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ピクニックでイチャイチャ

◆◇◇◇ 


 

 そして、ピクニック当日。



 ニコニコと喜んでいる魔王様とオフィーリア。


 精も根も尽き果てたケインとわたしたち夫妻。


 ケインを懸念するチェリーさん。


 武官たちの仕事っぷりをチェックする気満々なタイバーン殿とジャシーリ殿。


 何も知らずに幸せそうな、だけど少々困惑気味のお二人の奥方たち。


 僅かなミスも許されないとこわばった表情の護衛達。


 

 ……ナニコレ?


 確かピクニックってもっと幸せというか、肩の力を抜いたイベントじゃなかったっけ?



 少々、参加者の心構えを仕事からイベントに切り替えさせないといけないな。


「あー、タイバーン殿とジャシーリ殿」


「どうなさいました? マルコ殿」


 ジャシーリ殿が反応するが、視線は周囲の確認に忙しそうだ。


 

「今回、魔王様の提案によるピクニックってことはご理解されてますか?」


「「当然です」」


 嘘つけ!


 理解していてそこまで全力で護衛するのは違うだろう!



「であれば、周囲の確認に注力するよりも奥方たちと和やかな感じを出した方がよろしいかと。魔王様の要望は皆とのピクニックであり、護衛としてお二人に守ってほしいとは言われてないはずですが?」


「「あっ」」


 やっぱり忘れてるし……。


 いや、真面目なお二人だからこそなのかもしれないが……。

 


「それに、護衛の皆を上司が信用しないという行動を取るのもいかがなものかと。彼らの成長の為にも護衛は彼らに任せるのがよろしいかと思うのですが」


「「……」」


 お二人とも、互いを見て『やっちまった……』的な反応を見せてきた。



「まぁ、うちも昨日までの激務の影響で和やかな雰囲気にうまく戻せなくて必死なんですけどね」


 ちょっとネタを振るとお二人も微笑み返してくれた。


 これで、護衛達ももう少し肩の力を抜いて仕事してくれるだろう。



 ピクニック予定地まで馬車で向かうが、わたしが馬車に乗り込む直前、今回の護衛隊長である近衛騎士団第二部隊のガルム隊長が声をかけてきた。



「副宰相殿、団長たちへの説得ありがとうございます」


 チラッとガルム隊長の方を見ると、団長たちに見えないような位置を確保して礼を言ってきた。



「何度か止めたのですが、魔王様からの依頼と言うことでお二人とも……その……暴走されまして……一応、第一部隊から第三部隊まで全員副宰相殿の意見と同じ認識です」


 ……やっぱりそうでしたか。


 

「気にしないでください。それより、護衛の権限がガルム殿に丸投げされる形になりますが、問題ありませんか?」


「大丈夫です。今日ばかりは団長も副団長も守られるお姫様になっていただければと」



 ニヤリとイイ笑顔で告げてくるが――


「ちなみに、M・B・C五セット踊り切るお姫様ってどう思います?」


 ――この一言でガルム隊長の笑顔が消えた。



 ……やっぱり、この言葉はガルム隊長にとって地雷でしたか。


 まぁ、調子に乗りかけているガルム隊長を現実に引き戻せたのですから良しとしよう。



 ピクニック予定地到着までは、それぞれイチャイチャしていただけなので省略。


 魔王様もオフィーリアもピクニックであることを覚えているようで一般的な範囲でのカップルとして行動してくださっている。

 

 ……頼むからピクニック中は組体操(比喩表現)やミックスデュエット(比喩表現)はやめてくださいよ。

 

 タイバーン殿とジャシーリ殿の奥方たちもいるんですからね?



 護衛の大部分が血の涙を流していたが、気にしないことにしておく。


 ……既婚者入れなかったのかな?


