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最終日、ケインの小さな偉業

◆◇◇◇


 明けて三日目、最終日。


 執務室に夫婦で向かうと、魔王様とオフィーリアが謝罪してきた。


「ごめんなさい」


「規則を逸脱したこと申し訳ありません」


 かなり反省しているようで、二人とも青菜に塩でもぶちまけたようにヘタっている。



 サリアを見ると、大きくため息をついて


「全く、もうやっちゃだめですよ」


 と、二人の頭をポンポンと叩いた後抱きしめていた。


 あぁ、二人ともサリアの胸で泣いちゃって……わたしもサリアの胸にダイブしたい。


 ……お涙頂戴な状況を横目にケインのところへ移動する。


「で、昨日はいつまで?」


「夕飯前には終わったようだ」


 おや、日が変わるくらいまでやるかと思ってたのですが。


 

「おや、おはようございます」


 チェリーさんが執務室に入って来た。


 その直後、とある二人がビクンと体を震わせてサリアから離れて直立不動の姿勢となった。


 まぁ、魔王様とオフィーリアの事だが。


 それと、魔王様は直立不動はできないので、床に水滴状の態勢を取っていた。



「あら、魔王様、オフィーリアさん。ちゃんと謝れましたか?」


「「はい!」」


「許しは得られましたか?」


「「はい!」」


「よろしい。もう叱られないようにしましょうね」


「「はいぃ!」」


 完全に教育(調教)完了してますね。


 チラッとケインを見ても視線を合わせてくれません。


 ……なぜ、不死族のくせして冷や汗かいてるんでしょうね?

 

 汗腺なくなったでしょ、君。


 

 執務室での調教結果報告……改め予定確認後、皆でイベント見学に向かう。


 最終日は舞や歌を中心にプログラムを組んでいる。


 最後は血なまぐさいのは止めておこうと関係各位と調整しておいた。


 正直戦闘系の者たちが反対するかと思ったのだが、むしろ先に殴り合っといて後で宴会の方がいいと言い出した。


 ……酒かよ!


 

 さて、イベント会場ではプログラムが進行しているが……これナニ?


 <舞踏部門>

 ・人魚族:『タイやヒラメの舞い踊り ~ポロリもあるかも?~』

 ・インキュバス族:『ビキニブリーフの煌めき ~マッチョな男はいかが?~』

 ・牛人族:『乳搾り音頭』

 ・サキュバス族:『這い回る虫を探すためにゆっくり服を脱いで行く女』


 <歌唱部門>

 ・セイレーン族:『私の愛を受け入れて ~二人だけの場所~』

 ・ハーピー族:『お姉様ずるい! ~女神でいたかった怪物~』

 ・豚人族:『若き男たち』

 ・馬人族:『西へ! 西へ! 西へ!』


 

「ケイン殿、これ選んだのは?」


「……魔王様とオフィーリアだ」


「あぁ……」


 うん、多くは語らないでおこう。


 ただ、ポロリはNGだからな。


 観客は期待しているようで、かぶりつきで見ている者も男女問わずいる。


 ……そんなにおひねり挟みたいか?


 

 それと、魔術を使える者たちが光の魔術を自分の指に使って複雑怪奇な動きを歌に合わせて踊っているが、いつ訓練したんだ?


 妙に息が合っているんだが。



 なお、サリアがビキニブリーフのダンスに関心を持ったようで、わたしに着用してみないかと提案してくる。


 ……いや、流石に断ったぞ?


 本当だぞ?


 

 さて、色々怪しい部分もあったが何とかイベントも夕方には一通り終わった。


 後は閉会式の為に王都中央広場に集合している民に対して魔王様からお言葉をいただ――


「失礼します!」


 ――どうした?

 


「瘴気発生の連絡あり! 量は小程度、場所は王国東部、境の街の近くです! 近郊に集落は無いようですが、すぐに境の街へ影響が及ぶかと」


 マジか……周りに視線を送ると全員頷く。

 


 ケインに合図を送り、観客へ説明をお願いする。


 他のメンバーは急ぎ準備を行い、スターフィード殿が到着しているであろう城の中庭に急ぐ。

 

 

◇◆◇◇


 瘴気対応メンバーが急ぎ城に戻るの見で、観客だぢがざわめぐ。


 まんず、当然だな、予定では魔王様の閉会宣言どなるはずだったのだんて。


 

「ケイン様」


 チェリーさんが心配すべな顔でこぢら覗いでくる。

 

