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勇者、スキル連発する


◆◇◇◇


 どうも、入口で少々ドタバタがあったようだが、特に殺し合いには発展していないようだ。


 まあ、対応した面々が倒されることは万が一にもありえないが。

 


 魔王様にはオフィーリアの服の中で絡みついてお眠り頂いている。


 流石にお昼寝の時間だから仕方がない。


 昨日もハッスルされたのだろう。


 

 玉座のそばにオフィーリア、その隣にタイバーン殿。


 ケインとわたしたち夫妻は玉座を挟んで反対側で待機。


 護衛として第一部隊のフリック殿がわたしたちのそばに、第二部隊のガルム殿がタイバーン殿の横に待機してもらう。


 これで勇者がどれだけ強くても魔王様に近づくことはできんだろう。

 

 また、お客様も謁見する者達から見えない位置にお呼びしてある。

 


「副宰相様、勇者ご一行が扉前にご到着されました」


「扉を開け、入っていただきなさい」



 扉を開き入ってきたのは、おのぼりさんとしか思えない落ち着きのない者たち。


 うわっ、本当に武器防具が貧層すぎる。


 本当によくここまでこれたな。

 

 

「ちーっす。あんたが魔王? 俺勇者トトっす!」



 勇者トトが『あいさつ!』のスキルを()()()に対して発動させた!

 ケインは固まった!

 マルコは固まった!

 サリアは固まった!

 オフィーリアは固まった!

 タイバーンは固まった!

 スゾッキィーは固まった!


 

 硬直は解けたが、なぜかわたしに聞いてくるので事実を教えることにする。


「……あー、勘違いしているようだが、わたしはマルコ。この国の副宰相でエルフ族の者だ。隣にいるのは妻で副宰相補佐のサリア。同じくエルフ族だ」


 さて、本題に――。



「うっそだー! ()()()()()()()()()()()()()!」



 勇者トトが『うそつくな!』のスキルを発動させた!

 ケインは肩を震わせている!

 マルコは頬をひくつかせた!

 サリアは頬をひくつかせた!

 オフィーリアは大笑いしている!

 タイバーンは立ちくらみを起こしている!

 スゾッキィーは笑顔で上下左右に揺れている!


 

 こんのクソ勇者が……。


 侮辱するにもほどがあるだろう。


 礼儀というものを知らんのか!


 処分する前にきっちり指導して――。

 

 

「下手な魔王より顔怖いし、やっぱりあんたが魔王なんじゃないの?」



 勇者が『おまえがまおうだろ!』のスキルを発動させた!

 ケインは顔を青ざめようとしたが血が流れてないのでできなかった!

 マルコはスキル『あんぐり―まねじめんと』を使った!

 しかし効果はなかった!

 サリアはスキル『つめたいしせん』を使った!

 しかし勇者には効かなかった!

 オフィーリアはスキル『つめたいしせん』を使った!

 しかし勇者にはご褒美だった!

 タイバーンは無言で力を溜めている!

 スゾッキィーはタイバーンを見てしまい怯えている!



 説明なしに亡き者にしたくなったが、何とか耐えて説明を続ける。

 

「……まず、わたしたち夫妻がエルフであることは事実だ。必要あって自分たちの身に呪いをかけており、その結果この姿になっている」


「ふーん、まあいいや。んじゃ、魔王ってどいつ?」


 侮辱した上にさらっと流すなや……。


「その前に、君たちはどのような理由でここに来たのだ?」


「あぁ、魔王を殺しに。つっても、正直めんどいんでちゃっちゃと終わらせたいんですけど~」


「それは、人間の国々の総意と受け取ればよろしいか?」


「ソウイ? しらなーい。ただ、殺してきてって頼まれたんだけどね」


「誰が頼んだんだい?」


「うちの最高司祭様」


 ……うむ、わからん。


 ケインを見るが、あちらも分かっていないようだ。

 

