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5,親友

最終回です。

苦手で、というか書いたことすらない推理もの。正直不安でした。

楽しんでいただけましたでしょうか。







「手がかりなし、だね」






「うん」






むしろ清々しくなるほど、何にも無かった。

調理中ではないとすれば、桜をとったときが怪しい所だが、同じく何もない。

犯人の目星すらついてない。






「どーすればいいのかなあ」






「どうもこうも・・・・。ってか、帰らなくていいの?」






「え、あ・・・、6時半!!!おかーさんに殺されるっ!!!ばっ、バイバイ!!!!!」






「送るよ」






「ありがとっ!!」







こうして、短かくて長い一日は終わったのだった。






















次の日は祝日で学校は休みだった。

癒漓を家に招き、庭に出る。







「綺麗だねえ~」






「うん。この屋敷で数少ない好きなとこ」






「うん。何か分かるや。堅苦しいもん」







そうだよ。この家は広いのに狭くて息苦しいよ・・・。鳥籠のように羽ばたこうとするのを妨げるんだよ。冷たい、檻なんだ。


ここは何かがある場所。何だろう、でも暖かくて優しい何かがあるの。








「お水ってあげれる?」






「まだあげてないと思うよ。庭師に聞いてみる?」






「いいの?」





「でも何で?」






にっこりと癒漓は微笑んで_________







「寧音の大切な場所だから、だよ」






それからさっきとは違う笑みを癒漓はした。






「なっ、なんか恥ずかしいや」






「嬉しかったけどなあ」






「に、庭師さんに聞こーよ、ねっ」






「いいけど」







「あっ、あの~」






癒漓はそう言って庭師の所へすっ飛んでいった。

それをのんびりとあとから追いかける。







「これこれお嬢ちゃん、ここに入っちゃいかんぞ」







庭師のおじいさんがそう言って癒漓を敷地の外に出そうとする。






「えっ!?ちっ、違いますよ!寧音の友達です!!」






「そうなのか?」





「うん、うん」






そう言って癒漓は頭をブンブンと縦に振る。






「友達の癒漓です。お花にお水がやりたいそうで」





「はー、それは感心じゃのう。別に良いですよ。ただし、あそこの花だけ」





そう言って指差したのはヒヤシンスや、スイセン、スズランが咲いている花壇だった。






「ありがとうございます!!」






「いいのなんの」





早速癒漓はジョウロを手に持ち、近くの蛇口に向かう。







「あー、ダメダメこっちで水くんで」






そう言って庭師は少し遠いところを指差す。






「なんんでですか?」






癒漓は指された方の蛇口に向かいながら聞く。






「あっちの蛇口から出る水は山の方から出ている湧き水なんだ。あっちは水道水。水の質も違うし、何より水の栄養の多さが全く違う。いつもと違う栄養などを与えたり、いつもの栄養を与えなかったりするとそれが蓄積して植物の元気が無くなるんだ。そうだな、例えば農家さんは与える水の水質に気を付けなければいけない。毒を与えると植物にたまって実にもたまって毒を食べることになる。そういう意味も含めて水には注意しなければならないのさ」






「へえ、そうなんですか知りませんでした」






癒漓はそう言って尊敬の眼差しで庭師を見る。






「そういや、水やりと言えば紅葉さんがあの桜の木に水を与えてたんよ。数年くらい前から毎日。でも最近紅葉さん水与えてないようでさ」







その時、私のなかで何かが繋がった。




犯人が分かってしまった。

あっているかは分からない。でもそれしか考えられない。






「癒漓、犯人が分かったからお水あげたら着いてきて」







「え_________?あ、うん」











水やりを終え、癒漓を連れ、自分の部屋に向かう。


部屋に入ると入り口の左側に紅葉が立っていた。






「お嬢様、お話がありまして」






「私もよ、紅葉」






「では、先にお話しくださいませ」







「いえ、先にどうぞ」







「しかし___________」









「いいのよ」







「では、今日で仕事をやめさせていただこうと思います」







「え」







「大丈夫です。次の人はもう決まっていますので」






予想外の言葉に内心驚きながら冷静に口を開く。







「そう、分かったわ」








癒漓の方をチラリと見ると辞める、ということに驚いていた。







「私からは、一言。紅葉、あなたが桜餅に毒を盛ったの?」






紅葉は目を見開いてからいつもの穏やかな表情に戻る。







「はい、そうです」








「どうやって?」







「もう、目星はついてるんじゃないですか」






紅葉はそう言って目を不気味に光らせる。






「桜にやる水に毒を入れたんです。数年くらい前からやっていたと思います」







「なぜ____________」







「理由は、お嬢様が憎かったからです。お嬢様は知らなかったでしょうね、家は貧乏だったんです。姉さんは結婚して子供も作りましたがある日夫が借金を抱えて自殺してしまいました。借金の返済に終われる日々のなかで姉さんの娘_________つまり姪__________が病気にかかりました。その頃にはかなり病気は進行していて高い手術代を出さないと生きられない状況でした。もちろんそんなお金なんかあるわけありません。姉さんは自分をせめて自殺しました。姪もその時余命宣告されてもって三年、と言われました。そんな時にお嬢様を見たら姪とお嬢様を重ねてしまって、どうしようもなく姪が可哀想で_________そして、お嬢様が憎くなったんです。だから思い出の桜の木で苦しめようと思ったんです。毎日水をやりました」








そう言って紅葉は微笑む。






「すっごく楽しかったです。数年前から楽しかったです。・・・今日、姪が亡くなりました。なので私は後を追いたいと思います。さようなら」





紅葉はそう言って部屋を出ていった。







何でだろう、昔から母親よりも慕っていたのにそれがいなくなったのに寂しくはない。







「寧音、大、丈夫?」







ああ、そうだ。一人じゃなくなったんだ。







「大丈夫」








私はそう言ってニッコリ笑った_____________































最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 寧音が淡々としている分、物語の悲しさが際立っていました。 一度は心を閉ざしてしまった寧音が癒漓とこれから仲良くしていくことで、他の人とも交流をもったり年相応の楽しみができたらいいなぁ、と思…
[良い点] 悲しいお話ですね。 紅葉さんがお姉さんの境遇を早いうちに屋敷の誰かに相談していれば、違っていたかもしれませんね。 お姉さんの旦那が自殺した後、屋敷の顧問弁護士に頼んで相続放棄してれば借金を…
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