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会議後の雑談

◆◇◇◇

 

 会議後、いつものメンバーに加えて、火の精霊王と給仕にチェリーさんが参加して話し合いを行う。


 まぁ、メインはあの種族についてなんだが。



「さで、皆さん。まずはお疲れさまでした。火の精霊王もご協力どうも」


「ああ、もう名で呼んでよいぞ。このメンバーなら皆知っているしな」


「かしこまった、バクラト殿」


 ケインが晴れやかな雰囲気で労をねぎらう。


「二百年滞ってだ議案の処理が終わったのがら、やっと肩の荷が降りますよ」



「まぁ、すぐ新しい厄介事を出してきますよ。例えば『種族名の改名を求める』とかね」


 わたしのコメントにケインが凹んでしまう。


「回避でぎるすかね?」


「無理でしょ。たぶん、改名時に『エルフ』の名を入れて来るでしょうし」


 二人で未来の会議で似たような騒ぎになることを想像し、ため息をつく。



「ねぇ、新しい二つの種族っていつまで生きてるのかな?」


「……推測ではありますが、あと五百年位で大半が消えるのではないかと」


 魔王様があの種族についてお聞きになるが、正直推測でしか回答できないなぁ。

 


「なぜ?」


「元々、種族的に子がほとんどできません。百年に一~二名産まれるかどうかです」


 これは、エルフとして生まれた以上どうしようもないところなのだが。



「それに加えて、精霊側が手を引いたことによる短命化。たぶん毎年パタパタ死んでいくでしょう。となると、出生より死亡の方が高くなり、それを回避する術はない」


 二百年で二千年分寿命が縮んだ。

 

 となると、五百年経ったところで五千年分追加で寿命が縮むことになる。

 

 現在千五百年ほど生きている子たちまでが寿命になり、生まれる子が多くて十名。

 

 多分、五百年後は二十から三十人程度しか残らないのではないかな?


「後、短命化だけでなく老化も始まるのではないかしら?」


「あぁ確かに。これからどれだけ種持つ男、子を産める女が残るのやら……となると、五百年どころか百年持たないかも知れないな」


 サリアと話しつつ、魔王様へお答えする。


 本当、わたしたちの種族と寿命が絡み合うと滅ぶ選択肢しか無くなる。


 

 わたしたちの答えを聞き、魔王様は嬉しそうに微笑む。


「なら、あいつらが滅んだら精霊に馬鹿な考えを持ったらこうなるという一例として後日代表たちに説明すればいいね」


「同感だ。我々が隷属しているなどとふざけたことを抜かす種族が消え失せるのはこちらとしてもありがたい」


 魔王様とバクラト殿がそろって笑みを浮かべる。


 まぁ、バクラト殿の気持ちは分かる。

 

 どのような種族でも隷属しているなんて言われて喜ぶ種族はいるわけない。

 

 

「では、あの種族たちはこのままにしておきましょう。勝手に自滅してくれるなら、こちらとしても楽でいい。ついでにあそこの領地、他種族に回しましょうか?」


「なら巨人族がえぇで思うすよ。確か出稼ぎの形で他種族の領地に住まわせでもらってらげど、その人達にあの領地使わせれば喜ぶべ。元々巨人族は土地の強奪とか考えねがら、周囲と軋轢産まねで言うだげでもありがだぇ部族ですし」


 ケインとわたしで滅亡以降の皮算用を始める。



「争いなんて無いのが一番ですよぉ~」


「そうですわねぇ。平和であればもう少し他の事に意識を向けるでしょうし(チラッ)」


 オフィーリアとチェリーさんがほのぼのとした雰囲気でコメントする……が、視線を送られた人物は……バクラト殿と雑談してやがった。


 この鈍感宰相が!


 主人公変わってやろうか? あぁ?


