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ブラックドラゴン夫婦の騒動

◆◇◇◇


「失礼します! 人間の国々からラシス、ルンパリ、パルノの三カ国国境にある砦で瘴気が発生したと連絡ありました! 手紙はこちらに!」


「失礼します! 白無能族が反乱を起こしました! 首謀者はアーレで王都に向かって進軍中です!」



 伝令たちが持ってきた情報があまりにもタイミングが悪すぎる。


 この三カ国の国境となると半年前の話だよなぁ。もしかするともっと前かも。


 白無能族の方は移動時間考えると対策取る時間は二、三日あるか?

 


 とりあえず人間の国からの手紙を見ると……ナニコレ?


「手紙さ書がれでだ情報んだども、以前侵入してぎだ勇者どもが属してだヨタバール教が暴走しておるす。そごがしこで反乱起ごした挙句、最終的に砦に逃げ込み戦ってだどごろに砦の中で瘴気が発生したそうだす」


「砦の中?」


 ケインの説明に対して魔王様が疑問に思われたようだが、それも仕方がない。


 今まで人の多い場所、城とか街とかに瘴気が発生したという記憶はない。


 一番近くても徒歩半日とかだったはず。



「あー、疑問は尽ぎねぁがまずはやるべぎごどすべ」


 ケインに指摘され瘴気対応指示を出す。


 すぐにスターフィード殿が来るだろう。


 

「それと白無能族の対処だども……どうもへデリを含めだ大半の者だぢは二百年前の出来事に否定的でいうが情報封鎖されでだようだす」


「えっと、あの反乱を知らないってことぉ?」


 オフィーリアの問いにケインも困惑しつつ答える。



「んだ、そんた感じのようだす。ちなみに白無能族内では『マルコたちは副宰相としての仕事が増えた為王都で暮らすこどどなり自分だぢに引ぎ継いだ』となってら。精霊のことは許可を得でらど伝えでらようだ」


「はあ?」


 何それ?



「つまりアーレとその仲間どもが我々と民とに別の情報を流し、その間で話に整合をとっていた?」


「多分……」


 ……。


 ……ふっ。


 ……ふふっ。


 

「やってくれたなあいつら」


「えぇ、本当に」


 サリアも同じ思いのようで、ステキな笑顔を見せてくれる。


 ちなみに二百年前のアノ時もこの笑顔をみせていたなぁ。



「魔王様、ケイン殿」 


 こちらの希望を伝えようとすると、ケインはこちらをチラ見する。


 まぁ、想像はついているのでしょうけど。


 

「うちの面々が鎮圧に参加するのをお許しください。わたしたちが行けないので」


「いいよ、気持ちはわかるし」


 私はラルフ達生き延びた被害者たちが恨みを晴らす機会を求め、魔王様が即座に許可を出す。


 二百年前の時に法に縛られ報復できなかったことを魔王様も気にしてらしたから、この機会に我慢してきた分を発散してしまえってとこだろうけど。



「ではいつもの瘴気側と私の白無能族対応で別れるでいうごどで。マルコたちは鎮圧参加メンバーに声を掛け、代表をおいのとごろに来るようにしてたんせ」


 ケインの指示により各自動き出す。



 瘴気対応のために着替えに戻り、皆を集める。


「マルコ様、全員集めるなんてどうしたんですか、珍しい」


 ラルフが困惑した面持ちで聞いてくる。


 まぁ気持ちはわかるが、すぐにわかる。


 

 簡単ではあるが瘴気と白無能族の反乱、そして白無能族側の民に情報がまともに届いていないことを伝える。


 ……想像通りではあるが、皆の表情が能面の如く固まっている。


 ……固まるというか、噴火数秒前って感じか?


 

「今の話は……」

「すべて真実だ。そして大事なこととして、魔王様から白無能族の反乱鎮圧に我々が参加することの許可を得た」



 表情に動きが見えた。


 二百年耐えてきた思いが爆発しそうなのを侍従侍女の誇りで無理やり抑え込んでいる。


 

「私たち夫婦は瘴気対応しなくてはいけない。なのでラルフ、ミア、二人を中心に準備を頼む。まずは私たちの出発準備を整えた後に二人はケイン殿のところで細かい説明を受けてもらう。他のものは二人が戻り次第、指示に従い……」


 ちょっと間をおいて命ずる。


 

「反乱参加者を滅ぼす準備を始めてくれ」


「「「ハイ!!!!!」」」

 


 まぁ元気なこと。


 たっぷり楽しんできておくれ。


 

 急ぎ瘴気対応用の着替えをし、ラルフ、ミアを連れてケインのところへ急ぐ。


 そうすると、スゾッキィー隊長が大慌てでやってきた。


「すまん、急ぎ中庭へ行ってくれ!」


「は? どうした?」


「スターフィード殿が今回の瘴気対応には行けないと言い出した!」



 うぞ~ん……。

 


 急ぎ中庭に向かうとケインがスターフィード殿と話し合いを行っていた。


「そぢらの気持ぢもわがるが、瘴気をほったらがしには流石にでぎねのだすよ」


「こちらも理解はしているが、孵化するまで妻は食事を取りに行くことができないのだ! 瘴気対応中に巣に戻れないとなると妻が餓死してしまう!」


 あ~、これは流石に無理してもらうことはできんわ。

 

 同じ立場になったらわたしもぐずる。


 

「ケイン、スターフィード殿でなくても移動に協力してもらえれば問題ないのでは? 確か西の方にねぐらがあるブラックドラゴンのプレーンヴィッジ殿なら現在子育ては終わっているはずですよね?」


「おぉ、プレーンヴィッジなら移動担当もやったことあるし問題なかろう!」


 スターフィード殿も早く巣に戻りたいのか協力的だ。


 魔王様たちも……って、あれ?


