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問題の推理

◆◇◇◇


 いつも通り黙ったところで、タイバーン殿が戻って来た。


 M・B・Cを踊り終えた後のようなイイ笑顔をしているということは……。



「副宰相殿、ご想像通りの結果でした。彼らはギッポン殿と郵便事業のトップであるドビー殿から提案を受け、指示された期間の中で鼠人族の中でも郵便事業関係者にターゲットを絞って暴行を行っておりました」


 ギッポン殿はバレて悔しそうな表情を浮かべているが――



 ま だ だ ぞ ?

 

 

「タイバーン殿、この後郵便事業のトップ――ドビーでしたか?――を捕えてください。その後、彼らが誰から金を巻き上げていたのか、誰が協力していたのかじっくり調査願います」


 うん、タイバーン殿イイ笑顔ですね。


 楽しそうで何よりです。



「そして、ケイン殿。部下に郵便事業の仕事場とギッポン殿、ドビー殿の席や家からこの件に繋がる情報を集めるよう指示願います。近衛第一部隊と情報部隊にお願いすればよろしいでしょう」


「わがった」


 ケインもかなり怒ってますね。



 この後、議員への説明や残る案件のやり取り等済ませてこの日の会議は終了となった。


 いつものメンバーが集まったところで、


「ねぇ、あなた、ちょっとわからないところがあるのだけれど?」


 おやサリアよ、何かな?



「あなたとしてはこの事件をどう推測しているの?」


「うーん、現時点ではわたしもよく分かっていないんだ。ただ……」


「ただ?」


「まずその一、事件の根幹はギッポン殿とドビー殿が考えたんだろうな。ただ、その理由までは分からない」


 そこは、ケインやタイバーン殿が調査中なので、割愛。



「その二、事件になる程の問題行動なのに、彼らが実施しようとしたのは、それだけ利があるのだろうと考えている。例えば、莫大な金や邪魔者の処分とかね?」


 利益と罰則を比較して、利益がかなり大きかったんだろうね。


 内容から罰則は死刑や一生鉱山送りでもおかしくないけど、それが霞むくらいなのでしょう。



「その三、いくら代表であっても金を湯水のごとく使うことはできない。ただ、協力者に支払うことを考えるとかなり金がないと実行できない」


 暴行を依頼した者たちだってただで暴行するわけではないからね。


 仕事に対する報酬は必須だよ。



「このことから暴行メインではなく、『暴行をさせて金を稼ぐのが目的なのではないか?』と考えた」


 それなら、郵便事業の金をちょろまかすよりかは王宮に見つからないのでは?


 なんせ、鼠人族の代表が王宮側に情報が流れないようにしているのだから。


 それに、暴行を加えたのは他種族。


 自分たちは被害者っぽくしておけばこちらに被害は及ばない。



「で、結論は?」


「賭博感覚なんじゃないかな? カジノとか……」


「はぁ?」


 サリアよ、二人きりならともかく、皆の居る場でその顔はいけない。


 近衛の――今日は第二部隊のガルム隊長か――がショック受けてるぞ。



「胴元がギッポン殿とドビー殿。出走するのは暴行やらかした奴ら。ルールは郵便事業関係の鼠人族を一人でも多く叩き潰せば勝ち。金を賭ける者は……王都に住んでいる金持ちや他部族の代表もやってるかも」


「いや、ちょっと待ってよ。それって……」


 サリアが困惑しているが、可能性はあるんだよね。


「推測の域を出ないけど、先の三つの推測をクリア可能そうなのを考えてみた。ただ、これが当たりの場合かなり厄介な事件に発展するけどね」



 結構ショックな内容だったのか、皆黙ってしまった。


 ただ、ガルム隊長だけはわたしの推測に対して質問してくる。


「副宰相殿、今の話が当たっていた場合、王都内でも捕まる者が出てくると?」


 惜しぃ。

 

 言いたいことはわかるが、ちょっと足りない。


「最悪の場合、王都と境の街で捕まる者が大量に出てくるだろうね。人間も含めて」


 ざわっ。


 

「ちょ、境の街って……」


「え、人間もですか?」


 サリアとガルム隊長が驚き慌てているが、この可能性はそれなりにあるぞ?



「鼠人族が郵便事業に関わるのは二つの街だけ。ならば、そのどちらも関わる可能性は無いとはいえないよね?」


 まぁ、そこまで問題が広まっていないことを祈るのみだけどさ。

 

「それに、金になるなら犯罪を犯すのも厭わないなんて種族関係なしにいるでしょ?」


 皆納得してくれたが、同時にとても嫌な表情に変わった。

 

 まぁそうだろうね。

 

 わたしだってこんな想像したくなかったよ。



 次の日、近衛騎士団、ケイン子飼いの文官たちが集めた情報からこの度の犯罪について報告がなされ、裁判を行うことになった。



 ケインの方で一通り今回の一連の犯罪の説明を行う。


「まず、今回の事件の根幹として、鼠人族代表ギッポン殿と鼠人族郵便事業トップのドビー殿がこの件を検討、実施してるす。理由は二づ。一づ目は自分たちに対抗する勢力の力を削ぐこと。二づ目は金の荒稼ぎ」


 聞いている議員たち、そして犯罪者側の大半が初めて聞く情報に驚きを隠せない。



「鼠人族内でギッポン殿に賛同する勢力と反対する勢力があり、現在賛同勢力が優勢となってるす。なお、ドビー殿も賛同勢力側ですね」


 まぁ、政治的なものは全員同じ方向を向くのは難しいから、これは理解できる。


「この二づを達成するために、まず郵便事業にドビー殿をトップに据え、管理職は賛同勢力から、その他のメンバーは反対勢力から人を集めてるす」


 聞いている議員から困惑した声が聞こえる。


 まぁ、全て賛同勢力にした方が進めやすいから当然なんだが。



「そして、並行して王都の暇を持て余していた獣人族の者たち――チーマーとでも言うべが――に声をかけ、郵便事業の担当者に対して嫌がらせするよう求めるす。その指示内容は『殺さね程度さ痛めづげるごど』、『金を持っていれば奪うごど』の二づ」


 あちこちから『おいおい』『冗談だろ』等の声が聞こえてくる。


 冗談だったらどんだけよかったか……。

 

 

「この時点での狙いは、『反対勢力からも人を雇ってけだども、まともに仕事がでぎねのが』と反対勢力が無能である証拠どするごど。実際、賛同勢力と反対勢力は元々同じぐらいだったのが、この件により反対勢力が弱体化してるす」


 うん、『うわぁ』なんてヒく声が聞こえるが、気持ちはわかる。



「次に、金に汚い性格の人物を数人集め、数チームで鼠人族を襲い一番襲う回数の多かったチームを当てるゲームの提案するす。チームごとに名称を用意し、オッズを付け、一位を選んだ方には莫大な金が入る。そして、胴元であるギッポン殿やドビー殿にも当然金が入る」


 ざわ……ざわ……。



「金に目の眩んだ者たちも参加し始めた頃、モーリー殿がお二人に暴行されでらごど報告するす。当然適当にあしらうすが、誰も予想しねがった行動さ出るす」


 まぁ、だれも想像しないだろうな、自爆特攻なんて。


「それがモーリー殿一人で王宮を巻ぎ込むごど。結果、王宮側にも多々問題が生じ、調査に乗り出し今さ至っておるす。なお、この件は王都のみの問題であり、境の街では行われでいねがったごどは確認済みだす」



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