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次の一手&二つの厄介事

◆◇◇◇


 さて、今は隣でアへッて気絶しているサリアと多分片付けなのだろうが恐ろしいものを見るような眼でわたしを睨み付けているミアがいる。


 以前も似たような質問をしているが、今回も聞かねばなるまい。



「色々と言いたいことがあるのだろうと推測するが、先行して教えてほしい」


「……何でございましょう?」


「今日は何日の朝だ?」


「朝ではありません」



 ……え?



「『二泊三日』最終日の夕方でございます」



 …………え?



「魔王様や宰相様には伝えておりますので仕事の方は問題ありません。ですが、執務室で新たな伝説が囁かれるのは間違いないでしょうね」

 


 えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!

 

 

 なお、サリアは次の日の朝まで起きてこなかった。


 起きた後も生まれたての小鹿の様な有様だった。

 


 次の日、執務室に向かう途中でスゾッキィー隊長とばったり会ったが何故か怯えられてしまった。

 

 いや、君近衛騎士団の隊長だよな?

 

 なぜそこまで怯える?

 

 というか、夫婦の営みに怯えてどうするよ?

 

 

 執務室に入ると、皆心配してくれた……サリアを。

 

 同時に絶対零度の視線で迎えてくれた……わたしを。

 

 

 いや、そりゃ頑張り過ぎたのは分かりますけどね、そこまで冷たくしなくてもよくない?



「普段の『二泊三日』でも呆れているのにそれを超えるって……」


「サキュバスでもそこまでしませんよぉ」


「サリア、種族変更のご相談承るすよ?」


 上から魔王様、オフィーリア、ケインのコメントです。


 上二つはともかくケイン、サリアを死体にしないで頂きたい。


 

 ああ、そうだ。


「オフィーリア、サリアに渡したあのセーターとてつもなく脱がしづらいのだが……」


「そんな難しいかしら? 灯りちゃんとつけてやったんでしょう?」


「「え?」」


「なぜそこで疑問に思うのか分からないけど、暗闇であれを脱がそうなんて超絶難関プレイにしかならないわよ? あのセーターのギミックを理解している私でも厳しいもの」


 サリアを見ると、滅茶苦茶顔青くしている。


 

「な、なぁ、サリア?」


 愕然としつつ、どういうことか問うと、


「……ごめんなさい」


 憔悴した表情で謝罪され、わたしはショックで膝から崩れ落ちた。

 

 ……あんなに頑張ったのに……。


 

「どういうことなんだい?」


 魔王様がキョトンとした表情で聞くと何となく事態に気づいたオフィーリアが説明を始めた。


「サリアったら勢い余って視界を塞ぎ指先のわずかな感触だけで脱がせてみせてってお願いしちゃったみたいねぇ。そんなことしたらマルコが暴走するのも当たり前よねぇ。ちなみにどこまで意識があったのぉ?」


 正直に『セーター部分は外したが、ショーツ部分のホックを外す前に煽られまくって暴走した』と答えると、オフィーリアがなぜか顔を青くした。


「えーっと、視界塞がれた状態でそこまでやっちゃったのぉ? よく暴走しなかったわねぇ?」


 視界がふさがれたというより、新月だったので何も見えなかった、暴走についてはセーター部分のホックを外すまでは全力で我慢しました。


 でも、『わ・た・し・を・た・べ・て?』なんて言われては流石に……。



 わたしの独白を聞いてオフィーリアは呆れてしまったようだ。


 そこまで呆れる様な事をしてしまったのだろうか?


 

「あ、いや、マルコの行動に呆れたわけではないのよぉ。そりゃ真っ暗闇であれをクリアしようとすること自体は正直唖然としたけどぉ、むしろサリアがあまりにもひどすぎるわぁ」


 というと?


「先ほど言った通り目隠し状態で脱がすなんてこちらとしては一切考えていないのよぉ。灯り付けてヤればいいものを……。それをクリアしかけたところに暴走狙いで煽ればそりゃあねぇ……普段の『二泊三日』を越えるのもやむなしではぁ?」


 あぁ……確かにそうかも。



 サリアは説明を聞いて流石に反省したのか


「あなた、ごめんなさい……無茶させちゃったわね」


 と謝罪してきた。



 ふむ……。


 

「サリア」


 わたしが声をかけると、サリアは身体をビクッと震わせた。


「次は月が出ているときにシような? 流石に新月の日にはアレはあまりにも厳しいから」


 え、と驚きつつわたしの顔を見るサリア。


 軽く抱きしめつつ頭を撫ぜるとあちらからも抱き着いてきた。



「えーっと、一件落着だす?」


 一応当事者の方ではその認識ですよ、ケイン。


「何となくナァナァで済ませた気もしますけどねぇ」


 いいじゃない、当人たちが満足しているんだから、オフィーリア。


「まぁ、飽きたしもういいかな」


 魔王様、流石にそれはちょっと……。



 その後三か月ほど様子見したが着床しなかったようだ。


 呪いをかけなおしサリアと話し合うが、まず『今までで一番当たりそう』『あと一歩』な気がしたとのこと。


 ただし後何をすればその一歩を踏み越えられるのか正直思いつかない。


 

 二人で悩んでいると、ラルフとミアが慰めてくれた。


「まぁ、慌てずにじっくり考えましょう」


「そうですよ、我々には時間は十分にありますから。急いでもうまくいくとは限りませんしね」


 ……彼らにも気遣わせてしまったな。


 言う通り、時間はいくらでも……時間?


 

「ラルフ、ミア。もしかすると次の手が浮かんだかもしれない」


 二人が驚きの顔をしてこちらを見る。


「時間だ。わたしの魔術による強化を毎日、それと週一、二回サリアの調べた食事療法。これらを日々継続して行うことで子種の強化ができないか?」



 二人は困惑しているところへサリアが疑問を投げかけてきた。


「もしかして強化と食事を長期間行うことで鍛えるような感じ? 近衛騎士たちがM・B・Cで日々強制的に鍛えさせられるように?」


「そう、そのイメージだ。確か子種は作られてから二週間くらいかけて排出準備を整える。ならその間強化し続ければ今までより可能性が高くならないか?」



 サリアはちょっと考えた後、「やってみる価値はありそうね」と呟いた。


 ラルフもミアも『そんなんでうまくいくのか?』という反応だが……そんなのわたしたちだって分からないよ。


 ただ、元々わたしたちエルフには奇跡レベルでしか子を成すのは期待できない。


 ならやらないより何でもやるだけやってみて、うまくいけば奇跡とあがめればいい。

 

 

 次の日、執務室で仕事をしていると複数の伝令から連絡があった。


「失礼します! 人間の国々からラシス、ルンパリ、パルノの三カ国国境にある砦で瘴気が発生したと連絡ありました! 手紙はこちらに!」


「失礼します! 白無能族が反乱を起こしました! 首謀者はアーレ、王都に向かって進軍中です!」


 

 はぁ?!


 何ですと?!


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