文武発表祭開催!
◆◇◇◇
「マルコ殿、今の話がらするど腕力以外にも価値があるど理解させればえで言うごどでよろしぇが?」
「そうですね、色々な価値があることを示せればいいと思うのですが……」
「であれば、他の……例えば知識の価値も見せづげれば最悪の事態を防げねべが?」
……知識の価値?
「例えばどのような?」
「研究発表やディスカッション、芸術系もえのでは? 例えば絵画や詩歌、各種族の舞踊などもえ。争う場ではなく発表の場、共有の場とすれば戦いに関心の無い者たちも参加しやすぇべ。子供たちも参加でぎるようなのもあればなおよぇ」
ふむ……悪くはない。
ただし……。
「……予算は?」
この言葉を聞くとケインも流石に苦しそうな表情を向けてくる。
「……正直厳しい、んだどもこれで戦闘系種族のガス抜き、それに知識や芸術等への関心を増やせるのならやる価値はありそうだ」
ふむ、確かに。
ただでさえ脳筋比率の高い種族が多く、また知識や芸術などの分野に関心を持つものは一段低く見られる傾向がある。
この案件を機にその考え方を少しでも変えられたらと思う。
「ただなぁ……」
「ケイン殿、どうなさいました?」
「自分で言うのもなんだが、仕事一気さ増えるんだよなぁ……確がに仕事し過ぎって言われでらんだども、これはちょっと耐えられねがも」
ビクッ!
他代表どもがびくついているが、何をいまさら。
お前らの望みをかなえるのに王宮側は膨大な仕事に潰されそうになることくらい想像つくだろうに。
ちなみに、不死族のケインが耐えられないって相当だぞ?
「ケイン殿、本件について提案があるのですが」
「マルコ殿……とりあえず聞いでみるべが」
死んだ目をした(いや、死んでるんだが)ケインに、聖人の様な表情を浮かべつつ爆弾投下する。
「これらを提案した代表たちに一部仕事させればいいんですよ」
「「「え゛?」」」
「ケイン殿だけ、もしくは王宮組だけ苦労するのは違うと思います。望んでいるのは各種族なのですから、と・う・ぜ・ん・仕事も請け負って頂けますよ」
「……い、いや、ちょっとま――」
「当然、仕事手伝わずイベント開けなんてくだらない発言を抜かす輩がいた場合、こんなイベントなんてやめちまえばよろしい。ただでさえ我々王宮組は書類仕事でいっぱいいっぱいなのにこんな無茶な量の仕事を振ってくるんですから、正直嫌がらせとしか思えないんですよね?」
「そんなつも――」
「あぁ、それとも不死族が書類に埋もれて壊れたり、エルフが精神的に壊れて自殺するのを期待しているとかでしょうか?」
「お、落ち着――」
「で……」
聖人の顔をやめ、悪鬼の顔に変更する。
「仕事を受けるか否か、さっさと答えろ」
「「「……はい、受けさせていただきます」」」
代表どもの絶望に満ちた顔に変わっていくのと並行してケインの顔が生気に満ちたような(いや、死んでいるんだが)顔になっていくのがわかる。
その後、仕事の割り振りを行い王宮としてはちょっとキツい程度にまで作業量を減らし、文官たちから喜びの声が響き渡った。
その分、各種族は慣れていないこともあり、地獄を味わうのだが……。
会議から数か月後。
晴れ渡る空の下、魔王国王都にてイベント開催となった。
……まぁ、途中でケインより死体らしい輩が大量生産されたが、そこは自分たちの提案が元となっているので諦めてほしい。
一部どこぞの愚か者種族のせいで代表たちは無駄に時間を消費してしまったが、そこはまた別の時に話そう。
「文武発表祭はっじまっるよ~」
王都中央広場でいつも通り(?)オフィーリアの胸の中から顔(?)と手(?)を出して魔王様が開催宣言を行うと、国民が歓声を上げる。
……いいのか、そんなんで?
なお、名称は『文武発表祭』となったが、これに決まるまでの会議が……。
『武闘会では?』
『芸術や詩歌の発表にそれは違うのでは?』
『競技会では?』
『争わないものに競技会は違うくない?』
『魔王祭じゃダメなのか?』
『お前らのガス抜きに魔王様の名をつかうと?』
『天下い……』
『世界が消えてもいいのか?』
こんな感じなので、無駄に時間がかかってしまった。
この紆余曲折を経て周囲に迷惑かけそうにない、捻りもない名称となった。
会議に参加したとある代表が言った一言が妙に心に残った。
「これって、会議やる程の話か?」
ものすごく共感してしまったが、それ言っちゃあおしめえよ。
さて、開催宣言も終わったので魔王様はオフィーリアとデート三昧。
青姦とか子供たちの前での露出プレイとかしなければ文句はないので、楽しんで下さい。
残りは担当分けとなるのだが……。
サリアは医療班に。
ケインは知識系発表全体の監視に。
わたしは戦闘系競技全体の監視に。
チェリーさんにも子供たちが参加する分の監視をお願いした。
騎士団には暴走する輩の鎮圧と治安維持。
一番嫌なのがわたしに回ってきてしまった。
……仕方ない、何とか面倒見るか。
言うこと聞かなかったらすべて燃やせばいいだろうし。
◇◆◇◇
ほぅっ……。
小人族の描いた絵画『四族連作 - 四季の彩り』に感嘆の声上げづづ鑑賞を続ける。
小人族のうち四つの部族がそれぞれ一づの季節を担当し、畑の風景を冬、春、夏、秋の順で種蒔き、芽吹き、育ち、収穫を表現してら。
正直、力の誇示しかでぎね輩と比べでなんと素晴らしぇ技術を持っているのだろう。
最近の戦闘系種族の駄々こねに付き合い苦痛でしかねがったが、文化的な発表も含めだおがげでこんた素晴らしぇものに巡り合えだ。
……厄介すべな監視はマルコに任せでしまったが、まんず許してもらうべ。
サリア嬢を医療班に回してらがら、たぶんそごで色々なもの確保するべし、それ使って夜さ楽しんでもらえるべしな。
事前にチェリーさんに相談して正解だった。
絵画の部屋から論文の発表会場に移動する。
多くはねがそれぞれの種族で研究肌の者がいるようで、多様な研究をしてらようだ。
今発表してらのは虫人族黄金虫種糞虫属の者だな。
作物を作る際に自分たちが作る糞玉に種子を混ぜて土に浅く埋めるようにするど発芽率が向上?
やらねがった場合ど比較して倍以上だど?
……それって、種子鳥どがに喰われだがらとが言わねよな?
糞玉使わねでも、軽ぐ土かぶせるだげで同じ効果がでそうだが……。
さっと実験してみでほしぇな。
私の護衛してけでいる近衛第一部隊のフリック隊長は少々つまらなそうだ。
まんず、気持ぢはわがる。
自分が戦闘系種族の方に回ったら同じるべな反応したべし。
おっと、そろそろ子供だぢの合唱だったな。
監視役どして行がねば。
いや、チェリーさんもいるはずだがそれは主目的でねぞ。
ほんとだぞ。