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蛇人族(常識人)の憤慨と郵便事業の崩壊

◆◇◇◇


 色々な訳わからん事態があったが、本日魔王国代表定例会議の開催日。


 代表たちも王宮側も皆お疲れのようだが、やはり連絡不行き届きが影響しているのか?


 偶然かもしれんが前回と同様に天気も悪く小雨がぱらつき湿気が会議場にこもっている。


 何と言うか、王宮側も代表側も仕事したくないという雰囲気がヒシヒシと感じてしまう。



 いつも通り魔王様の宣誓後、そのままケインにパスして始まった。


「えー、本来このまま案件対応になるのんだども、今回は王宮側で大きな人事変更がござったがら、先行して報告させでいだだぎます。では、タイバーン殿、お願いするす」



 タイバーン殿が起立し説明を始める。


 妙にイイ笑顔なんですが……とりあえず落ち着け?


「人事についてですが、近衛騎士団にて変更となります。今まで空席だった副団長の席に虎人族のジャシーリ殿が着任することとなりました。ジャシーリ副団長、皆様へご挨拶を」



 ざわざわっ!


 

 まぁ、当然驚きますよね。


 我々も最初聞いたときびっくりしましたし。

 

 でも、実力を考えると納得というか……。

 

「虎人族、ジャシーリと申す。副団長と言う重責を賜り責任の重さを痛感しておるところです。魔王国の最後の守り手として老骨朽ち果てるまで戦う所存。よろしくお頼み申す」


 とてもとてもイイ笑顔で挨拶されてますねぇ。


 あなたもタイバーン殿側の人でしたか……。



「ちょっとお待ちを!」


 蛇人族の代表が叫ぶ。


 

「ジャシーリ殿が虎人族の先代代表としてこの会議に最後に参加されてから本日まであまりにも早すぎやしないか?」


 アア、ウン、ソウデスネ。


「それに、私の記憶が確かならば、騎士団に入ってもいきなり近衛にはなれないはずだが?」


 ホント、オッシャルトオリデス。

 

 わたしたちも同意見ですよ、蛇人族の代表殿。


 ……ジャシーリ殿の事でなければ。


 

 挙手し、わたしの方から説明を始める。


「今の発言、とてもよくわかります。単純に『ジャシーリ殿を副団長にした』だけでは、あなたのように規則に反しているように見えてしまう可能性はあります」


 蛇人族の代表はウンウンとうなずく。

 

 ……勘違いしているようだが、わたしはあなたに共感してないぞ?

 

 ……あなたを哀れに思っているんだぞ?


「まず今のタイバーン殿の発言についての是非の前に、互いの認識合わせのために近衛騎士になるための規則を説明させていただきます」


 たぶん、この辺は代表側も理解できるだろう。

 

「いきなり近衛になることは規則上できません。最初は近衛以外の各騎士団――例えば獣人騎士団、翼人騎士団など――の中から自分の種族に近い騎士団に属するのが基本となります。ジャシーリ殿も最初獣人騎士団に属してます」


『あぁ』『だろうなぁ』という声が他の代表たちから聞こえる。


 うん、この辺りは普通に理解しやすい範囲なんだ。

 

 ここまでは蛇人族側も理解しているようで、ウンウンと首肯している。


「そして、それぞれの騎士団で実力を見極め、十分な実力があると認められた場合に近衛騎士団への入団試験を行います。そこで試験合格したところで近衛騎士として扱われます。さて……」


 覚悟はいいかな、代表たち。

 

 イカれた世界を教えてやろう。

 

「今回のジャシーリ殿の場合ですが、獣人騎士団の試験を入団初日に受けておりますが、そこで現在の獣人騎士団団長を叩きのめし即日近衛騎士団の試験を受けられる条件を整えられました」


 ざわざわっ!


 蛇人族側が目が飛び出そうなくらい驚いているが、気持ちはわかる。


 ちなみに、現騎士団長は瞬殺されてます。

 

 あ、いや、死んではいないのですが……。

 

 少々心に傷を負ったかもしれません。


 

「そのため、すぐに近衛騎士団の入団試験を行いまして、こちらでも試験担当者を瞬殺」


 ちなみに、この時の試験担当者は第三部隊のインミラー嬢。

 

 試験後、顔を青くして同じ部隊で不死族-従種-騎士属のジュートダスター副隊長に泣きついていた。

 

 ……確かサリアからこの二人は付き合う一歩手前という情報が……。

 

 これはインミラー嬢が押し倒す気か?

