そして親となる
本日二話更新。
こちら一話目(ストーリー最終話)です。
なお、二話目は七章説明回となります。
◆◇◇◇
朝。
日の光が降り注ぎ一日の始まりにふさわしい心地よい気持ちになる……普通なら。
現在わたしの前には怯えたマルコ&ミア、ニヤニヤといやらしい笑い方をしているオフィーリアと胸元から覗いている魔王様。
「ミア、一応確認するが……」
「結婚式から八日目の朝になります。『二泊三日』から『七泊八日』と大幅にレベルアップしましたね」
……やっぱり記録更新か。
確かに人生で一番頑張ったからなぁ……とサリアを見るとまだ意識が戻ってきていないようだ。
……少しヤリすぎたか?
「いやぁマルコ君、君のおかげでちょっと儲けさせてもらったよ」
「あそこまで準備すればかなりハッスルしてくれると思いましたが、期待どおりでしたねぇ」
どうも、結婚式の参加者はわたしたちの子作り時間で賭けを行い、魔王様とオフィーリアが見事に当てたそうだ。
……よく当てられたよな。
わたしでもこれだけ暴走するとは想定しなかったんだが。
「ちなみにマルコ様、『七泊八日』中に淫気から身を守るためのマスクを更新する必要が出てきました。『三泊四日』までならA-2で対応可能だったのですが、それ以降は被害が出始めましたのでA-3に変更しております」
……え?
そこまでひどかった?
そうミアに聞くと、まだ意識が戻っていないサリアをチラッと見て、その後わたしを睨みつけてきた。
ハイ、スイマセン。
ワタシガスベテワルイノデス。
そんな話をしているとサリアが意識を取り戻した。
周囲を見回しミアを見つけると、大急ぎで這って行き情報交換をし始める。
……ちょっと動きがウネウネとキモかったのは家庭の平穏のために黙っておこう。
ナメクジとか蛇みたいなんて言ったらガチ泣きされるのが目に見えているからな。
事態を把握したサリアは呆れつつもホッとしている。
……サリアさん、その対応は何?
生きていることにホッとしてるの?
その後魔王様とオフィーリアは王宮に戻り、わたしたちは食事と身支度を整え執務室に向かう。
なぜか魔王様が『この後が楽しみだよ』と喜びつつおっしゃっていたのが妙に印象に残ったが……。
途中でスゾッキィー隊長が文句を言ってきたが、『三泊四日』で終わらなかったことを文句言われても正直困る。
むしろ、お前の隣でビビりまくっているアッカーメ君の方がまだ理解できるぞ。
執務室に入るとケインとチェリーさんがニヤニヤしつつ出迎えてくれる。
「おぅ、復帰でぎるのがい?」
「えぇ、何とか」
「いやいや、まだサリアが意識取り戻したばがりだんて正直復帰は明日だで思ってだんだよ。あ、それと……」
どうしたんだ?
言いずらい事でもあったか?
そんなことを考えているとケインが小声で話し始める。
「魔王様が大喜びでおめがだが孕んだで言ってしまった」
……え?
「悪気はねで思うし、聞いてたのも内輪レベルの面々だけだから影響はほぼ無ぇがちょっと浮かれすぎな気がする。気付げでおげ」
「……ケイン殿、魔王様の能力に未来予知なんてなかったですよね?」
「未来予知も身体の鑑定の類の能力もねはずだ……」
なんだろう。
浮かれているというより……先ほど言われた『この後が楽しみだよ』と関わるような気がする。
ケインにこのことを話すと、驚きつつも
「そごまで言ってらどなるど、かなり確証があるのがもしれねな」
と答える。
「ちなみに、オフィーリアは止めたりしてました?」
「いや、むしろ魔王様に同調してだ」
……何かありそうだが、自発的に教えてくれないのならあまり口出しするのもなぁ。
「とりあえず放置で」
「えのが?」
「理由考えても答え出そうにないですし、こちらに教える必要があるのなら魔王様が直接説明していただけるでしょ」
ケインは少し考え、了承した。
それから二か月後。
サリアは仕事中に吐き気を催し、医者のアクレスに診察してもらったところ妊娠したことが発覚。
魔王様やオフィーリアは大喜びし、ケインやチェリーさんはわたしたちに混じっての大騒ぎ。
短命種族からは『あの”孕まない”エルフ夫妻から子が生まれる!』と仰天され、長命種族からは『あぁ、やっとか』『そりゃあれだけヤればいつかはなぁ』というコメントを頂いた。
なお、王宮エルフの面々からは祝福と同時に孕む条件を教えろとあの結婚式の日までに確認した情報を提供するようにと言わ……命れ……脅迫された。
女性陣はサリアには優しく話していたようだが、男性陣のわたしへの対応ひどくね?
