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キース伯(無駄に)がんばる

◆◇◇◇


「多分、勘違いしているのだと思いますが、先ほどの『また』は、別の話です」


 王も貴族も驚いている。まあ、『え、まだネタがあるの?』ってところだろう。

 


「確か、この国の以前の王でマルク・ギニュー・フォン・ラシスという王はおられませんでしたか? 何代前かは流石に分かりませんが……」


「あぁ、五代前の王だな」


 流石にご先祖様の事だからサッと情報が出てきますね。


「そこで、同じように瘴気の浄化について、魔王国に罵声を浴びせてきた貴族がいたのですよ」


「え゛?」


 そんなに驚かなくても……。

 

 わたしたちが到着直後の貴族の暴走だって大して変わらないでしょうに。


「今と同じで魔王様による浄化がないと対処できないのですが、そんなこと関係なくわたしたちに頼ることが恥だとでも言うかのようにね」


「え゛え゛っ?」


 あぁ、気持ちはわかる。同じ立場ならわたしもカエルが潰されたような声をあげるだろう。

 

「その結果、魔王国としてはラシス国を見捨てる方向で進み、当時のマルク王は謝罪と対象の貴族を降爵させてます。確か、侯爵から伯爵へ」


『そんなことあったの?』って感じですね。


「そのやらかした貴族の名は知りませんが、姓はキースでした」


 ざわ……ざわ……。


 

「もしかして、そちらのキース伯は子孫ですかね?」


 ざわつきが大きくなる。王は、部下に『マルク王時代に降爵されたキースなるものを調べよ! その系譜もだ!』と大騒ぎ。



「あぁ、ラシス王よ。懸念点はキース伯が過去の暴言貴族の繋がりがあるかではありません。懸念の一つではありますがね」


『え、違うの?』って感じですね。



「最近、勇者なる者が魔王国王宮に参りまして、魔王様を弑するために来たとか。『NTR』交渉部門、宗教部門の方がお越しになって処分の為にお持ち帰りいただきましたが、この件はご存知でしたか?」


「その情報は我が国にも届いており、モヒトから聞いておる。ヨタバール教だったな。あれを探し、数か所潰しておるよ」


「キース伯がそこと繋がっているとか無いですかね?」



 ……一瞬、何のことか人間側は分かっていなかったのだろう。誰も声をあげなかった。


 脳が発言内容を理解すると、貴族共は一斉に騒ぎ出す。


『本当か?』


『嘘だろう?』


『根拠は?』


『本当だったら?』


 ……つーか、落ち着けよ。

 


「まず、根拠も何もありませんが、単純に勇者共が魔王国でぶちまけたこととキース伯の発言、そしてマルク王の頃のキースとやらの発言があまりにも似通っているのです」


「そんな、昔の人物の発言なんてどうとでも改竄できるのではないか?」


 誰だか知らんが、貴族の一人が発言した。

 


「あなたたちにとっては数世代前なのかもしれませんが、わたしたちにとってはたかだか百五十年前の話。軽く数千、数万年以上生きるエルフにとってみれば、皆さん人間種族でいうとほんの数か月程度の話」


『あ……』と言った感じで皆固まる。


 エルフと言う種族がどれだけ長く生きるのか忘れているようだ。



「それに、その場にいて魔王様を侮辱されたのですから、忘れるなんてありえませんよ」


 これは魔王国の者として当然ですね。

 


「正直、推測にしても脇が甘いと言われるのも承知の上で申し上げております」


 わたしも妄想に近いかも……と思うくらいだしね。


「ですが、いま調べている最中の過去のキースと今のキース伯に繋がりがあった場合、そして勇者たちと関連があった場合、百五十年前からこの国はヨタバール教がキース家を後ろ盾にこっそり信者を増やし、貴族にも手を広げていた可能性があるかと」


 そこが不安材料なんですよねぇ。


 ただでさえ人間国家群は一枚岩じゃないし。


「もしかすると、今も貴族の中に信者が増えているかもしれません。一緒になって魔王国を侮辱していた者たちとか……ね」



 謁見の間が静まり返った。


 聞こえるはチュパチュパと……って、魔王様、オフィーリアの乳しゃぶってる?


 幼児化どころか赤子化?


 あー……そのまま続行でヨシ!


 サリアよ、うらやましそうに見ない!


 うちらは後で!


 ちゃんとヤリますから!



「正直、そこまでは魔王国が出しゃばる気はありません。ただ、ヨタバール教をのさばらせて魔王様を弑そうとするものは我ら魔王国一同一切許す気はありません」


「あぁ、それはこのラシス国だけでなく人間国家全てがその認識でいる」


「陛下! それはいけません!」


 まだキース伯は騒ぐのか?



「魔王はこの世にいてはならない存在です! 今こそ、滅ぼす時! 瘴気なぞ人間の力でどうにでもなります!」


 ……ほぅ。言ったね?


 

「このような詐欺師共に騙されてはなりません! 我らの国は我らで守るべきなのです!」


 あーあ、そこまで言っちゃった。


 なら、こう返すだけなんだがな。



「それが本気なら、わたしたち魔王国は本日をもってこの国での瘴気の浄化を止めますが? 現在条約があるので協力しているに過ぎないので条約の解消を求められるのならそうおっしゃってください」


 ……あれ? なぜ王もキース伯も驚くのだ?


 

「何を驚いておられるのでしょうか? 魔王国は善意で浄化をしてあげようと人間国家と条約を結びました。止めたいのであれば構いませんよ?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。キース伯はこの国の代表ではない! この者の戯言に惑わされないでくれ!」



 めっちゃ慌ててますねぇ。でもねぇ……。


「いやぁ、浄化に向かう前にこの国の条約に対する心構えをお見せいただき、条約解消しても構わないと魔王様と話はついております。あとはそちらがどうしたいのかだけですね」


 浄化前にあなたたちがやらかしたこと、わたしたちは忘れてないんだよ?


 モヒト殿は『だから言ったでしょうに』という雰囲気でラシス王……兄を見ている。



 ラシス王は真っ青になって謝罪してきた。


「待ってくれ! 浄化前のこちらの行動、そして今のこちらの行動について謝罪する! 条約は解消しない!」


 まぁ、こんなところですかね。



「王よ、そんな弱気なこと言ってどうするんですか!」


 キース伯は翻意するよう迫るが、まぁ無理でしょう。


「ふざけるな! 貴様のせいでこの国は滅びるところだったんだぞ!」


「滅びません! 瘴気程度、どうにでもなります!」



 やかましい事この上ない状況で(愛しの)女神が舞い降りた!



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