 

 話が終わったタイミングで『ぽん!』という音とともに精霊女王たちが現れた。


「お久しぶりです魔王様、そして皆々様」


 代表として水の精霊女王ティーダビュー様が挨拶をされる、が……。


「ちょっと質問なのですが、うちの宿六共はどこに消えたんでしょうか?」


 めっちゃ笑顔なのに寒気しかしないんですが。


 

 王宮組は一斉にバクラト殿を見る。


 女王組も同じくバクラト殿を見る。


 バクラト殿は王宮組にすがるような視線を送るが、『流石にこれは無理!』とジェスチャーでやり取りすると諦めたのか会議の内容も含め一通り説明し始める。



 説明終了後、女王たちの周りの寒さが悪化した。


 まぁ、このピンチをチャンスにするため、サリアを抱きしめて温めておこう。


 おや、顔が赤くなっているね、サリア。

 

 でもヨダレは拭いといた方がいいと思うよ。



「事情は理解しました。とりあえずバクラト殿は無罪と言うことで」


「そうだな。ちゃんと仕事してえらいぞ、バクラト」


 ティーダビュー様の判決を聞きほっとしたバクラト殿。火の精霊女王のヘリッシュ―様のお褒めの言葉を頂いてちょっと涙ぐんでいるところがなんともぷりてぃ。


 

「で、残りの馬鹿どもはどうします~?」


 土の精霊女王アキュエ様が問うと、


「このお話の後に各人で確保と処罰でよろしいでしょう。細かいところはお任せと言うことで」


「あらあら、久しぶりにかわいがってみましょうか」


 光の精霊女王ペルシェットと風の精霊女王トルム様がウキウキしながら方向性を決める。


 トルム様、『かわいがる』って『拷問する』とか『ギリ死なないレベルで苦しませる』の意味でしょうか?


 それとも我が家と同じかな?


 同じなら『二泊三日』ってお勧めですよ。



「あ、それとこれも伝えておくべきかもしれん。今回精霊の加護を外したのはもう一つ理由があってな」



 な ん で す と ?


 バクラト殿の発言に皆注目する。



「簡単に言うとエルフの場合六精霊と関わっていないと精霊の均衡がとれなくなるんだ」


 ん?


「均衡とはなんでしょうか?」


 わたしが代表して聞くと、バクラト殿が爆弾発言をぶちかましてきた。


「例えば、火と仲良くしすぎると発熱しやすくなるとか、土と仲良くしすぎると身体が石化しやすくなるとか……」


「ちょ、ちょっと、それとても重大な話ですよ!」


 そんな重要なことをあっさり言わないでください!

 

 

「火だったら水とか、対抗する精霊とも仲良くしてれば問題ないんだがなぁ」


「あー、本来対抗する精霊とも関係を持つので問題ないが、白黒は影響が出てしまうということでしょうか?」


 その影響は命にかかわるレベルってこと?


 

「大体その通りだ。それと、これは推測なのだが今更対抗する精霊をそばにおいても均衡は元に戻らないと思う」


 バクラト殿の説明に皆困惑する。


「簡単に言うと、抵抗力も失っているかもしれない。例えば白が火の精霊に近づけばダメージが今までよりも上昇する可能性がある」


 マジっすか?



「個人的には放置してあいつらが消えても困らないのだが、我らのせいにされるのも嫌なんでな」


 皆『あ~』と天を仰いだ。


「これはちょっと、あの種族たちへの感情を抜きにしてもやらなきゃまずいですね」


 サリアと納得してしまった。


 確かに加護を外さないと、『精霊が二種族を滅ぼそうと企んだ』なんて言われかねない。


 事前に対応していれば、『精霊は二種族の身の安全のために離れた』という言い分を通せる。



「まぁ我も思い出したのが最近なもんでな、正直ちょうどよかったのだよ。というか、こんなこと我らの誰も経験なぞ無いのでな」


「いやいや、良く調べ、決断されだごどありがだぐ思うす」


 バクラト殿が謙遜するが、ケインがお礼を言う。



「ちょっと疑問なんですけどぉ、この事象は体に影響ある事態なんですよね? なぜあっちの種族たちからこの情報が出てこないんでしょうねぇ? 二百年経っていると言うことは、既に発生している可能性は高いんでしょぉ?」


「確かに、おかしいですね」


 オフィーリアとチェリーさんが疑問を呈すが、サリアが鮮やかに答えを出す。



「何も考えていないからでは?」



 ……時が止まった。

 

「「「あー」」」


 その後、滅茶苦茶納得した。


 

「多分、この件で何かごり押ししてきそうですね」


「その時は、先の説明して『自業自得でしょ?』って言って終わりでしょ」


 わたしの発言に魔王様がサクッと解決策を出してくる。


 こうして、魔王国代表定例会議が終わった。



 後日白無能族・黒無能族について王宮側に一部認識誤りがあったことが判明する。


 それに気づくのはまだ先なのだが……。



次回はいつもの二泊三日シーンです。

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