まぁ、こちらとしては『七泊八日』ができるようになってからだとしか言えないのだが。
そう言うと男どもは『そんな、お前じゃあるまいし無理だ!』とか言い出す。
それも『お前』の部分に『バケモノ』とか『ケダモノ』ってルビつけただろ!
流石にわかるんだからな!
そして……
再度の挙式から一年半。
今日は休日なので、家族でまったりしている。
ミカンの皮をむき、サリアの口元に持っていき、
「あーん」
サリアは照れながら【女神を彷彿とさせるような幸せそうな雰囲気で】パクっと食べ、とても幸せそうな表情を浮かべた。
はっと幸せな世界から戻ってきたサリアはリンゴを一切れつまみ、
「お・か・え・し・♡。はい、あ~ん」
わたしは幸せに浸りながら【天使の歓喜を受けたような喜びに満ちた笑顔で】パクッと指までくわえ舐めてみると、サリアは真っ赤に茹だってしまった。
「おいしかったよ」
サリアへ【王宮が埋まるほどの愛情溢れた笑顔で】礼を言うと、モジモジしながら返事をしてくれた。
その後、サリアはミカンを細かくつぶしたものを匙ですくい、
「あーん」
わたしたちの息子、セレボーンが離乳食として用意したすりつぶしミカンを嬉しそうにハムハムと食べていく。
そう『七泊八日』の時にやっと子種が着床してくれ、わたしたちは子供を授かった。
……正直、サリアの陣痛が始まったときは何もできなかった。
……痛みに苦しむサリアをどうにか助けたいと、だがなにも思いつかずアワアワ言っているだけだった。
……ミアが中心となってうまく動いてくれたおかげで何とかなったようなものだ。
……ちなみに、ラルフもわたしと一緒になってアワアワしていた。
その後、子供は生まれたが休みなく『乳よこせ』『漏らしたからオムツ変えろ』と泣き続け、わたしもサリアも睡眠時間を削り心休まらない時が続いた。
いくら侍従侍女が頑張っても経験が皆無の為に手が回らず、種族総出で対応しつつも頭を抱えた。
オフィーリアやチェリーさんにも相談したが、『そんなこと発生したの?!』『どうすればいいの?』と皆でおおわらわ。
他部族の乳母を雇いやっとまともに眠れるようになり、二人で涙したのもいい思い出だ。
やっとそんなズタボロな生活を乗り越え今がある。
まぁ、それでも子を成せた条件の一つである毎日の全体強化は日課として続けている。
いつ求められても大丈夫なように準備をしておくのは基本だ。
常在戦場というのだったか?
古代エルフもこのような気持ちだったのだろう。
そんなある日の夜。
モジモジしながらサリアがシーツをかぶりながらすり寄ってきた。
「ねぇ、あなた」
「ん? なんだい?」
「その、セレボーンも前ほど手もかからなくなったことだし……」
顔を真っ赤にしているが、手を貸すことはしない。
……やっぱり、はっきり言ってほしいからね。
「『二泊三日』しない?」
「よろこんで!」
その夜どうなったかは……皆様の想像にお任せします。
まぁ、想像を超えるすごいことをしていると思いますけどね。
なお、女教師メガネ&黒ストッキングありバージョンでした。
うむ、萌えた。
- fin -