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郵便事業の意義について

◆◇◇◇


「流石に、こごまでだどなぁ」


 ケインと二人で相談すると、ギッポン殿がモーリー殿に殴りかかろうとする。



「お、お前が愚かなことしなければこんなことにはならなかったのに!」


「いや、逆だぞ?」


「え?」


 わたしがギッポン殿に指摘すると、困惑されてしまったようで拳を振りかぶったまま固まってしまった。


 え、なぜ困惑するんだ?


「この件について、モーリー殿が犯罪を犯したことは事実だ」


 ギッポン殿がなんか『そうだそうだ』と言わんばかりにふんぞり返っているが、本気で理解していないのか?


「だが、鼠人族側の問題の根源は他種族からの暴力行為があったことをこの件を会議に諮らなかったことだ」


 なんか、顎が外れたかのようにポッカーンとしているが、なぜそんなに驚く?


「分かりやすく言えば、魔王国側に隠し事をしたと言うことだからな。代表、郵便事業のトップは処分対象となる」


「え? え?」


 分からんのか?


 そんな難しいこと言ってないんだが。



「事業に対する問題を魔王様に隠そうとしましたよね? それに、状況から脅されて手紙を先に見られた挙句、中身を入れ替えられることも考えられますね」


 ギッポン殿、顔真っ青だが?



「王宮宛の手紙にそのような工作されると、国の治世に影響するのですが?」


「そ、そんな程度で影響など!」


 そんな程度じゃねぇんだよ!


 情報が届かない、情報を簡単に改ざんできるなんてのは大問題だろうが!


 そこまで細かく説明しないと分からんのか?



「例えば、『流行り病が!』という連絡を握りつぶしたら、その集落は滅びますね」


 こっちは届かないパターンだな。


「それと、『山賊がとある道を通る商人を殺している』という連絡を『問題なし』にすり替えられたら、騎士団を送れず被害は拡大しますね。これでも影響ないと?」


 そしてこちらは改ざんパターン。

 

 どう考えても国に多大な影響を及ぼすだろうに……。


 ちなみに、ギッポン殿はまた黙っちゃいました。



「モーリー殿、あなたが知っている範囲でかまわんが、どの種族の者が邪魔した?」


 いくつかの戦闘系獣人族を挙げてくれる……が、そんなにいるの?


 それぞれの獣人族代表を見ると、皆顔を青ざめている。


 まぁ、当然だな。



「そいつら捕まえるのに協力するのなら減刑するが?」


「減刑は不要だが、捕まえるのに協力するのはいいぞ。俺がやらかしたことは許されることではないのは理解しているしな」


 うーん、なんというか今の代表よりまともだな。



「刑については後程検討するが、まずさっさと捕まえましょう。タイバーン殿」


「お任せください。モーリー殿、一緒にお越しください」


 タイバーン殿に任せておけば即刻捕えられるだろう。


 わたしたちは、内部の掃除だな。



「さて、先ほどモーリー殿が報告してくれた部族についてですが、結果が出るまで王宮から出ること禁じます。また、鼠人族代表も同様です」


 戦闘系獣人族は事態を理解できてるのか、おとなしく受け入れる。



 だが、鼠人族の代表は納得いかないようで全力で反対してきた。


「なぜ、私まで? こちらは被害者なんですぞ!」


 は?

 

 なに寝言抜かしてるんだ?

 

 サリアとの睦言(ピロートーク)ならともかく、貴様の戯言なんぞ聞く理由は無い!



「あなたは容疑者として扱われます。ご自分の種族の民を暴行した者たちから守ろうとしなかった」


「私たちがかなうはずないじゃないですか!」


「ならなぜ、この会議で諮らなかった? 緊急の会議を招集してこのことを議題に挙げれば済む話だろ?」


 ほら、黙る。


 都合悪いとすぐ黙るな、こいつ。



 代表なんてのは、民を守らないのなら価値はないのだよ。


 国に頼って守るのなら評価されるが、何もしなければ処罰されて当たり前だ。



「あの、一つ確認してもよろしいかしら?」


 ギッポンのふざけた発言を全力で否定していたところ、全くこの問題に関係のない部族から質問が来た。


「先ほどのモーリー殿について気になったのですけれど、なぜ簡単に副宰相殿は信用したのでしょう?」


 ……?


