チェリーさんの慰め?(ミア視点の話含む)
◇◇◆◇
読者の皆様、お久しぶりでございます。
副宰相夫妻付きメイド長のミアでございます。
ご存知の方もおられるかと思いますが、旦那様は先日『子作り中に幽体離脱』という何とも特殊なプレイ(?)をなさった結果、医者を呼ぶ事態になっております。
ストレスによるものではないかと説明され、呪いのスケジュール変更まで行って負荷を下げるように調整しておりましたがどこまで効果があるのやら……。
また、奥様もオフィーリア様にご迷惑をかけた挙句罰ゲームを命ぜられる始末。
こんな状態で『二泊三日』への影響はないのか少々不安になっております。
おっと、各自準備は整いましたね。
では、寝室に入りましょうか。
キィ……。
片付けの為に入ったところ、なぜか旦那様が私どもを迎える形になっておりました。
素っ裸で。
こちらに尻を向けて。
アナr……えーっと、大きなものの排泄口を見せつけるような形で。
ん? もしかしてこれって、あの有名な『ドゥーゲザー』をしているのでしょうか?
奥様は旦那様の前で椅子に座り、なんかすねてらっしゃいますね。
裸で。
現状が理解できないということは理解しましたが……。
あ な た た ち な に し て る ん で す か ?
とりあえず、バカ二人は置いておいて片付けに参りましょうか。
部下に再度指示を出すと、旦那さまのピクピク震える後部排泄口を凝視していた者たち(九割女性一割男性)も現実に帰ってこれたようで仕事を再開いたしました。
二人を風呂に向かわせ、私も奥様をきれいに洗うと言う名目で一緒に入りました。
当然、これから取り調べを行うんですが……まだ拗ねてますね。
「奥様、むくれてないで何があったのか説明願います」
「(プイッ……)」
「拗ねても時間の無駄です。さっさと説明しなさい。旦那様の命にかかわる部分の話もあるのですから」
「……あの人の幽体離脱は起こらなかったみたい。暴走はいつも通りだけど、当人も完全に記憶失うまではいかずに済んだみたい」
「良かったじゃないですか。で、罰ゲームの方は?」
「ちゃんと条件はクリアしているわ」
「なら、むくれている理由は?」
「……あの人、いつもより興奮してたの」
「まぁそうでしょうねぇ」
「でも、途中で悶絶し始めて」
「はぁ?」
「『わたしはロリじゃなかったはずなのに』とか言い出して、頭抱えだしたの。そんな状態だから暴走も大したことなかったわ。ただ、よほどショックが大きかったのか、そこから抱かれてないわ」
「え゛、いつからですか?」
「二日目の夜中から。なので、それ以降はあの人を慰める方向で進めたけど……」
「けど?」
「苦悩から戻ってこれなかったみたい。で、私もムッとして『改造メイド服や尻出し修道女服、乳出しバニー、紐水着なんて着ても暴走してた癖に園児服程度で何悩んでんのよ!』って怒って……」
何となくではありますが、どちらの気持ちも理解できます。
旦那様からしたら自分の想定していなかった性癖がクリーンヒットしてしまったことに困惑してしまったのでしょう。
奥様のスタイルを考えると実はロリが好きだったなんて思われたら生きていけないでしょうし。
奥様からしたらコスプレの一環でしかなく、そんなくだらないことで悩むなと言いたくなるのも分かります。
正直、今更ですし。
答えは簡単な気がするのですが、私が教えるのもつまら……お二人がよりよい夫婦となる為に心を鬼にして回答を教えないことにしましょう。
そうだ、オフィーリア様に相談してみましょう。
あの方ならお二人にちゃんと説明していただけるでしょうし。
こんなことを考えている間も奥様はプリプリしておりました。
どこぞの子供でもあるまいし、尻の話ではありません。
感情的になっていたと言う意味です。誤解の無きように。
◆◇◇◇
身体を清めて朝食を取り仕事場に向かう。
その間、サリアはまだ怒っているようでわたしをまっすぐ見てくれない。
スゾッキィー隊長からもこっそり『お前何やらかした?』と聞かれるくらいサリアが怒っているのが周囲からもわかってしまう。
対処法を思いつかないまま仕事場に着くと、ケインに加え、珍しく魔王様、オフィーリア、チェリーさんがそろっていた。
困惑していると、オフィーリアがあやすようにサリアに問いかける。
「あらあら、サリアどうしたの? ちゃんと罰ゲームできなかったの?」
罰ゲーム言うなや。
「(フルフル)」
サリアが首を横に振ると、オフィーリアはわたしを睨み付け――
「説明!」
「イエス、マム!」
――まぁ、分かると思うが逆らう気は一切ない。
カクカクシカジカと説明を行うと、オフィーリアは天を仰ぎ一言。
「馬鹿ですか、あなたたちは」
いや、否定はしないが、理由を聞きたい。
「マルコ、あなたのロリな心が刺激されたかもしれませんが、それはこちらの狙いですので特に何も言いません」
はい。
「ですが、そこでなぜ落ち込むのです! 大事なのはサリアとの逢瀬でしょう? まさか、他のロリな子に手を出そうとか?」
「ありません!」
「当然ですね。昨日訪問した孤児院にいた女の子を抱くことを想像してみなさい」
……特に何も?
