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さて次のコスチュームは?

◆◇◇◇


 ……


 …………

 


 ハッ!


 ここは? 外?


 なぜか顔が痛いが……なぜだ?


 

「あなた、大丈夫? 私が誰だかわかる? 説明できる?」


 おぉ、我が愛する妻、サリアではないか!


 忘れるわけがないじゃないか。


 って、サリアも呪い解いたの?


 

「洞穴(比喩表現)に入ってからの記憶は?」


 うん?


 匍匐前進で進んでいって……あっ! 卵は? 卵はどうなった?


 

「順番に説明すると、卵の周辺の筋肉をほぐしていたところ卵を排出しようと動き始めたそうよ。そこで急に卵が動き出してあなたの顔に直撃したの」


 あ……。


 思い出した。


 

 ディダストが苦労してほぐしていたが急に蠕動し始めて……。


 回避なんてできるはずもなく顔面に卵が直撃ルートで近づいてきて……。


 

「その状態で指示なんて出せないからルーミエ様がこちらに連絡を取って皆で一気に引っ張り出したの。その後すぐに産卵できたわ。なので今回のミッションは大成功よ」


 そうか……。


 精霊王たち、特にルーミエとディダストに礼を言い産んだ卵を見に行った。


 

「……なぁ、サリアよ。卵の一部に赤いものがついているがあれは何だい?」


「……あなたの顔に直撃したときの鼻血だそうよ」


「……かなり出血の量が多いように見受けられるが?」


「……呪い解かないと間に合わないくらい治療魔術をかけたわよ」


 それって死にかけたってこと?


 サリアがわたしを救ってくれたってこと?



「ありがとうサリア!」


 そう叫びサリアを抱きしめようとして



 スカッ


 

 抱きしめる前に避けられた。


 とてつもなく冷たい視線が私を襲う。

 


「なにはともあれ、家に戻って風呂入ってから。すべてはそれからよ!」


 い、いえす、まむ!

 

 

 その後、ざっくりではあるがディダストに頼んで水をたっぷり出してもらい一時しのぎではあるが洞穴(比喩表現)の痕跡をできるだけ洗い流した。


 流石に抱きしめるのはまだNGのようだが極端に嫌がられることはなくなった。



「皆、協力ありがとう。無事生まれてほっとしておるよ」


「本当にありがとうございます。卵詰まりによる死も脳裏にかすめましたが皆様のおかげで生きて卵を見ることが出来ました」


 スターフィード夫妻からとてつもなく感謝され、わたしたちは王宮へ戻った。


 ……サリアの笑顔が硬い理由についてはちゃんと話し合わないといけないな。


 ……風呂入ってからだが。


 

 王宮に戻り、執務室で報告を行う。


 ……お前ら、笑うなら笑えよ、ケッ。


「いや、ぶっ、よく頑張ったと思うよ」


 魔王様、途中で吹いちゃダメでしょ。


「んだんだ、新しぇ命救ったのだんて誇らねど」


 ケイン、もう一度、わたしの顔をちゃんと見て話してみなさい。


「あらあら、そっちのプレイもアリかしらぁ」


 オフィーリア、お前らしい反応だが洞穴(比喩表現)に入るのに性的な思いは無いぞ。


 ……お前の洞穴(比喩表現)に魔王様を突っ込むつもりか?


 なんとなく、既に実施してそうだが。


 

「とりあえず呪いも解いでらごどだし、このまま『二泊三日』だろ? 今日はもう休みでえよ」


 いつものケインのコメントに乗っかることとする。


「では遠慮なく休ませていただきます。サリア、帰ろうか」


「そうで――」


「ちょっと待ってね。サリア、『二泊三日』用のコスチュームあげるからちょっと付き合ってね」


 オフィーリアがストップをかける。


 何をよこす気だ?


「マルコ、気になるのはわかるけど、あなたは最優先事項があるでしょ?」


 最優先事項? 何の話だ、オフィーリア?


「とっとと帰って風呂入りなさい。まだ微妙に匂うわよ?」

 

 

 家に帰りすぐに皮膚がボロボロになるまで体を全力で洗い、その後帰って来たサリアに全身のニオイを嗅がれOKをもらって、やっと抱きしめることを許可された。


 抱きしめてサリアの香しい匂いを堪能していると……。


「あなた、あのね」


「うん」


「スターフィード様の奥様が産卵したとき慶ぶべきだったんだけど……できなかったの。嫉妬してしまって純粋に祝えなかったの」


「うん」


「さっきオフィーリアにコスチュームもらったじゃない? あの時に指摘されたの。『表情が硬くなっている。もしかして奥方に不快な感情持ってない?』ってね」


 ある意味『流石!』と言わざるを得ない。


 本当にこういう方面ではオフィーリアに頭が上がらないな……。


「そして、『自分が産めずに苦しんでいるから他者の幸せを喜べない。これは分かるし仕方がないわ。でもあちらの二人に不快な感情持つのは別よ』ってね。私の妬みの感情を的確に言われちゃったわ」


「まぁ、あまり隠せてなかったしね」


「え?」


「本当は抱きしめて頭ナデナデして落ち着かせようと思ってたんだけど……」


「だけど?」


「洞穴(比喩表現)対応後だったから触れるのも嫌だったでしょ?」


「あ……あはは……」


 ……瞳逸らさないで。


 気持ちはわかるけど。


 

「そんなわけで落ち着かせるために触れられる状況になかったんで今まで対処できなかったんだよ。と言うわけで……」


 抱きしめるのを継続しつつ頭ナデナデしてあげる。


「夕食の時間までこうしてあげるから今のうちに落ち着きなさい」


「うん……」


 その後、ミアが夕食に呼びに来るまでナデナデし続けた。


 

 

 夕食は予想通り鮭尽くしだった。


 サリアがヤル気満々で食事しているところを侍従侍女達がニヤニヤしながら見ている。


 わたしたちが子作り成功したらエルフ族増やすためにお前らもヤるんだからな?


 本日の酒は『ムニュ!アヘェ!』。

 

 やや甘口でフルーティな香り、後味は爽やかで食中酒としては万能な感じ。

 

 寒い土地の海鮮系と合いそうな気が……。

 


 デザート(胡麻をペースト状にして蜂蜜と混ぜたもの)と茶菓子――本日は『エロい腰ミノ』――を食しつつ、サリアに一声かける。


「今日、今までの強化全てかけてみるから」


 サリアがデザートをとろけそうな表情で食べていたのが瞬時に固まった。


 侍従侍女たちも愕然とし、また食堂の雰囲気が戦闘中のそれに変わった。


「あ、あなた、本気?」


「本気だ。とりあえず今までの実験したパターンを一度にまとめて実施してみようと思う」


 サリアは覚悟を決めるためなのか少々目を閉じ、押し黙る。


 数秒後、目を開け一言。


「分かったわ」


 少しだけ覚悟を決めたサリアに見とれてしまったのは内緒だ。


 ……まぁ、周りの侍従侍女たちにはバレバレな気がするが。



「一つお願い。寝室の灯りは付けないでおいてね」


 ???


 まぁ、そのくらいはとOKを出す。



 まさかこれのおかげで妙に苦労することになるとはこの時は思ってもみなかった。


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