 言ってることが分からず首をひねるが……あぁ、そういうことか。



「その答えは『まだ、信用していません。ただし、否定する気はありません』になりますね」


「はぁ?」


 ん? 分かりにくかったか?


「まず、相手の言い分を聞く。そして、それが真実であるか調べる。その後、真実であれば初めて信用することを検討する。これが基本と考えております」


「はぁ」


「そして、モーリー殿の言い分を聞き、真実であるかの調査をタイバーン殿にお願いしました。なので、現在調査中の状態という認識です」


 単純に相手を信用してはいけないが、相手の発言を否定から入るのはもっと問題だ。


 なんせ、『お前の発言は一切信用できない』と言ってるのと同じだから。


 発言に疑問を持つのならわかるが、全否定からだと話が進まないし報告してもらえなくなる。



「まぁ、ギッポン殿から『暴行あったことを重要と思っていなかった』という発言もあったことですし、ほぼ事実を言ってると考えておりますがね」



 その後、会議自体はいったん解散し、近衛騎士団からの情報待ちとなった。



 明けて次の日。


 昨日より雨足が弱くなってきた。


 まだまだ湿気の多い会議場にてタイバーン殿から昨日の調査報告があった。



「モーリー殿を含め被害者十名程にばれないように護衛を付けて街を歩いていただいた所、五ヶ所で襲撃があり計二十七名捕獲いたしました。なお、事前に情報をいただいた種族で間違いありませんでした」


 モーリー殿が明言していた種族の代表はため息ついたり頭抱えたりと忙しそうだ。



「罪人共を締め上げたところ、どうも王都の跳ねっ帰り共が複数のチームを作って、互いに競い合ってたようです」


 競う?


 何を競うんだ?

 

 ……え、もしかして?


「競うって、まさが?」


「ええ、郵便事業関係者をどれだけ邪魔できるか、金銭を輸送しているのを見つけ、奪ったものは高得点とか」


 ケインの質問にタイバーン殿は淡々と答える……答えているように見せる。


 声は淡々としている。

 

 でも、目があまりにもヤバい。

 

 怒りの炎が宿っているようだ。

 

 古代エルフにこの状態を『ジャイアントスター』と呼ばれていたようだ。


 なんでも『ビッグリーグボール』とやらを発動し敵を殲滅するとか。

 

 世界でも滅ぼすつもりなのだろうか?

 


 ……魔王国に対して喧嘩売っているとしか思えんし、そのような輩をタイバーン殿が許すわけがない。

 

 こいつらの未来は想像したくないな……まぁ最後は挽肉だけど。


 

 わたしはちょっと気になることがあるのでタイバーン殿に質問する。

 

「タイバーン殿、今回見つけたのは下っ端ですか? それとも?」


「チームメンバーほぼすべて確保しましたので、上の者もおりますよ」


「ちょっと、その者たちに聞いていただきたいことがあるのですが」


 タイバーン殿に聞きたいことを囁くと、とてもイイ笑顔を見せて襲撃者を問い詰めに行った。



「なぜ、問い詰めに行く必要がある! さっさと襲撃者たちを処罰すればよいではないか!」


 ギッポン殿が大騒ぎするが、そういうわけにはいかないんですよねぇ。



「まず、単純に複数のチームが競い合うとして、審判役って誰なんでしょうね?」


「そ、そんなのどうでも……」


「次に、複数のチームに伝手を作って、魔王国に喧嘩売る行為をやらせるのに、どんな優勝賞品を用意したんでしょうね?」


「し、知る訳……」


「そして、競い合うと言うことはそれだけ魔王国側にバレやすくなる。それを防ぐのにどうしたのでしょうね?」


「……」


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