 

 サリアに情報収集を頼んでおくか。


「この時点で近衛騎士団入団決定しておりますが、その後近衛騎士団の隊長クラス三名と戦いまして、こちらも鎧袖一触」


 蛇人族、ぽかーんとした顔してます。

 

 普通、あの隊長クラス三名を倒せるなんてまず無理なんですよね。

 

 可能なのはタイバーン殿しかいないと認識されておりました……今までは。

 

「なお、その後試験とは別にタイバーン殿がジャシーリ殿と三本勝負を行い、二勝一敗でタイバーン殿の辛勝と言う話も聞いております」


 蛇人族だけでなく代表全てが驚愕している。


 タイバーン殿が敗北を経験したのはいつ振りか、正直私も思い出せないくらいだ。



「と言うわけですので、早すぎると思う気持ちはとても理解できますが、正式な流れに沿って近衛騎士団入りしております。なので、規則上は何も問題ありません」


 ここまで正式な手順で成果を出されたてはいくら非常識であっても近衛入りは可能です。


「また、タイバーン殿に一勝できる人材は千年に一人いるかレベルのとてつもなく貴重な人材であり、全員一致で副団長への就任が決まりました」


「アッハイ。リョウカイデス……」


 蛇人族の代表は死んだ目をして返答してきた。


 まぁこれはあまりにも特殊すぎるので、気にしないでいいよ。


 物凄く気持ちはわかるし。


 周りの近衛騎士たちからも哀れみの視線が……常識を打ち砕かれた仲間を見つけたような雰囲気を纏っているのがなんともはや。

 

 

 ジャシーリ殿の副団長就任も終わり、本来の話が始まる。


「今回の案件は各部族、各王宮部署から大量に届いでおるすが、調べだどごろ二づにまどまった。なお、この後の話し合いによっては一つにまとまる可能性もあるど認識しておるす」


 ざわ……ざわ……。


 

「まず一づ目、王宮側文官の過重労働について、そして二づ目、各部族と王宮の連絡不行き届き。これらについで精査を始めるす」


 まず、一つ目について文官たちを召喚し確認していくと、元々定例会議前は忙しいのは今までも同じだが、他種族からの定期報告や案件が届くのが結構ギリギリで一斉に届いたことで文官たちが悲鳴を上げたと言うのが真相のようだ。


 ただ数か月前から報告が止まっている、もしくは報告が歯抜けで届くというのがあり、処理能力の決壊が起こり得る土壌ができていたという認識。

 

 一応報告停止もしくは漏れの場合報告元に連絡をするのだが、その回答も届かない、もしくはかなり遅れて届くらしい。



 そして、二つ目について各部族側の認識ではちゃんと定期報告も案件依頼も期限に間に合うように出しているのに、王宮側からの応答が無いと言うのが言い分のようだ。


 また、案件を出してきた部族は(クラーケンのような)元々出席できない種族を除き全てから出ていることから、特定部族のみと言うわけではないようだ。



 現状、魔王国内では郵便事業として通常の部族間、もしくは王都や境の街への手紙や小荷物の輸送はケンタウロス族に、王都の中と境の街の中については鼠人族にお願いしている。


 となると……。


 順番に確認していくか。


「ケンタウロス族代表、バハーグザ殿。魔王国内の定期郵便はそちらの部族にお願いしているが、送り元や送り先の情報はあるか?」


「ありますよ。先に部族側の意見を申された方々の分だけではありますが、王都まで届けたことは確認取れております」


 問題なしか……。


 あれ?


 まだコメントあるみたい?



 合図をすると、バハーグザ殿は説明を続ける。


「なお、輸送期間は通常通りでしたので、途中で邪魔が入った等は無いと言う認識です。また、受領タイミングをざっと見る限り一斉に届いたというほどでは無いように思えます。まぁ、元々期限ぎりぎりの提出が多いのは事実ですが、今までと変わっているようには見受けられません」


 んん?


 ってことは王都までは予定通りに届いているってこと?


 ということは鼠人族の方?

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