イカ臭い合コン話
◆◇◇◇
「で、あなたたちは何を暴れているのですか? 他種族からクレームが上がっているのだが?」
こちらが再度問うと表情がニヤリとし(たように見える。イカの表情なんて読み取る技術は持ってない)――
「合コンっす!」
――と元気に回答しくさりやがった、こんちくしょう。
……あぁ、ちょっとわたしも落ち着かなければ。
「って、合コンて、あの合コン?」
(妻一筋なので)行ったことはないけど、確か男女が集まって結婚相手を探すための集まりだった記憶が……。
「そう、それっす! 極地方のお嬢様たちと話して、こっちで自然の中でアクティビティを楽しもうかと」
……アクティビティ?
自然体験イベントってやつ?
でも、この辺りイベントにできる程のネタってないでしょうに。
「あ~、陸の方ではそうなんでしょうけど、海の者にはここはそれなりに楽しめる場所なんすよ。近場に浅瀬があり、ちょっと離れると海溝があり、産卵にちょうどいい場所――流木とか――もありとナニするにもちょうどいいっすよ」
ヤリ目的かよ!
で、女性陣は?
女性っぽい声は聞こえないけど?
「……もしかして、男×男の合コン?」
「違いますって! ちゃんと男×女の合コンっす! 女性陣もホラ……って、あれ?」
身体がイカだからわたしたちでは見た目で判断できないが……。
「声聞く限り女性いないんじゃないの? やっぱり、男×男か?」
「だから違いますって! でも、どこ行ったんだ?」
連れてきた女性を探そうとしているが、まずはこちらの質問に答えてもらおうか。
「で、合コンから喧嘩に発展し他種族に迷惑かけた理由は?」
「……喧嘩については、女性の奪い合いっす。他種族への迷惑ってのはたぶん喧嘩の飛び火かと思うっす」
そこは理解しているんだ。
なら、壊す前に留まればよかったのになぁ。
「そのせいで君たちの言うアクティビティは壊滅状態なんじゃないのかな?」
「え、まっさかぁw」
笑う処じゃないんだがな。
よく周りを見てみれば笑えないと思うんだが?
「暴れたおかげで浅瀬はぐちゃぐちゃ、その辺りの生物も追い払われた形になるな」
「「「うぐっ!」」」
「産卵場所は、流木等必要なものが全て破壊。正直、ここで産めるのかね?」
「「「ぐふっ!」」」
「むしろ、女性陣が――本当にいたとして――ここにいないということは退避したくなるほど君たちが愚かな行動をしたんじゃないの?」
「「「げはぁ!」」」
「さて、ここは君たちだけでなく他種族の者たちにとっても大事な、生活に直結する場所なのだが、これで壊滅と言わない理由を言ってみてくれ」
現状を説明すると、ヤリ―を始め合コン参加者は顔を引きつらせる。
まぁ、予想通り黙ってしまったが、こちらとしては見逃すわけにもいかない。
「さて、被害について理解したと考えてよろしいか?」
「はい……」
まぁ、反省しているようだが、それだけでは済まないんでね。
「まず、他種族に謝罪することだ。君たちのせいで漁業が壊滅状態なのだから、当然だな?」
「「「はいっ!」」」
「その後については他種族側と相談になるが、復興に協力してもらいたい」
「「「うぃっす!」」」
皆、返事はいいんだがなぁ。
その後、クラーケンたちを連れて猫人族、魚人族、人魚族の族長を呼んできてもらい、事態の説明を行う。
何故か、各族長は「合コンで……」と聞くと、妙に納得しているが……。
お前らも合コンで嫁GETしたのか?
ん? 違う? 結婚しても指輪隠してお楽しみ?
特に魚人族長、ヤリーに何教えてるんだ?
合コン必勝法?
止めとけ止めとけ。
相手のお嬢さんたちはそういう飢えた男たちを餌としてしか見てなさそうだぞ。
無言でバックレてる時点でお前らに関心なさそうだしなぁ。
ただ飯食いについてきただけなんじゃないの?
なお、この時サリアやオフィーリア、そしてそれぞれの族長の奥さんたちが絶対零度の視線で貫いていたのをここに記しておく。
……奥さんたちに引っかかれ噛みつかれ、明日は各族長とも傷だらけだろうな。
「とりあえず合コンの話は置いておいて、漁場の復興についてだ」
微妙に桃色な反応を見せた参加者を現実に呼び戻す。
「クラーケン側にも復興に協力してもらう。基本力仕事だな」
「うぃっす! うちらがやらかしちまった分、ちゃんと直させてもらいまっす!」
三つの種族からも不満はない様だ。
「で、それが終わったらクラーケン側の産卵場所の整備に協力してほしい。といっても皆さんには木材の供出をお願いして、クラーケン側で必要な環境を作り出す形になる」
こちらも、特に問題なく受け入れられる。
合コンが紡いだ絆か?
王都のスイーツ専門店で売ってた『クレイプ』(だったか?)より薄そうな絆にしか見えないんだが。
簡単に破れそうなんだよなぁ。