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まおうさまのおしごと


◆◇◇◇

 

 さて話を戻すが、夫婦が自発的にかけた呪いは『自分たちの魔力を集め蓄積し続ける。代わりに醜悪でエルフには見えないような人の姿となること』。



 姿を醜くするのに必要な魔力ほんの僅かで済む。


 大半の魔力は姿を維持するための余剰魔力として蓄積することとなる。


 まぁ、その分醜悪さが増すのだが。



 それを外部魔力蓄積装置として利用する。



 元々魔力の大きいエルフではあるが、それでも一人の体にため込める魔力には限りがある。


 それなら『呪い』という形で蓄積、必要に応じて解除して余剰魔力を用いる。



 それに加え、呪い解除後は蓄積した魔力が霧散されるのを『ヴィータグラッサ(魔力吸収)』を使い、短時間ではあるが体内に維持し次の魔術にその魔力を利用する。



「「341236421BC」」


「「イゾラート ディティーニャ(瘴気隔離)」」



 瘴気を仕切る魔術の壁を作り上げ、外に被害を出さないよう囲い込む。


 一気に魔力を放出する形になるので少々クラっとするが歯を食いしばり壁を維持する。

 

 サリアは……同じように急激な魔力減少に耐えている。

 

 ああ……美しい。

 

 気丈にも苦痛に耐え、それでも前を向き凛とした姿を見ると……勃ってしまうではないか!

 

 古代エルフの言葉で『これだけでご飯三杯はイケる』だったか?

 

『ご飯』というものがよく分からんが三杯ということは食事か酒の類だろう。

 

 確かにサリアを見ているだけで胸がいっぱいになり、それだけで生きていられるのではないかと思うことも多々ある。

 

 この幸せをご先祖は経験していたのであろう。

 

 

 

 ……などと、妄想に耽溺しても仕方がないので、魔王様に報告を行う。

 

「魔王様、こちらの準備完了です。あとはお願いします」


 わたしが連絡すると、オフィーリアとともにスターフィード殿に乗り瘴気の上に移動する。


 

「魔王様、準備はいいですかぁ?」


「いつでもいいよ」


「ではぁ、いっきま~す♡」



 フン!


 ウッラアアアァァァ!!



 オフィーリアは乙女が言うような言葉とは到底思えない叫び声をあげ、簡易玉座におられる魔王様をまとめて瘴気の上に投げ捨てる!

 

「ウッヒョ~!!」



 捨てられた魔王様は瘴気に触れそうになると、みるみる大きくなり私たち夫婦が作った壁ぎりぎりまで体を広げ瘴気も森も山にあるものは全て喰らい尽くす。

 

 当然、魔王様の影響範囲ははげ山となる。

 

 毎度のことながら自然破壊だよな、これ。

 

 

 数分程度で魔王様は喰らった瘴気を吸収し終え徐々に小さくなっていく。


 私たちは『瘴気隔離』を解除し、オフィーリアはスターフィード殿から降り魔王様の元へと向かう。

 

 オフィーリア、ステイ!

 

 まだ早い!

 

 もう少しで縮小完了するから!

 

 今のサイズだと押しつぶされるから!

 

 

 魔王様が普段のサイズまで縮小したところで、オフィーリアが魔王様を拾う。


「魔王様ぁ、お疲れさまでしたぁ♡」



 慈母のような笑顔で出迎え、魔王様もオフィーリアの胸にすり寄る。


 いや、ほんとお疲れさまでした。



 一応、瘴気監視の魔道具を使って周囲の瘴気が完全に消えたことを確認して村に戻る。

 

 ……腹減った。


 まぁ、もう少しだ。

 

 我慢しようか。

 


 無事村に到着後、兵たちにこの後の指示を伝える為、兵士長を呼ぶ。


「魔王様のお力で瘴気は消えた。なので、住人が村に戻れるよう進めてくれ。それと、瘴気が発生したあたりに植樹を行い、原状復帰に努めてほしい」


「はっ、かしこまりました。それと、その……ちょっとよろしいでしょうか?」


 猿人族の兵士長がモジモジ&揉み手しながら発言を求めてくる。


 かわいいとか言ってほしいのだろうか?


 わたしにはサリアがいるので勘弁してほしい。

 

 まぁそれ以前に男性は流石に無理なのだが。

 


「どうした?」


「魔王様自ら、お褒めのお言葉を兵たちにお願いできないかと……」


「はぁ?」


 何言ってんの、こいつ?


 そんなくだらないことを怪しい行動取りながら言うの?

 

 兵士長レベルならそんな発言出てくるはずが無いんだが……。

 


「一応確認なのだが、君は魔王様がどのようにして瘴気を消しているのか理解しているか?」


「魔王様の体内に吸収されているのでは?」


 そりゃそうだが、それ以外にあるだろう?



「では、そのデメリットは? 軍にいるものは皆知っていなければならないはずだが?」


「え?」


 ……。


 ……え~っと、本気で知らないの?


 兵になる時点で瘴気対応した際に魔王様がどうなるかの説明はされているはずだし、兵士長なら知ってて当然なんだが。



「はぁ……まず、この位置からでも聞こえるな。魔王様がオフィーリア嬢と何を話しているか耳を澄ませてみろ。その後答えを説明しよう」


「は? はぁ、かしこまりました」


 困惑しつつも盗み聞きをし始めた兵士長は、聞こえてくる内容に愕然とした顔になる。



 ……



「ママ~、まだ帰らないの? ボクもうおなかぺっこぺこだよぅ」


「あらあら、ぼくちゃんったらぁ♡。もう少し待っていてねぇ♡。そうねぇ、その間飴ちゃんはどうかしらぁ?」


「え、いいの? ママ、ありがとう! 大好き!」


「ええ、ママも大好きよぉ♡」



 ……



「え、ま、ママ、ですか?」


「魔王様は瘴気を喰らい消滅させると言う素晴らしい能力をお持ちだ。ただし、デメリットとして精神が幼くなるのだ。推測だが今回は五歳程度の子供になっておられる」


 兵士長はぽか~んとして魔王様を見つめている。

 

 本当に……これ、お前の立場なら知ってないと大問題なんだぞ?


「数日で本来の精神まで戻れるがね。さて、この状態でお褒めの言葉を賜るのは難しいと思わんか? 記憶も精神に引きずられるので、たぶん褒めるべきものが何かも分からないと思うぞ」


「い、いや、でも……」


 それでも何とかならないかと粘ってくるが――


「それに加えて、兵になる時点で魔王様についての指導もされているはずだが、君は学ばなかったのかい? 瘴気を消した後の魔王様に何かを求めることは軍として禁じられているはずだが?」


 ――バッサリ切って捨てる。


「えっ、あっ、その……」


 兵士長は視線を逸らす。

 

 そうかそうか、理解したうえで粘っていたのか。


「軍規に反する行動を魔王様に願う気にはなれんよ。聞かなかったことにするので、以降同じような行動は慎むように」


「……はい」


 兵士長は不満を隠しつつ承諾しようと努力しているみたいだが、わたしから見ると全く隠しきれていないぞ。


 反省も特にしていないようだし、王宮に戻ったら別部署に移すことを提案した方がよさそうだ。


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