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おいでませバルタキリヤ

四章開始です。

◆◇◇◇


 今日も今日とて執務室でお仕事をしていると――


「失礼します!」


 ――近衛騎士と伝令部隊のハーピーが乱入してくる。


 ん?

 

 来た近衛騎士は第三部隊のインミラー嬢だな。


 で、だ。



 イ ン ミ ラ ー 嬢 、 な ぜ 顔 を 赤 ら め る ?



 期待か?

 

『二泊三日』期待しとんのか?


「瘴気発生の可能性ありと連絡ありました! 瘴気の量は小程度、場所は王国南部バルタキリヤの街の近く、王都から南へ三百五十キロ程度になります!」


 ハーピーの報告に弛緩と桃色の空気が広がったところ、インミラー嬢が別件の報告をしてきた。



「重ねて報告します。バルタキリヤの街を含めた周辺地域でクラーケンが群れを成して暴れていると情報が入りました。おかげで周辺の地域で漁ができないと大問題となっております」


「「「え゛?」」」


 流石に桃色空気を引っ込め、皆真顔になる。


 ちょうど部屋にいたチェリーさんに頼んで大急ぎで魔王様達を呼んでもらう。



 確か、バルタキリヤって、テーブルサンゴの群生地じゃなかったっけ?


 で、陸側が果物生産、海側が漁業が盛んだったはず。


 何も考えずにクラーケンが暴れたとなると、海側ボロボロ、瘴気のおかげで陸側ズタズタ?


 マジかよ……最悪じゃないか。



 ケインが情報整理を始めるが、流石に困惑しているようだ。


「いつも通り、王宮はおいが残るす。ただ、二つの問題の処理についでは……」


 サリアに視線を送ると頷いてくれた。


 仕方ない、提案するか。



「まず、瘴気は即刻対応する必要がありますので、急ぎ魔王様達と一緒に移動します。そこで浄化終了後に魔王様達は王宮へ、わたしたち夫婦はバルタキリヤの街に向かい、クラーケンを黙らせる方向で進めたいと思います」


「瘴気発生場所から街までどいだげかがるがわがるがね?」


 ケインが伝令のハーピーに聞くと


「荷馬車で二日。伝令用の馬なら一日かからず。ゆっくり空飛べば二時間程度でしょうか」


 そんな近いんだ。

 

 なら、わたしたちは瘴気発生の現地で馬二頭用意してもらいましょう。

 

 んで、魔王様たちは王都へ、わたしたちはバルタキリヤへ向かえばよろしい。

 

 馬は現地の部隊に引き取ってもらえばいいし。

 


 方向性を話し合っていると、魔王様とオフィーリアがやってきた。


 事態の説明をすると、オフィーリアが珍しく提案してくる。


「瘴気の量が小なら、魔王様も幼児化しないと思いますし、そのまま四人でバルタキリヤに向かってクラーケンの鎮圧に向かってもいいのでは? 報告はスターフィード殿に伝令してもらえれば」


 まあそれもできるんだが……なぁ、オフィーリア?


 なに狙ってる?


 何と言うか、欲望にまみれた眼をしているなぁ?


 説明してみ?


 

「あらあら、あたしが物欲にまみれた考えを持つとお思いですかぁ?」


「性欲にまみれた考えは持っていると思ってますよ? 自覚もあるでしょ?」


 ……こいつ、否定できないのか視線を逸らしやがった。


 

「正直に言えば考慮はするが、黙っているのなら作業終了後まっすぐ王宮に――」


「――海で魔王様とイチャイチャヌプヌプしたいです!!


 魔王様に新しくデザインした水着をお見せしてそのまま迫りたいです!!!」


 ……やっぱり。

 

 正直は美徳というけれど、なんか違う気がする。


 ケインに視線を送ると諦めつつも頷かれる。


 

「魔王様たちがバルタキリヤに向かう場合の条件は二つあるす」


 ケインが魔王様&オフィーリアの頭に染み込ませるようにゆっくり説明を始める。


 

「一つ目は魔王様が今回の瘴気対応で幼児化しねごど」


 当然だな。


 幼児化した状態になったらオフィーリアとの情事が確定してしまう。


 そんな危険極まりない存在を放置はできんよ。


 

「二つ目は淫気を垂れ流さねように、そっち方面のお楽しみは王宮までガマン」


 まぁ、これも当たり前だ。


 いつものメイドさんたちはいないのだから……って、もしかしてこれで我慢できなければ淫気の処理はわたしとサリアだけ?


 本気で守ってくださいね、魔王様。



「この二つを守れるのなら構わねぇよ」


「「「うっし!」」」


 ……あれ?



 ねぇ、サリア?


 なにガッツポーズ取っているんだい?


 なぜわたしと視線を合わせようとしないのかな?


 隠し事されるとわたしは寂しいよ?

 

 


 夫として少々悲しく思いつつもスターフィード殿に乗ってバルタキリヤ近くの瘴気発生現場へ向かう。



 あっ!



 という間に瘴気の浄化を完了し、スターフィード殿に乗ってバルタキリヤの街へ向かう。

 

 いや、本当に小さかったので、呪い解除不要だったかもしれない……。

 

 まぁ、たまにはこんな簡単な仕事で『二泊三日』というのもよかろう。

 


 幼児化は発生しなかったので、約束通り魔王様とオフィーリアも同乗することに。


 正直サリアと二人きりのバカンスのつもりだったが仕方ない。


 約束は守らなければな。



 呪いを解いた状態で王宮と旧エルフの領地以外に行くのなんて何百年ぶりだ?


 夕方頃にバルタキリヤに到着し、スターフィード殿にはケインへの伝令と三日後にいったん来てほしい旨を伝え、街に入る。


 ハーピーの伝令に事前に指示していた通りバルタキリヤの街長である猫人族の族長と魚人族、人魚族の族長が連れ立って挨拶に来る。


 

 説明を受けると、普段は穏やかな海なのだが、なぜかクラーケンの団体が集まってきて戦闘が始まっているとのこと。


 その結果、周囲の魚は逃げ出し近隣の浜辺には大波が押し寄せ、また海中も戦闘の余波で海流に変化が生じ生活ができないと泣きついてくる。


 夜の海上戦闘は流石に危険すぎるので、明日朝にでもクラーケンの戦闘場所に向かうことで合意。


 その日は街長の家で体を休めることとした……わたしたちだけは。

 

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