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裁判

◆◇◇◇


 さて、ケインからバトンタッチだ。


 今回関係した者、大半はどうせ反省しないだろうがね。



「ギッポン殿とドビー殿、あなたたちは代表、もしくは郵便事業のトップの立場にあるにもかかわらず、自種族の民を暴行するよう依頼し、あまつさえ暴行回数、成否により金銭を得ようとするとは言語道断」


 むしろ、これだけやって罰金刑で済むとは思わないだろ?


 

「一、代表、事業トップの立場をはく奪。

 二、今まで儲けた金銭を被害者に全て差し出すこと。ただし、不足している分については財産差し押さえ、それでも足りない場合はご家族を鉱山送りにしてでも支払ってもらう。

 三、王都中央にて一日磔の後、槍による串刺刑とする」


 刑を伝えると、ドビー殿が騒ぎ出す。



「わ、わたしは、ギッポンに命ぜられてやっただけだ!」


「だから?」


 ドビー殿は鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべたが、本気で分からないのか?



「命ぜられたのか命じたのかは関係ない。どちらであっても処刑は変わらない」


 がっくりと肩を落とすドビー殿。


 個人的にはギッポン殿が騒がないのが気になるが……と、チラッと見てみると既に気絶していた。


 さっさと騎士たちが牢屋に運んでいく。



「次に、暴行を担当した二十七名。あなたたちは郵便事業を邪魔するべく配達員に暴力を振るったこと、配達員がその時点で所持していた手紙を奪い、破ったこと。これらの行為は魔王国、そして魔王様への明確な反逆と見なす。各自、両手両足と股間を抉った上で王都から追放とする」


 当たり前ですよね?


 魔王国の重要な公共事業をぐちゃぐちゃにしようとしたんですから。



「ちょ、ちょっとお待ちを!」


 なんかストップかかりましたけど……って、あなたは暴行者の種族代表の一人ですね?



「やらかしたことが、国に対する反逆であることは理解できます。ですが、未来ある若者にやり直しのチャンスをいただけませんでしょうか?」


 はぁ……あなたのいう『未来ある若者』とやらを助けるのならば、どれだけ自分たちが泥をかぶるか説明しろよ。

 

 口先だけの発言は無駄だぞ?


「その『未来ある若者』とやらは、他の『未来ある若者』たちの未来を潰そうとしたのだが? そのような輩にどのようなやり直しが期待できる? むしろ、逆恨みして郵便事業の関係者を皆殺しにするために動く未来しか想像できないが?」



 事実を返すと、慌てて言い訳する。


「そのようなことは起こりませんし、起こさせません!」


「どうやって?」


 なぜこのタイミングで視線を逸らす?


 できないの分かってるんだろう?



「そ、その、近衛騎士団の影人族部隊を監視するために御貸しいただければ……」


「自分たちでできないのなら、話になりません。それと、仮に監視して逆恨みしでかしたり『別の犯罪』が見つかった時に、あなたや種族として責任とれますか?」


「え?」


「具体的に言うと、この犯罪者たちと一緒に種族ごと処刑される覚悟はおありか?」



 ヒクッ×(対象の種族代表人数分)。



「どうなさいます? 自分や種族の破滅と彼の善意を天秤にかけてみますか?」


「代表! どうか俺を信じてくれ! 俺はやり直せる!」


 暴行犯の一人が叫ぶ!……が。



「ちなみに『別の犯罪」には軽犯罪も含まれますからね」


「え?」


 騒音や公然わいせつ、のぞきやゴミの不法投棄や悪戯とかですね。


 そんなので種族消滅したいですか?



「で、どうします? 本当にそこの暴行犯を一生監視できるのであれば、そして一生犯罪を犯させないという自信があるのなら、話を聞きましょう」


「……先ほどの発言を撤回させていただきます」


「そ、そんな! 代表! 俺を信じてくれないのか?!」


 いや、無理だろ?