「では、ロリサリアを抱くことを想像してみなさい」
……おぉ、おっきくなっちゃった!
今更どこかは説明不要だろう。
分からない方はそのピュアな心を捨てずに生きていておくれ。
わたしはもう遅すぎるが。
「分かりますか? 中身がサリアであれば、ロリでも受け入れられると言うだけです。外側がロリだから誰でも受け入れられるようになったわけではありません!」
おぉ!
なぜかオフィーリアから後光が差している!
いつもはピンク色の光しか感じないのに!
軍曹モードのオフィーリアが説得終了したのを見計らったのか、チェリーさんがサリアを慰めようとする。
「サリアちゃんはマルコ君にもっと怪しいことしてるのにロリ程度で悩まないでほしいのね?」
「(コクン)」
「サリアちゃん、男の子って基本童貞のままなの」
げふぅ!×3。
な、何をおっしゃいますやら。
魔王様やケインも混乱してないで反論を……。
あ、ケインは本当に童貞だったな。
「男の子たちって童貞の頃の考え方から成長しないのよ。例えば今回で言えばロリに手を出すのは禁忌に引っかかるとかかしらぁ? そんな考えに凝り固まってしまうの」
そ、それは……。
いや、だって……。
「好きになった女の子を中心に考えていけばいいのに、なぜか女の子を見ずに童貞だったころの考えに固執しちゃうのよねぇ。そこを越えて女の子自身を見てくれる男の子はかなり稀なの。まぁ調きょ……教育して洗の……改心する子もいるけどね」
……え゛?
何、今の発言?
ケイン、なんだその汗は?
心当たりあるんか?
「その結果、女の子にあれやこれや求め過ぎちゃうのよねぇ。ちなみに、サリアちゃんがお母さんになったら、同じようなことがまた起こるわよ。今度は自分を産んだお母さんをベースにして理想のお母さんを求めてくるから」
ぐはぁ!×3。
ちょ、ちょっと魔王様チェリーさんを止め……あ、無理ですか、そうですか。
「ちなみに、童貞に従えとかじゃないからね? むしろ、童貞どもの目を覚まさせないと無駄に苦労するわよぉ(ちらっ)」
びくぅ×3。
チェリーさんの視線がこ、怖いんですけど!
ケ、ケインにたす……あ、無理だ、こいつも怯えてやがる。
……わたしは女性陣の前に向かい、古代エルフの書にあった『謝罪の王』ドゥーゲザーを実施してみた。
膝を合わせた状態で足を折り曲げ、膝下を床に付けた状態で尻を降ろす。
そこから上半身を前に倒し額を床に付くまで伏せる。
「誠に申し訳ありませんでした!」
「何が申し訳なかったの?」
オフィーリアが問うてきますが、なぜでしょう?
あなたの右手に乗馬鞭の幻が見えるのですが。
「サリアが好きなのに、ロリサリアに反応したことをロリに反応したと勘違いした上に自己嫌悪と暴走の結果、悲しませてしまったことです」
わたしの発言を聞いてオフィーリアがサリアに視線を送ると、ため息をつきつつわたしのそばに来てこう言った。
「今回は許してあげます。もう私を愛してることを忘れないでください」
許された。
そのことが徐々に頭に入ってくると思わず泣いてしまった。
魔王様は慌て、ケインはとりあえず終わったことに安堵のため息を吐き、オフィーリアとチェリーさんは『やり遂げた!』みたいな反応をしている。そしてサリアは……。
ぎゅっ。
泣いているわたしの頭を抱きしめ撫でてくれた。
その後、周囲に冷やかされつつもなんとかその日の仕事を終え自宅に戻る。
夕食後、夫婦での話合いで仕込みの結果を聞くが、失敗した感じがするとのこと。
二人で次の仕込みの時にどのような対策を行うか検討したのであった。
なお、後日サリアとオフィーリアが今回の衣装の結果について話し合った時に魔王様がノリノリだったという情報が入った。
……オフィーリアに園児服?
サリアよりピチピチじゃないのか?
痛々しすぎだろう?
当人の前で言ってやろうかと思ったが、命の危険を感じ止めておいた。
ちなみに、どこからこの話を聞いたかわからないがスゾッキィー隊長がオフィーリアの前でポロっとわたしと同じ意見を直接言ってしまったらしい。
その一部始終を見てしまったアッカーメ隊員の身体が青くなって震えていた。
よほど危険なブツを見てしまったのだろう。
なお、その日のスゾッキィー隊長は単眼が無眼になったようだ。