 

「わたしたちの記憶では、人間の国々の宗教で最高司祭と言う役職はないはずだが? 確か教皇が一番上だったはずだ」


「あぁ、古くさい宗教はそうだって聞いたな。うちらの教団はそっちと違うから知らんのかもしれんな」


 ……面倒臭い新興宗教ができたってことか。


 人間の国々の方でさっさと潰せよ。


 こちらに面倒持ち込むなよな。

 

「なんて名の教団だ? それと今の会話からすると今までの人間の国々と魔王国の間のやり取りも知らんということか?」


「ヨタバール教だ。あと、やり取りだったか? そんなの俺が知るわけないじゃん」



 ……ったく、簡単に説明するか。


 

「人間側と魔王国側で一つ協力体制を取っている。人間の国々で瘴気が発生したなら魔王国に連絡すること。連絡来た時点で助けに行くこと。これを条約として結んでいる」


「そんなことか。うちの教団ならサクッと浄化するから条約なんかなくていいぜ」



 ほぅ?



「実績は?」


「あ゛あ゛?」


 勇者がキレそうだが知ったこっちゃない。


 全力で言葉責めしてやろう。



「我らが魔王様は何千年以上も瘴気を浄化し続けてきた。お前たち人間種族が今の土地に住めるのは魔王様の努力の結果だ」


 お前らが生きているのも魔王様のおかげであること忘れたか?


 何千年か前までは魔王国に避難してきてたくせに。


「翻ってお前たちの浄化の実績は何だ? 無いのなら戯言としか受け取れん。説明して見せよ」


「俺が知る訳ねえじゃん。最高司祭様ができると言ったのならできるんだよ!」


 なんだよ、その訳の分からない理論は。


 まさか、こいつら……ただのバカと言うより、もしかして……。


 

「ちょっと質問だが、貴様らはもしかして孤児か?」


「っ! それが悪いかよ!」


「悪くはないが、もしかして、貴様らのいう教団に育ててもらったってとこか?」


「その通りだよ!」



 ……あちゃ~。


 これ、洗脳じみたやり口してんじゃね?


 何も知らない孤児を赤子の頃から自分たちの都合の良い教育を進めて鉄砲玉に仕立て上げるって手口に見える。



 ケインやサリアに視線を送ると、同意してきた。


 やっぱりそう思うよね。


 

「成程、貴様らは最高司祭とやらを全力で信用するよう調教されているのだな。なら現実を見ないのも納得できる」


「ざけんな! 魔王如きが人間にちょっかい出そうとすんな!」


 いや、だからわたしは魔王じゃないって!


 全く説明するのもばかばかしいが……。



「逆だぞ」


「あ゛?」


 勘違いを少し修正できないか会話を試みてみる。

 

 こいつらには無駄な気もするが、一応お客様もいることだし魔王国がただ処分するだけではないところを見せておかないと、条約に不安を感じられるかもしれない。


 まぁ、メインはこいつらを煽るだけなんだがな。


「人間側で瘴気が溢れて、生き残った奴らがわたしたちに助けを求めた。我々は善意で瘴気を消し、土地を浄化し、住めるようにしてやった」


 確か、二千五百年くらい前じゃなかったかな?


 魔王国成立前の話だな。


「今も人間側で瘴気を消すことができないから協力してやっている」


 正直、面倒くさいんだよなぁ。


 そっちでできるのならこちらに頼らずやってほしい。


「不要ならそう言え。元々、我々魔王国は無理に人間の国々と接点を持つ必要は無い。いくらでも見捨ててやろう」


「っ、てめぇ!」



 予想通り、勇者はブチ切れて攻撃を仕掛けてきた。



「ちょっ、待っ――」


 あちらの僧侶が止めようと声を掛けるが間に合わない。


「ブレイク・ザ・……」


 勇者はわたしに向かって駆け出し、槍を突き出す!


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