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何か恨まれることをしたか?

◆◇◇◇


「ちょっと待ってくれ。質問がある」


 ヴェルスタンドが挙手をする。


 

 発言を許可するとなかなかいい質問をしてきた。


「まず、我々と再契約しろとは言わんが精霊たちを我々のそばに常駐させることは魔王国として可能か?」


「内容によるし可能とは明言できない」


「そばにいるだけなのに?」


「お前らはそれだけ精霊に嫌われているのだよ」


 正直に告げるとグッと言葉に詰まるヴェルスタンド。


 だが、そこで止まらず話を進める。


 ……アーレもこの位会話が成立できればいいのだが。



「例えば水の精霊を我の種族に派遣常駐してもらい、我らがそのそばに居続けることで現状の土の精霊の影響を軽減することはできないだろうか?」


 ふむ……この場で考えたにしてはよい質問だ。


 だが……。


 

「まず、これから回答するのは推測でしかないことを理解してほしい」


 ヴェルスタンドから頷きを返されたので話を進める。


 

「その手は既にわたしたちも精霊王たちも考えた。その方法で完治できるかは正直保証はできない。一割いけば御の字ってところだ。なお、九割は水の精霊の影響により傷口の腐敗が急速に進む」


 ヴェルスタンドから驚きの視線を受けるが、なぜそこまで驚く?


 

「まず、常駐と契約では当然契約の方が影響が大きい。それゆえ土の精霊の影響を脱することは難しい。また今まで水の精霊を遠ざけていたことから別の影響がある」


「別とは?」


「お前らは水の精霊力に対しての抵抗力が激減しているのだ」


『なんだそりゃ?』といった反応だが、そんな難しいことじゃないぞ。


 

「本来はどの精霊に対しても同等の抵抗力を有している。ただ、長年遠ざけたことでその抵抗力はほぼゼロだ。その状態で水の精霊を契約ではなくても近くに置けばその影響を急激に受ける」


 あ……。


 そんな声がヴェルスタンドから聞こえた。



「当然、そんな影響を受けたらアーレたちと同じ状態になるのは時間の問題だな。むしろ抵抗力がないことから、より早く腐敗が進む可能性が高いと思われる」


 愕然とするヴェルスタンド。


 

「精霊王が呆れ、それでも善意から契約解除したことお分かりになられたかな?」


 呆れた後、滅ぶまで放置する手もあったんだからな?


 契約解除したことでこれ以上加速度的に悪化することを止めてくださったんだぞ?


 理解できるか?


 

「で、では……」


「精霊王の御判断、善意の行動により死ぬまでの時間は少し延びた。ただそれだけだ。二百年事態を悪化させ続けたのだから早くても元に戻すまで同じくらいの時間がかかるというのは想像つくだろう?」


「あ、あぁ」


 ヴェルスタンドしか返事しないが、アーレは大丈夫か?


 理解が追い付いてるか?


 

「で、お前らがあと二百年生きられるかと言うと可能性はかなり低い。これは長く生きていた者たちが急速に死んでいることから想像できるのではないかな?」


 精霊による長寿ブーストが切れたんだから当然なんだが。


 

「そして魔王国として、精霊のえり好みを止めろと注意したにもかかわらずそれを無視してきたあなたたちを助ける理由は無い」


 がっくりと肩を落とすヴェルスタンド。


 

「助けろと言うのなら二百年前の時点でやめるべきだったな」



 これで話はおわ――


「そんな説明で納得するわけなかろうが!」


 ――らせられず、アーレが騒ぎ立て始めた。


 

「貴様の発言のどこに納得する要素がある? 貴様らの無能さをさらけ出しているだけだろうが!!」



 ……なぁ、ブーメランって知ってるか?


 袋鼠族の持つ武器の一つで投擲すると手元に戻ってくるんだが……。


 

 一応確認してみるか。


「ヴェルスタンド、あなたもアーレと同じ意け――」


「――そんなわけない! 流石にそれはない!!」


 わたしの発言に被せるように全力で否定し始めた。


 まぁ、気持ちはわかる。



「それと、我は種族を代表して謝罪する!」


 ヴェルスタンドが魔王様に向かってドゥーゲザーをし始めた。


 中々きれいな形だな。


 ドゥーゲザーし慣れていると見た。


 ……まさか奥方に?


 

「種族の大事とはいえ魔王国の規則を破り各種族に開催通知を出したこと、過去に注意されたのを我ら種族への恨みと考えたこと、その他いまさら数えきれない程迷惑をかけた」


 まぁ、そうだな。


 本当にその通りだ。



「我が種族を処分するのだけはお許しいただきたい。代わりとならないかもしれんが、我を挽肉にするなり磔にして魔王国全土に処罰を知らしめるなりしていただいて構わん!」


 ……言っていることは分かるが、こいつが本当に反省しているのか分からんな。


 種族に都合よく一人の処分で済ませようとしているだけかもしれん。


 ……とりあえず保留だな。


 

「ヴェルスタンド、お前の言い分は理解した。ただし、結論は現時点で保留とさせてくれ」


「な、なぜ?」


「いや気持ちは分かるんだが、アーレをほったらかしにするのはいかがなものかと……」


「あ、あぁ……それは確かに」


 出鼻をくじかれたと言うか話の腰を折られたかのような反応だが、もう一人の方が厄介なんでお前は後回しだ。

 


「さて、アーレよ」


「なんだ! 貴様の発言の謝罪か? 儂はヴェルスタンドのように日和る気は無いぞ」


 そんなわけあるかよ。


 まぁ黒側と袂を分かつのであれば、処分するだけだな。


 

「お前らはわたしたちを納得させられなければ挽肉にするはずだったな?」


「あっ……」


 なにが『あっ……』だよ。


 忘れるほど時間たってないだろうに。


 

「現在まであなたたちの説明は我々を納得させるものではなかった。そして、過去に決めた種族の取り扱いを無視して我儘のごり押し。結論としてお前らを助ける必要がないと判断する」


「ちょ、ちょっと待――」



「白無能族代表アーレ、お前らの種族を処分する」



 アーレは顔を真っ青にして慌て、わたしに文句を言う。


「ふ、ふざけるなっ! 種族が消滅してしまうではないか!」


「だから?」


「我らの種族を消滅したらどうなるのか分かっているのか!?」


「仕事の面倒が少し減るな。それと、わたしたち王宮に保護されているエルフたちにとっては二百年前の苦しみや恨みはあなたがたが生きている限りいつまでも消えない。なので、そちらの種族が消えるのであれば万々歳だ」



 わたしの言葉にアーレは愕然とする。


 なぜそんな反応をするのか理解できないが、一応最後まで言っておこう。


「ただし、わたしたちはお前らへの恨みを持つと同時に救ってくれた魔王国に感謝している。だからこそ今までお前らのしでかした愚かしい行動も法に基づいて粛々と対応してきた」


 本当、保護してもらわなければ王宮のエルフはもっと死んでいただろう。


 

「だが、お前らはやり過ぎた。法を逸脱し魔王様への叛逆としか思えない行動を取ってしまった。ならわたしたちは法に基づきあなた方を処分する」



 ペロッと舌を出し、おまけに一言付け加える。


「まぁ、その過程でお前らの処刑担当をわたしたちエルフが立候補するのは問題無かろう? 仕事の一環だしな」



 言いたい放題に恨みをぶちまけたところ、あり得ないとばかりにアーレは叫ぶ。


「な、なぜそんなに我らを恨むのだ? 我らが何か恨まれることをしたか?!」


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