 あなたの行動一つ一つに注意し、ビクビクしながら種族全体が苦しむ選択なんてできるはずがない。


 あなたは既に魔王様に対する反逆行為を行っているんだ。


 そんな奴が今後一切犯罪を犯さないなんて誰も言えない。


 むしろ、すぐに次の犯罪に走る可能性が高い。

 

 代表は無言で、暴行犯をこれ以上見ること無く着席した。



「ちなみに、他の方で同様の提案はありますか?」


 周囲を見ると、目を逸らしたり首を横に振ったりと『いや、無理!』というジェスチャーをする。


 まぁ当然だな。

 

 簡単に自分たちの種族を滅ぼすような奴らのために種族全体の命を賭ける馬鹿がどこにいる?

 


 代表たちを見た暴行犯は肩を落としたり暴れようとしたが、近衛騎士団がすぐに取り押さえた。



「無いようですね。では、牢屋に運んでください」


 サッサと荷物状態で運ばれる。


 

「三組目、ギッポン殿やドビー殿が行っていた賭け事に参加した者たち」


 金に汚い奴らですが、予想通り泣き入れてきました。


「わ、儂は知らなかったんだ。本当に暴行しているかなんて」


「ぼ、僕も知りませんでした」


 その他、同じようなことを言う者が多数。


 同じことしか言わないし、ひねりないんですかね?


 

「怯えているようですが、命は取りませんよ?」


 この一言で安堵した、が、こちらがそんな甘い対応すると思っているのかね?


 

「ですが、あなたたちはこの賭け事に対して協力してますね?」


 あぁ、自分は知らないとかほざく必要はない、時間の無駄だ。


 

「具体的にはドビー殿が暴行対象の配達員に白紙の手紙を忍ばせ、あなたたちに届く手紙として配達させる。途中配達員を捕まえ手紙を破棄すればミッション成功、捕まえられずあなたたちに手紙が届けばミッション失敗」


 驚愕の表情を浮かべてるが、このくらいの情報なら騎士団がドビー殿を軽く締め上げたら湯水のごとく出てきましたが?



「そういうわけで、知らなかったという言葉は通用しません。さて、処分ですが一つ目は罰金刑。そして二つ目は商売する権利の剥奪。これは、魔王国のどこであっても商売禁止です。最後三つ目、一家の王都もしくは境の街からの追放」


 罰金刑と言いましたが、実際は店や土地を含む金目の物全て没収となる。


 金なし、権利なし、人の多い街へ入ることもできない。


 つまり商人としては終わり、種族の集まる土地で商人以外の仕事に就くしかない。


 号泣する者もいたが、こいつらもまとめて牢屋へ。



「さて、最後に、モーリー殿」


 無言でこちらを見つめる。


 覚悟を決めていたのだろう、今までの奴らのような無様なことはせず、判決をすべて受け入れようとしているように見える。

 

 

「あなたは郵便事業関係者の立場を利用し、配達をごまかし王宮へ届けなければいけない郵便物を止め、情報の改ざんを行い結果として王宮、各種族まとめて混乱の渦に巻き込んだ」


「あぁ、言い回しは小難しいが、その通りだ。それについて言い訳するつもりはない」


 いや、そんな面倒な言い回しはしてないと思うぞ。


 こっちだって好きでこんなことしているわけではないんだが。


 

「これらの処分として、五年の労働刑となる。なお、労働場所は北の鉄鉱石採掘所を想定……していた」


「……していた?」


 お、気づいたか?



「ただし、あなたの行動の結果として郵便事業の不適切な運用や暴行、そして鼠人族を悪用した賭博行為等を取り締まることができた。それゆえ、先の処分に対して減刑を行う」


「ちょ、ちょっと待てよ!」


「?」


 なんで止めるんだ?


 さっさと済ませたいのに。



「減刑ってなんだよ!」


「減刑と言うのは、刑の執行を軽くするということだ」


「言葉の意味じゃねぇよ!」


 じゃあ、なんなんだよ。


 あまり進める邪魔をしないでくれ。



「いや、俺、犯罪者だろ?」


「そうだな」


「国に迷惑かけまくっただろ?」


「そのとおり。ケイン殿と一緒になってたっぷりと頭抱えさせてもらったよ」


 忙しくてサリアとの睦言だって短時間で終わらせなければ睡眠時間がとれなくなってしまった。

 

 正直犯罪よりもこちらの方が腹立たしいのだが。


「なら、そのまま労働刑五年でいいじゃねぇか!」


 は~……とため息しか出てこない。

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