 独身者だらけだとこの護衛って地獄だと思うんだけど。



 予定地であるのどかな丘に到着。


 オフィーリアとチェリーさんが中心となって女性陣で食事の準備を進めてくれる。


 王宮の料理人たちが作ったのを広げるだけだったので、男性陣も手伝おうとしたのだが――

 

「食事は私たちが準備致しますので、男性の皆様は散策でもされたらいかがでしょう?」


 ――なんて言われてしまった。


 言葉の裏の意味はともかく、逆らったら昼抜きにされかねないので大人しく散策と言う名の時間稼ぎに向かうことに。


 

「僕たちってそんなに使えないかな?」


 魔王様はしょぼんとしている。


 いつものプニプニつやつやしたお肌の葛饅頭は鳴りを潜め、テーブルに出しっぱなしにした挙句乾燥してしまったかのようなお体になっておられます。


 ああ、細かいヒビまで……!


 

「魔王様、女性陣はこの機会に男性側に家庭的なことがちゃんとできるごどを見せだがった可能性がございます」


「え?」


 ケインが魔王様を諭そうとしていますが、どこでそんな知識を覚えた?


 彼女いない歴が(生前の寿命+死後の生活)のはずだろ?


 

「今回の面々はふだん食事を男性陣に用意するタイミングがねぁ。料理人や侍女をを雇っている者しかおらねぁがら」


「うん」


「一般家庭の奥様方が旦那にしてけれそうなごどどして今回の食事の準備を考えだのがなと思うす。なら、男性側としてやるごどは女性陣が成し遂げたことに対して礼を言い、褒めるごどでは? しょぼくれるごどではねで思うすよ」


「……うん、そうだね。オフィーリアにちゃんと礼を言うよ」


 魔王様の表情が元に戻られました。


 同時にお肌のプニプニ感とつやつや感も復活し、いつも通りの葛饅頭にお戻りになられたようです。

 

 いや、本当にケイン、どうして回答できたんだ?

 

 このメンバーの中で、ケインだけは回答出せないと思ってたんだが……?

 

 なになに……生前父がこのパターンで母に呆れられたのを思い出した?

 

 ケインの鈍感さは親譲りってこと?

 

 そこまで理解しているのならさっさとチェリーさんどうにかしろよ!



 そうこう言っているうちに女性陣の準備が整ったようで、昼食開始となった。


 バゲットにハム、ベーコン、チーズ、イモ、野菜類を用意し好みに応じて挟んで食す方向で進めるらしい。


 流石に料理経験の少ない人に料理しろと言うのは無茶だし、経験のある人におんぶにだっこというのもまずいので、かなりいい判断だと思う。

 

 

「はい、あーん」


 サリアが他の参加者に先駆けて仕掛けてきた。


 オフィーリア辺りが先陣を切るかと思ったのだが、チラッと見ると魔王様がモジモジしながら礼を言っているのが見えた。


 あ、魔王様がオフィーリアに喰われ……いや、抱きしめられた。


 

「じ~っ」


 サリアよ、刺すような視線は言葉にするものではないのでは?


 これ以上じらしても仕方がないので、サリアが用意してくれた『パゲットの上に食材全部乗せ』を食べる。



 あむっ!


 

 サリアの指まで食べてしまうかのように大きく口を開け食す。


 野菜のシャキシャキ感がたまらない。


 濃厚なコクのあるチーズとイモのボリュームがまたガツンとインパクトを与えてくる。


 そこにハムやベーコンの塩っ気がアクセントとなり食欲がさらに増してくる。



「うまかったよ、サリア。作ってくれてありがとうな」


 お礼を言うと、顔を真っ赤にしてしなだれかかって来た。


 その後互いに食べさせ合いっこしてイチャイチャしていた。



 ちょっと気づいて周囲を見ると、タイバーン殿とジャシーリ殿はそれぞれ奥方と食べさせ合いっこしている。


 なんか、うちのやり方真似してる?


 まぁ、別にパクっちゃいけないというわけではないので、夫婦仲良ければいいか。


 ケインは……あぁ、チェリーさんに食べさせてあげているのか。


 そりゃそうだ、ケインって飯食えないしねぇ。


 あまり慣れていないようだが頑張っておくれ。



 ピクニック参加者は皆似たような感じでラブラブな雰囲気を放出させていたが、護衛達がこちらを見ないようにしつつもチラチラ覗いていた。


 見るのは構わないし、独身の面々が血の涙を流すのはまだわかるんだが、なぜそこで砂糖吐いたり呪いの言葉をつぶやいたりするんだ?


 ……もしかして、こいつらプライベートに問題あり?

 

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