「わかったわ。でも……」


「ん?」


「私たち位よね、瘴気が発生するのを待ち望むなんて」


「全くだ」 


 サリアの頭をくしゃくしゃと撫で、


「呪いなしに一緒にいたいと言うだけなんだから気にしない、気にしない」


「……そうねっ」


 サリアはほっとしたようで、最後は笑顔だった。


「あ、それと……」


「ん?」


 どうした、サリアよ。


「次回以降もあなたが暴走するくらい興奮する服を用意するから、楽しみに待っててね♡」


「いえすまむ!」


 ぜひとも、ぜひともお願いいたします!!



◇◇◇◆


 この話は生物学的にエルフ、視覚的には訳あって化け物の夫婦がイチャイチャしつつも瘴気を無くすために苦労する話である。


 ……ただし、それは本筋ではない。



 この話はエルフの夫妻が魔王国にもたらされる厄介事に対処し、国を維持するのに苦労する話である。


 ……ただし、それも本筋ではない。



 このお話の本筋はエルフ夫婦が周りが引くレベルで『愛のミックスデュエット』を数日掛けて行い、淫気を大量生産しつつも子を成すために努力する話である。


 なお、『愛のミックスデュエット』部分の詳細は文章にはしないのであしからず。

 

◆◇◇◇


ここまでお読みいただきありがとうございます。

これにて一章『瘴気発生』完となります。

また、本日の連続投稿もこれで終了です。

二章も早めに仕上げますので今しばらくお待ちください。


なお、キーワードに『M・B・C』を追加致しました。

ついでに【M・B・C】について以下にまとめましたのでお暇ならお読みいただければ幸いです。


======

 M:魔王国

 B:ブート

 C:キャンプ

 

 魔王様、宰相ケイン、副宰相夫妻(マルコ&サリア)、専属メイド(オフィーリア)の五名が魔王国建国に至る最初期メンバーであり、生ける伝説扱いされている。

 その五名の後にメンバーに入り、魔王国の武の大黒柱と呼ばれる現近衛騎士団団長タイバーン・ルドルフ・フォーブス。

 最初期メンバーの友人的関係と違って彼は魔王様を崇拝しており、魔王様を害そうという輩には容赦しない。

 ただし脳筋なわけではないので、単純に殺す以外の搦め手にも理解があり、(洗脳じみた)教育による(強制的な)意識改革も結構好き。


 その団長自ら振付、作詞、作曲まで作ってしまった近衛騎士団専用の訓練法。

 その威力は一セットで大半が洗脳され、二セット完了時点で魔王様に対して否定的な発言をするものは皆無となると言われている。

 なお、過去二セットまでしか成し遂げた者がおらず、三セット連続実施した者はいない……いや、いなかった。

 

 実は、各隊長は二セット完了しても自我を保てた者たち。

 というか、自我が保てないなら隊長にはなれない。

 

 一セット完了させるためには以下の条件を満たすことが求められる。

 ・歌詞に誤りがないこと

 ・振り付け通りに動けていること

 ・大声が出ていること(音痴であっても許されるが声が出ていないのはNG)

 ・複数で行う場合、動くタイミングが合っていること

 ・笑顔が最後まで維持できていること

 一瞬でも上記を満たせなければ最初からやり直し。

 

 ちなみに、団長は結構美声。バリトンヴォイスって奴。

======

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