反乱の終わり(ケイン視点の話)と二泊三日一時停止
◆◇◇◇
「魔王にすり寄る愚か者どもよ!」
「──を?」
火の精霊王が奇矯な叫び声に動きを止める。
アーレが前さ出でぎでなんか騒ぐようだ。
「魔王を甘やかし、性欲を満たすことで思うがままに操るろくでなしども!」
ぶふぉっ!
流石にラルフ達だけでなくタイバーン殿、精霊王の皆さまも全員噴ぎ出してら。
まぁ、全てはオフィーリアの(性)教育のたまものなのだが。
「お前らが居ても何の役にも立たん! 魔王のためにも我々がそばに仕えてやろう! 無能どもは消え失せよ!」
「……なぁ、アーレよ」
おや、ラルフが前に出た? 舌戦を挑むつもりか?
「なんだ? 王宮から消え失せるのなら命は取らないでおいてやるぞ?」
「いや、そっちじゃなく、オフィーリア様を追い出すというのであれば……お前が魔王様に抱かれるのか?」
ぶっふぉっ!
あぁ、精霊王の皆さま、落ぢ着いで!
ちょ、精霊女王の皆さま、『それはそれで……』なんて言わねで!
タイバーン殿、さっさど皆様どご落ぢ着がせで!
あぁもう、こっちから声までは届がねようにしてだのは失敗だった!
ていうが、アーレ達も吹いでらし。
「お前の性癖までは知らんが、魔王様が本気出したらお前なんぞ二時間ほどで心が壊れるぞ? 夜のお楽しみ中に淫気垂れ流しな魔王様にまともに近づけるのはオフィーリア様しかいないのに、自殺行為としか言えないが?」
……マルコとサリアも近づげるどは思うぞ。
なんせ当人たちが淫気垂れ流しの中で子作りしまぐってらんだんて。
「な、なぜ魔王なんぞに抱かれなければいけない!」
「オフィーリア様にも出ていけというのだろう? そんなことをしたら魔王様は悲しむだろうな」
確実にそうなるべね。
「ちなみに、一時期オフィーリア様が三日ほど体調崩して夜のお相手をお休みしていた時、性欲を無理やり理性で押さえつけている魔王様が爆誕した。そんな時に魔王様に抱かれたいという愚か者が出てきてな……」
あぁ、あの時だすね。
あれは珍しくオフィーリアが風邪引いだどぎでした。
流石さ風邪引いだどぎに夜のお楽しみはダメだろうと皆で止めだんだすよね。
魔王様も理解はされており、オフィーリアを心配しつづおどなしく一人寝してもらったんだが……。
「そいつらは魔王様の御業でこの世から消し去られている」
んだ、本気で魔王様怒っちゃって、何と言うか……相手をスムージー化させちゃったんですよね。
飲みだぐはねけど。
それ以上は抱がれでゃなんて言い出す者はいなぐなって、オフィーリアも元気になり騒ぎは落ぢ着いだのんだども。
おや、アーレが真っ青になってらが?
「そ、そんなことあるわけなかろう!」
「まぁ、勝手に都合の良い夢でも見てればよい。どうせここでお前たちは死ぬのだから」
「ほざけ!! お前ら、突撃だ!!」
アーレは怯えと怒りが混ざったような表情をしつつラルフ達に突撃していった。
……
え、この後?
突撃一回でアーレ達反乱軍は壊滅。
ラルフ達は『もんじゃ焼き』を作り、召喚された霊たちは『干物』を作ったぐらいだすね。
精霊王たちやタイバーン殿たちは暇だったようでのんびりしながらラルフ達に声援を送ってましたよ。
以前の『文武発表祭』で子供たちのイベント『かけっこ』の時に大人だぢが送ってだ心温まる声援さ近ぇように感じるすね。
え、ちゃんと戦闘シーン見せろ?
精霊の助けのないアーレ達に勝ち目なんか一切ないし、敵側があまりにも弱すぎて見せる価値無ぇがらなぁ……うん、やっぱりなしで。
◆◇◇◇
「で、このあとは?」
と、ケインに聞くと、
「ん? 白無能族のへデリとタイバーン殿が話して反乱にががわってね者だぢは処分なしで落ぢ着いだ。無関係な者たちは六種の精霊すべでど仲良ぐしてだらしくて、現状も精霊達ど仲良ぐしてらよ」
え゛?
精霊と仲良く?
ってことは精霊を介した魔術を六種使えていたってこと?
「あぁ、アーレ達が騒いでだ特定の精霊使わねって奴は反乱起ごした者だぢだげが言ってらだげであって、他の面々は一切無視してらそうだ。ただ、精霊を呼んでいるのを見られるどうるさぇがら、こっそり隠れで使ってだんだど」
何と言うか、変な形の苦労をさせてしまったようだ。
「とりあえず反乱に参加してね者だぢは皆二百年前のあの件にががわってね者だぢであるごどは確認した。だんて現在の生き残りはヘデリが管理するごどでとりあえずは落ぢ着がせだ」
問題の先送りって奴ですね、と言ったら拗ねられた。
いや、死体が拗ねても可愛いとは流石に言わんぞ?
チェリーさんじゃあるまいし。
「後は、一応黒無能族のヴェルスタンドへ事態の説明をタイバーン殿の方で行った。流石にアーレが死んだのは少しは驚いだようだが、基本は淡々ど話し合ってお終いのようだ」
「ヘデリ達が反乱にも二百年前の件にも関わっていないことは伝えてますか?」
「いや、もしかするど感づいでらがもしれねが、こぢらがらは教えでねし、おいがだが把握してらごども内緒にしてら」
「となると、現状魔王国に喧嘩売っているのが黒無能族だけであることは……」
「可能性はあるど考えるべがね、その程度だべよ」
「……あぁ、こんな時はこういうんでしたか? 『お主も悪よのぅ』でしたか?」
「えぇ、懐がしすな。おいがまだ生ぎでだごろのネタだすね」
ケインと二人でニヤニヤしていると、
「ねぇチェリー、男二人で怪しい笑いをするのってどう思います?」
サリアがトゲトゲしく言うと、
「特殊な性癖でもお持ちなのではないかと思いますわ、サリア。例えば『挿しつ挿されつ』な関係とか……」
チェリーさんもチクチクと嫌がらせをしてくる。
いや、待って、『掘って掘られて』な関係ではない!
ケインと二人で全力で否定するが、サリアは拗ねチェリーさんは無表情でこちらを見て……おられます。
ねぇ、無表情やめません? 本気で怖いんで。
ケインと全力で説得と謝罪を行いなんとか許しを得ましたが……執行猶予っぽいですね。
「とりあえず、白黒無能族の状況も把握できたことだし、『二泊三日』してもいいよね?」
「いいy──」
「──ちょっと待っていただけますか?」
え? サリアが『二泊三日』にストップをかける? 冗談でしょ?
「その……もしかして……」
わたしが怯えつつも問うと、サリアは理由を説明し始めた。
「今更別れるとかじゃないですよ? ちゃんと体温上がった頃にしましょう。食事も魔術も決行日まで継続しておきましょう」
はぁ~~~~~~~っ。
本っ気でビビった~~~~~。
「というわけで、一月以内に休みを取りますがそれまでは普通に仕事します。まぁ、流石に今日は瘴気対応で疲れたので休ませていただきますけどね」
サリアがケインから許可を得てそのまま自宅に戻る。