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勇者到着……まだ?

2章開始します。

とりあえず毎日更新を目標に。

◆◇◇◇


 前回の瘴気対処から半年、再度呪いをかけてから三か月、特に(M・B・C被害者二名出たこと以外)何もなく過ごせていた。

 

 そんなある日、偵察部隊である影人族から連絡が入った。



「勇者一行、王都に到着いたしました」


 やっと来たか……遅い!


 あぁ、君じゃないよ。


 勇者たちの事だからね。



「最初の連絡があってから半年ですか……いくら徒歩であっても普通に移動したらもっと早く到着するはずなんですけどねぇ」



 サリアが疑問を口にすると、ケインから報告者に質問が飛ぶ。


「確認だが、勇者は魔王国内で戦闘はしでらが?」


「いえ、魔王国民への戦闘行為はほとんどしておりません。むしろ物見遊山のような感じで、特に姿も隠さず……」


「えぇ……なにそれ」


 ケインが呆れていれるが、まあ当然だろう。


 魔王様を害するのに物見遊山ってありえないし。


 

 というか、本気で魔王様を倒すのなら魔王国軍を滅ぼせるくらいの実力がないと蠅や蚊のように潰されておしまいなんだがな。


 暗殺するにしてもこちらに気づかれないような努力ぐらいはするだろうに。

 

 

「ちなみに、王都に入ってからの行動は?」


 サリアが聞いてみると、驚きの答えが返ってきた。


「……屋台や店で食べ歩きしてます」



「「「はぁ?」」」



「ちなみに、勇者パーティ全員が『牛の舌の炭火焼』にハマっているようです」


 ああ、サリアよ、怒った顔もかわいいが、眉間にしわが残るぞ。


 あと、彼は偵察担当なのだから彼に怒っちゃいかん。


 サリアだって正しく仕事して叱られたら嫌だろう?


 

 それと『牛の舌の炭火焼』にハマってるって?


 いや、気持ちは分かるよ。



 ミノタウルス族と牛人族が競いあって育てている牛たち。


 その中でも最高級品を王宮で食されている。


 基本魔王様に渡るが、少しわたしたちにも回ってくる。



 厚めに切られた舌を炭火でじっくり焼いて、サリアに『あ~ん』って……はっ!


 いかんいかん、妄想に浸ってしまった。


 ……今度実践するか。

 


「とりあえず、数日程勇者体制を組みましょう。流石に深夜に来るとは思いませんが念の為。それとオフィーリア、『お客様』への周知と協力をお伝えしてくれ」


「かしこまりましたぁ」



 一通り指示を出しておいたが、さてまずはいつ来るのやら。


 それに『お客様』も待たされるのは嬉しくないだろうしな。



 ……それから一週間。

 

 

 関係者集合して話し合い中だが、皆の心はただ一つ。


「なんなんだ、あいつらは! なにトロットロしてやがる!!」


 発言内容はわたしたちの思いを的確に代弁しているが……タイバーン団長がマジ切れしておられる。

 

 皆八つ当たりされたくないのか周囲の騎士たちも怯えている。


 

 皆がイライラしているところで、サリアがおずおずと質問してきた


「ねぇ、勇者達って何の用で来たのでしょう?」


「「「え?」」」


 皆の反応が重なった。

 

 え、魔王様殺しに来たんじゃないの?

 

 できるかどうかはともかく。



「魔王様を害するつもりなのでは? というか、それ以外の理由って思いつかないけど」


「うん。でも、戦えるほどの装備してないみたいよ?」


 ええ?


 何それ?



「それどういうこと?」


 サリアに問うと、驚きの回答が返ってきた。

 

「昨日私、勇者たちが泊まっている店の人達とちょっとお話したんだけど、かなり貧弱な装備だったって聞いたわ。正直大型の動物も殺せないレベルだって」


「「「えええ?」」」

 

 いやいや、流石にそれは……って、嘘じゃないんだよね?

 

 そこまで貧弱な装備だとむしろどうやって王都に来たの?

 

 王都まで生き物に出くわさずに来たとか?

 

 

 

「……では、奴らはなしてこごまでやってぎだのだべが?」


 ケインが独り言をつぶやくが、それに反応できるものはいなかった。


 

 というか、人間の国々との国境から王都までは危険なところもあるから護衛が必要な場所もあるんだが、その程度の装備でどうして生きて王都にこれたの?


 運がいいの?


 あれ、でも偵察部隊から戦ったとも助けたとも連絡受けていないよね?


 よほど強い魔物除けのアイテムでも確保したの?


 それに、魔王様を弑するつもりなのに大型の動物も倒せないレベルって?



 皆で困惑している所に、やっと望んでいた報告が届いた。


「報告します。宿屋からの情報ですが、勇者は明日午前中に王宮に向かうとの情報が入りました」


 皆ほっとし明日の勇者をもてなす(個人の意見です)予定の確認に動き始めた。


 

 ですが、ちょっと気になるんですよねぇ。


「あぁ、偵察担当の方。念の為、明日勇者たちの行動を定期報告願います」


「なしてだ? 明日来るごど分がってらだべに」


 ケインから質問されましたが……本当に来るのかねぇ?


 

「なぜ彼らが予定通り来ると思ったのです? 今までフリーダムに動いていた者たちが急に予定を守りはじめると?」


 そう答えると、皆ものすごく嫌な表情をしつつ納得した。




 明けて勇者来訪予定日当日。


 日が陰り雨が降りそうな曇り空、わたしたちの思いがそのまま空に反映されているようだ。



「やっぱり……」


「外れてほしかったんですけどねぇ」


 ケインとため息つきつつ二人で愚痴っていた。


 

 今は十一時。偵察部隊からの報告で、昨日『魔王討伐の前祝』なるものを行い、飲み過ぎてつい先ほど起きたらしい。


 一応、来るつもりはあるようで、のろのろ準備しているそうだが……。


 

「魔王様、お昼寝中になるかも知れませんねぇ」


「謁見の間で寝てもらってもいいんじゃないかな」


 オフィーリアと調整の上、魔王様の仕事割り当てを整理していく。


 ……と言ってもオフィーリアの胸元で寝ていてもらうだけなんだが。

 

 それとも久しぶりにオフィーリアが玉座に座ります?

 

 胸元から魔王様がちょっとだけ顔出していただければ、それでいいですよ?

 

 

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