さりあちゃんのかわいいしつもん
◆◇◇◇
「なら、なぜ私たち魔王国の者が来る前に対処しなかったのかしら?」
「「「え……?」」」
静寂を取り戻した謁見の間でサリアが『よくわからない』といった雰囲気でキース伯に問う。
うん、かわいい♡。
「別に、瘴気の浄化がちゃんとできるのであれば、だれがやっても問題ありませんわ。なら、キース伯がさっさと浄化すればよかったのですよ」
まぁ、それが当然ですよねぇ。
わざわざわたしたちを待たずにどうにかできるのならさ。
「なんせ、私たちまで連絡が届くのに半年近くかかっておりますから、その間に浄化なんて簡単にできるでしょう?」
サリアが追い打ちをかける。
キース伯は何か言おうとしては口を閉じるのを繰り返している。
「確かにサリアの言う通りだな。それに、浄化手段があるのに今まで国に黙っていたのか? そちらの方が国としては大問題なんじゃないのか?」
わたしの指摘に『あっ!』といった感じでキース伯は顔を青ざめる。
ラシス王が睨み付けると、キース伯がもぞもぞしながら言い訳を始める。
「その、言おうとしたのですが、勇者の件で問題がありまして……」
「何が問題なのだ? 国が困難に見舞われているときに黙っていることの方が問題ではないか? どう考えても瘴気対応が最緊急であることは明白だろうに」
「瘴気なぞ、すぐに対処できるので慌てる必要がないかと思い……」
「なら、貴様が瘴気発生の場所に赴き処理すれば済む話ではないか? 半年も猶予があったんだぞ?」
「あ……え……その……」
「それに、勇者の件のどこに問題が? お前は勇者の件も担当しておらぬし……まさか、貴様はヨタバール教の関係者とか言わないよな?」
「……」
キース伯がまともに発言できなくなったところで、侍従が情報を持ってきた。
「お話し中失礼します、陛下。先ほどのキース伯の件ですが、マルク王時代に侯爵から伯爵に降爵になったロワイヤル・キースの家系の六代目が今のキース伯、カーディナル・キースとなります」
あらら、結果出ちゃいましたねぇ。
ラシス王はとてもイイ笑顔をしてキース伯に向き直ります。
「ほぅ、これはちょっと本格的に情報を吐いてもらわなくてはならないなぁ」
「い、いや、陛下」
「衛兵たちよ、牢屋へ連れていけ。たっぷり吐かせろ。それと、キース伯の家探し、関係各所の調査も行え!」
「はっ!」
王よ、何と言うかめっちゃ楽しそうですね。
「それと、キース伯とのつながりのある貴族、商人等すべてを洗い出せ」
指示を出し終えると、ラシス王は不安そうな、怯えた表情でこちらを見始めました。
市場に連れて行くわけではないので、悲しそうな瞳で見ないでください。
「魔王国副宰相マルコ殿、奥方殿、今回の件とても迷惑をかけた。誠に申し訳ない。我が国としては、今まで通り条約に従い貴国と仲良くしていきたい」
「かしこまりました。魔王様が復調したらお伝えしておきます」
ラシス王がチラッとオフィーリアを見て、顔赤くしている。
なぜ? とオフィーリアの方を見ると、今までのストレス発散とばかりに悦楽の表情をしており、胸辺りがぐにょぐにょとうごめいている。
……もしかして、スライム形態で乳吸いつつ揉んで搾ってる?
……それとも、それ以上進めちゃってる?
「それと、先ほどキース伯が『十数日かかったのは?』と問われましたが、瘴気が大規模レベルまで広がったためです」
『そこまで広がったのか……』とか聞こえてくる。
だからこっちが苦労してんじゃねぇか……そろそろ気づけよ。
「これは、過去にお伝えしているはずですが、魔王国の伝令部隊の各国への常駐化を受け入れていただきたいとお伝えしておりますが、いつ頃お答えをいただけますかな? そろそろ八十年ほどになりますが……」
ラシス王も貴族共も汗たらしながらあらぬ方へ視線を送り始めた。
「多分、国家間で話し合いされていないのではないかと魔王国側では考えていたのですが?」
「あ、いや、国家間の議題としては上がるのだが、対処策が見いだせず……」
「わたしたち魔王国の者が常駐するのは民が不安がるとかでしょうか?」
「……そうだ」
まぁ、それは想定内なんだが。
「なら、ドラゴンにお願いする形になりますが、定期便方式では?」
「ドラゴンが近くに来ると言うだけで国民の中で混乱が発生する」
「町や村が近くに無いところを選べばいいだけでは? こちらは各人間国家から瘴気発生の情報だけいただければいいので、王都どころか人里離れた山の中でも一切困らないですよ?」
「ふむ……ちょっと次回の国家間会議の時に諮ってみよう」
……八十年経ってやっと動きだしましたか。
……エルフは気が長いと言われますが、人間も結構気が長いですなぁ。
「では、その結果については魔王国へも情報いただけますかな?」
「ああ、承知した」
やっと一通りのやり取りが終わり、魔王国に帰る。
ケインに帰還報告に行くと、『ご苦労様』と言いつつも少々不審げな反応をしてくる。
「しったげ遅がったが、何があった?」
なんか、取り調べの様相を呈してきたな。
以前の仕返しか?
「まず瘴気について、大規模化してました」
「ああ、そごは想定してだ。実際の発生がらどれぐらい経ってだ?」
「半年ですね。自分たちで処理しようとして失敗してから連絡したようです」
「全ぐ……連絡さ先にして、その後少しだげ試してみるのならまだ理解でぎるのだが」
全くだ。
やることの順序が間違っているんだよなぁ。
「それと、ラシス国内でこっそりヨタバール教の教えに従っている貴族がいて、色々と魔王国を侮辱してきました。まぁ、そいつらは今頃拷問の真っ最中でしょうがね」
「それってM・B・Cレベルどが……」
「いや、流石に他国の拷問内容なんて知りませんよ!」
まぁ、M・B・Cの前には人間たちの拷問なんて裸足で逃げ出すレベルだろうけど。
「それと、常駐の件ですが、ドラゴンが定期的に各国回って情報を求めることを提案してきました。次回の国家間会議で相談してみるそうです」
「……なんていうが、結果出ねような気……」
「あぁ、たぶん出ないでしょうね。でも、運よくどこかの国が受け入れてくれれば大規模化はかなり防げるんですけどねぇ」
「無理だべ、彼らはそごまで考えねで思うぞ。魔王様がいれば、大規模でもどうにがなるど考えるんでねがな?」
「でしょうねぇ」
みんなでため息をついてしまう。
「大体わがった。魔王様たちもマルコたちもお疲れさま。オフィーリア、魔王様を休ませでけでぐれ」
「かしこまりましたぁ♡。では、失礼しますぅ♡」
まだ胸がぐにょぐにょ動いている。
もしかして謁見の間からここまで揉みっぱなし?
そりゃあ発言に♡がつくはずだわ。
「マルコたちもいづも通り『二泊三日』だべ? 今日は終わりでえ。ゆっくり楽しんでぎなさい」
「ありがとうございます。では、失礼します」