「大丈夫だすよ、チェリーさん。瘴気の方は魔王様達が対応すればなんも問題ねぁ。そして、こちらは……」


 私は、緊張してらの表さ出さねようにしつづ、生者であった頃でもしたごどねような笑顔つぐって近づぎ、なげなしの勇気奮って――


「おいの方で落ぢ着がせるす。んだんて、そんた心配すべな表情しねで」


 ――チェリーさんのおでこに軽く口づけた。


 

「「「あ゛~~~っ!!!!」」」


「俺のチェリーさんが~~~!」


「俺のケインが~~~!!」


「あたしのさいしょうさまだもん!! あんなめいどのものじゃないもん!!!」



 拷問してもこごまでは……ていう位さ苦痛さ満ぢ溢れだ声騎士だぢや文官だぢがら聞ごえでぎだ。


 なしてが聞ぎだぐねレベルの発言もあるな……勘弁してほしぇ。


 ショックで惚げでだり号泣してら輩もいるが、まあえが。


 

 おや、チェリーさんも赤ぐなってらな。


 生前から続く女性遍歴無しのおいがこんた偉業成し遂げられるどは、ちょっと誇らしくなってしまった。


 

 スキップしそうな位に浮がれだ歩調で中央広場に設置した演説台から拡声器を使って民に向がって呼びがげる。


「皆、静まってぐれ!」


 流石にすぐには静まらねがったが、何度が繰り返してやっと静まった。

 


「先ほど、瘴気発生の連絡が入った」


 ざわっ。

 


「場所は魔王国東部、近隣に居住地は無く小型の瘴気ではあるが、のんびりしてだら影響出るぐらいには境の街に近い」


 ざわざわっ。


 

「魔王様や副宰相夫妻は瘴気を消すために急ぎ現場さ向か――皆、王宮の方角を見よ!」


 スターフィード殿が王宮から出発するべどしてだ。


 ちょうどえがら演説さ使わせでもらうべ。

 

「皆、瘴気を消せるように魔王様に声援を!!」



 魔王様!


 魔王様!!


 魔王様!!!

 


 最初は少ね人数だったが周囲の声援さ押されだのが、どんどん声援送る者だぢが増えでいぐ。


 最後には観客は皆総立ちになり魔王様に熱狂的さ声援送り始めだ。


 

 とは言え、スターフィード殿が飛んで行った以上落ぢ着ぎ取り戻し、声援も終わる。


「皆、魔王様への声援どうも。皆の声は魔王様まで届いだべ」


 わっ、と皆の歓声が聞こえる。


 

「さで、元々文武発表祭の閉会式で集まってもらったわげだが、魔王様は瘴気対応で現在王都にいらっしゃらね。ただし、今回の瘴気は小型なので、夜早ぇうぢに戻られるべ」


 いつも通りならそいだげで戻るべ。


 

「そごで、この場で一旦解散し食事等終わらせで、暗ぐなったどごろでもう一度集まり魔王様をお待ちし、瘴気を消し終わった魔王様に閉会宣言していだだぐべで思うのだがどうだべ?」



 いいぞ~!


 さんせい~!


 

 民からは賛成の声多数聞ごえる。


 ……まんず、少数であっても多数ど取るんだがね。


 

「皆、賛成の声どうも。では、日が落ちるまで一旦解散とする。食事なり片付げなりやるごど進めで、日落ぢだ頃にまだこの場所さ戻ってぎでほしぇ」

 

 おいの宣言により皆色々ど動ぎ始める。


 ほっとしたどごろでチェリーさんが近づいでくる。


「お疲れさまでした」


「いえいえ、何どが不満感じさせずにすんだよ」


 ほんに、民が魔王様を待ってけるでいう期待はしてだが賭げに勝ったな。


「……頑張った宰相様にご褒美です」


 

 チュッ♡

 

 

 ……なしてだべ、左頬少し湿ってら。


 ……なしてだべ、周囲の騎士や文官だぢがら大量の殺気襲ってぎだ。


 ……なしてだべ、周囲の女性陣が『キャー!』と大声で騒ぎ、何があったが周囲さ触れ回ってら。

 

 確か、こんた時にちょうどえ言葉人間の国にあったな。

 

 

 三 十 六 計 逃 げ る に 如 か ず

 

 

 チェリーさんをお姫様抱っこして、魔術も駆使して全力でその場がら走り去るど、騎士たちや文官たちがおいどご捕え尋問すべぐ動ぎ出した。


 ……捕まらねがったどだげ言っておぐべ。

 

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