 ラルフと話しているようだけど、何されてるのでしょう?


 なんか渡されているようだが……。

 


 ケインが話をまとめる。


「そんなわけでスターフィード殿、関係者をプレーンヴィッジ殿のねぐらへ連れで行ってほしぇ。んで説明はマルコたちが行い、協力を取り付げだどごろで戻られればよろしぇ」


「おう、そのくらいなら構わん。すぐに行こう」


 ケインたちと別れ、すぐにプレーンヴィッジ殿のねぐらに向かう。

 

 

 サクッとねぐらに着くと、すぐにスターフィード殿の仲介でプレーンヴィッジ殿と話し合おうとするのだが――


「あら、魔王様の下僕のくせに偉そうですね。ブラックドラゴンの中でも最も強き者であるうちの旦那様を顎で使おうとは教育がなってないのでは?」


 ――誰だこいつ?

 


 ちらっとスターフィード殿を見ると気まずそうにしながらもこっそり教えてくれる。


「その……プレーンヴィッジ殿の奥方だ……」


 え……なに? ここまで非常識なの?


 プレーンヴィッジ殿を見ると『ゴメン!』と言わんばかりに頭を下げていた。


 でも奥方に見えないあたりでやるところがこの夫婦の力関係を如実に表している。


 

 全く……つまり、この暴走している輩を黙らせないといけないんですね。


 仕方がないのでちょっとオハナシしましょうか。


 あ、オフィーリア。ちょっと黙っていてね。


 魔王様もおとなしくしていてください。


 オフィーリアで遊んで構いませんので。



「その発言は魔王様への反意を抱いていると理解してよろしいですね?」


「は? なにを言い出すの?」


 なにもかにも……なぁ。



「瘴気対応は魔王様がこの世界を守る大切なお仕事でございます。それをあなた意思で邪魔しようというのであれば反乱の意志ありと見られても仕方がありません」


「そんなわけないじゃない!」


「あなたがどんな言い訳をしようとも今現在瘴気対応の邪魔をしている。プレーンヴィッジ殿、これはブラックドラゴン族全体の意思と認識してよろしいか?」



 プレーンヴィッジ殿も流石に慌ててすぐに回答する。


「そんなことはない! 我らブラックドラゴン族は魔王様に忠誠を誓っておる!」


「それを信じろと? あなたの奥方はあなたの意志と真逆のことをなさっておるようですが?」



 プレーンヴィッジ殿はちょっと言いにくそうにしつつ対処を明言する。


「……妻は謹慎させます」


「あなた!」


 奥方はプレーンヴィッジ殿に対して怒っているようだが、そんな権利あると思っているのかねぇ?



「もし妻が謹慎を破り、このねぐら周辺より遠くへ移動した場合……処分して構わない」


「あなた! ふざけないで!」


「ふざけているのはお前の方だ!!」


 プレーンヴィッジ殿の怒りに奥方は驚きの表情を浮かべる。


 よほど珍しかったのか目を白黒していた。



「なぜ気づかない? お前は魔王様の下僕とかぬかしたがそちらのご夫婦がこの国の副宰相夫妻。それにあの侍女は魔王様直属の侍女オフィーリア殿、魔王様あるところ必ず付き従うお方だ」


「はっ! それがどうしたって──」


「つまり魔王様もこの場におられて、お前の暴言を全て聞いているということだ」


「──っ」


 プレーンヴィッジ殿の言葉に奥方は固まる。


 まぁ、自分の発言が魔王様にまで聞かれているとは思わないだろうなぁ。


 今オフィーリアの服の中でモゾモゾお楽しみ中みたいだし、気づかない方もおられるだろう。



「魔王様の直属の部下をここまでコケにしてなぜ許されると思った?」


「そんなの、我らブラックドラゴン族から見れば塵芥のようなものでは?」


「その発言、魔王様の部下を侮辱する行為でしかないこと理解していないのか?」


「魔王様当人ならともかく、その下僕まで気を遣う必要なんてないでしょう!」


 うっわぁ……これ本気で言ってるんだろうなぁ。



「そんなこと言われて喜ぶと思われたのかなぁ……」


 オフィーリアの胸元から顔を出しつぶやく魔王様。


 しょんぼりする気持ちはよくわかります。


 わたしだって、一緒に王宮に避難したエルフたちを下僕扱いされたら石抱とか虫責めとかしたくなりますし。



「なによ! その女の胸から飛び出した気持ち悪いのは!」

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