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魔王権限(サリア視点の話)と狂宴

◇◇◆◇

 

 私、サリアの担当となった医療スペースで怪我人の治療を進めていると、魔王様とオフィーリアが様子見に訪れてきました。


 見廻りつつイチャイチャしている予定だと思ったのですが、なにしているのでしょう?


 

「どうしたのです?」


「ちょっと用事あったんだけど、その前に、お茶もらったから分けてあげるわ。チェリーも好んでたみたいだし、飲んでみて」


「お茶? ってこれパルノ国南部のお茶じゃない!」


 すんごくいいお茶でしょ、これ。


「えぇ、本当によかったわ、これ♡」


 ……?


 なんか気にかかる言い方ね。



「そんで、用事の方なんだけど……」


「あぁ、ちょっとほしい物があってね」


 オフィーリアの言葉に魔王様が被せてくる。


 魔王様が欲しい物?


 そんなものここにはないと思うのですが……。


 

「僕と言うより、オフィーリアが使いたいというんだ」


 オフィーリアの方をギロッと見ると、ニヤニヤしながら提案してきました。


 

「ナース服調達しに来たの」


 

 もうこの時点でお分かりかと思いますが、オフィーリアは夜のお楽しみ用にナース服を欲しがっているようですね。


 気持ちは分かります。


 オフィーリアがこれを着てあんなことやこんなことをしたがらないはずがありませんから。


 でも、現在仕事中ですので流石に魔王様権限使うのはダメでしょ。


 

「いやいや、ちゃんと許可はもらっているのよね。医療班トップから」


 ん?


 それなら倉庫から取っていけばいいのでは?


 別にここにナース服が保管されているわけではないですし。


 

「と言うわけで、はい」



 ……オフィーリアは、ナース服(未使用)を差し出してきた


 ……サリアは逃げ出した。


 ……オフィーリアに回り込まれた。


 

 私は諦めと呆れが混ざったような表情でオフィーリアに問いただす。


「つまり、マルコとの夜の営みにこれを使えと?」


「当然! サリアだって激しくしてもらいたいでしょ?」


「無くても滅茶苦茶激しいですけどね」


 いつものことですが。



「それに、前回のような罪悪感満載の服ではないから安心して暴走できるでしょ?」


 ……それは、まぁ、そうですね。


 前回があまりにも背徳的過ぎたので、今回は落ち着いて……って、着るの前提?


「ま、諦めなさい」


「そうそう」


 ちょ、魔王様まで。


 いや、着なくても夜の対応は十分ですから。


 

「全く、そんなビビらなくても……仕方ない、魔王様」


 オフィーリアが声をかけると、胸元から顔を出している魔王様が珍しく真面目な声で宣言された。



「『魔王権限』で命ずる。祭り終了後にあの服使って夜這いしなさい」




 ……この発言をされた時、私は一瞬ではあるが気を失っていたようです。

 

 ちなみに『魔王権限』とは、魔王国の法を逸脱してでも成し遂げなければならない事態に発動するものです。

 

 過去には魔王様を騙して国を乗っ取ろうとした者たちを処分するために発動したことがあります。

 

 以前少し話題に上がった狐人族と狸人族の件ですね。

 

 賢明なる方々なら想像ついているかと思いますが……夜這いしろと命ずるためにある権限ではありません。



 こんなことで『魔王権限』使わないでください!


 呆れつつも私に残されたのはこの回答のみ。


「かしこまりました」



 後で、私の護衛をしてくれているインミラー嬢が『どんな感じで誘うんですか?!』と根掘り葉掘り聞いてきた。


 ……言えるわけないでしょうに。


 オフィーリア程羞恥心を捨ててないのよ!

 


◆◇◇◇


 なぜだ。


 なんでこのようなものをみなければならんのだ。



 わたし、マルコは悲壮な表情をしつつ、こいつらの戦いを見守っていた。


 

 いや、途中までは脳筋らしい戦いっぷりを見せつけられた。


 わたしのような戦いに関心を持たないような者でも驚きと感動を与えてくれるような戦いもあった。


 それにグリノ殿の言っていた騎士になれなかった者たちの戦いも見てみた。

 

 確かに現在騎士でいる者に比べて劣っているのは間違いない。

 

 だが……明らかに楽しそうだった。

 

 相手を殺す必要も無く、相手に殺されることも(ほぼ)無く、自分たちが騎士を志していた頃を思い出し剣を振るう姿を見ると、今回のイベントに意味があったと思えてくる。




 ただ、別の部門が始まったあたりから会場に妙な雰囲気が漂っていた。


 なぜか、子供連れの親御さんたちが適当な言い訳をして子供たちをここから引き離そうとしたり……。


 なぜか、雄同士で肩を組み合ったり太ももに手を添えたりする輩が極端に増えたり……。



 護衛してくれているスゾッキィー隊長に問うても『わからない』の一点張り。


 ……なぁ、わからないっての嘘だろ?


 お前、わたしと目を合わせようとしないしな。

 

 そんだけでかい目しておいてどうやって視線を合わせないようにしながら仕事できるんだ?


 

 そうしていると、司会者がアナウンスを始める。


 既に決勝戦まで進んでいたようで、青いツナギの馬人族と上半身裸サスペンダーの豚人族が相対する。


 そして、審判の開始の合図とともに

 

 

 狂 宴 が 始 ま っ た


 

 正直、どのような戦い――といっていいのか?――があったのか、わたしも断片的にしか思い出せない。


 よほど記憶から抹消したいのだろう。

 

 特に、決勝戦の馬人族と豚人族の戦いは記憶が混濁しており……話を聞く限りわたしは途中で気分が悪くなりその場で吐いたと聞く。

 

 よほど見たくないものを見てしまったのだろう。

 

 内容までは記憶にないが。


 ちなみに、スゾッキィー隊長は特に気にならなず、吐き気も無かったようだ。


 なんでも『M・B・Cに比べたらなんてことない』だとか。


 そんな境地にはなりたくないものだな。

 

 

 一通り競技も終わり、一日目が終わる。


 サリアと合流して家に帰るところで、何か紙袋持ってもじもじしている。


 それもなぜか顔が赤い、というか真っ赤だな。


 (チッチッチッ)……今日のサリアの担当は医療班。


 (チッチッチッ)……もじもじしてしまうような理由がある紙袋。


 (チッチッチッ)……顔が真っ赤になる様な何か。


 (ピーン!)



「サリア、無理しなくていいんだぞ? どうせオフィーリア辺りから押し付けられたんだろ?」


 サリアは”ビクン!”と反応するが首を横に振り否定する。


 え、違うの?


 

「その……『魔王権限』で……」


 はぁ?!


 いや嘘ついているとは思わないが、部下の夜の営みに対して『魔王権限』?


 あり得ないでしょ?!


 

「私もそう思っていたのですが……オフィーリアにおねだりされて魔王様がOK出しちゃいました……」


 ……。


 ちょっと、明日朝にでも説教しないといけませんね。


 あぁ、ケインにも協力頂きましょうか……。


 

 どうも、この会話中わたしの顔はかなり怪しい顔になっていたようで、サリアに怖がられてしまった……。


 明日朝まではこの怒りは抑えとかないと。


すいません。狂宴がどんなものかは皆様の妄想にお任せします。

精神的に書くのきつそうなので。

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